相場の転機は6月か?

ファンド勢の現在の投資戦略は、6月2日ECB、6月15日のFOMC、6月16日の日銀・BOEの金融政策を待っているところである。現在のマーケットはトレンドが不明瞭で、複数のブローカーが‘開店休業の相場’と述べているように出来高も少なく、相場のほうはアルゴリズム取引や短期筋の投げと踏みの応酬となっている。ファンド勢にヒアリングしたところ、「順張りでも逆張りでもあまり儲からない気がする」と多くの運用者が言っていたが、現在は<休むも相場>という局面なのかもしれない。

日本のマーケットは先週のレポートで述べたように、現在行われている伊勢志摩サミット後の消費増税先送りと大型財政出動に注目が集まっている。仙台G7は財政出動で政策協調があるかが注目されていたが、予想通りドイツや英国の理解を得られなかった。そもそも、リーマンショックのような株の大暴落でもない限り、G7が財政出動で協調するのは無理であろう。日本は7月の選挙に向けて財政出動をやりたいが、G7で変な足枷をはめられなかったことで、予定どおりバラマキを行うことになるだろう。

いずれにせよ、運用者の多くは日・米・欧の金融政策と6月23日の英国のEU離脱を巡る国民投票をみてから動くと述べており、運用者の目は米国の利上げ観測の再浮上に向いている。米国は12月に利上げを行い、1月~2月の株価急落を招いた。市場はイエレンが6月~7月に利上げに踏み切れるのか、まだ疑心暗鬼なようだ。

新債券の帝王ジェフリー・ガンドラックは、「米連邦準備制度の姿勢は『データのパターンが改善すれば、利上げの青信号がともる』から『データのパターンが弱くならない限り、利上げの青信号はともっている』にシフトした」(ブルームバーグ)との見解を示し、利上げが予想される米国株に対しては弱気のスタンスをとっている。

トレンドの見極め方

相場は簡単に儲からないのに、世界の相場人口は毎年増え続けている。それは、ランダム(無秩序)な相場にも、“例外的局面”というのがあるからである。相場にはこの例外的局面、つまり誰がみても明確な上昇あるいは下落相場がある。こういった局面はリスクをとっても相場に参入する価値があるだろう。

相場には方向性を持っている「トレンド相場」と無秩序に動いている「レンジ相場」がある。オプション市場の参加者は「トレンド相場」か「レンジ相場」のいずれかに賭ける人たちである。筆者のトレンドの見極め方は以下の図の通りである。

強いトレンドが出ているサインは、標準偏差ボラティリティと修正平均ADXの2本のラインが一緒に上昇しているところで、下のチャートでは、上段の緑色のゾーンだ。売買注文のタイミングは、ボリンジャーバンドで判断する。日足チャートのローソク足がボリンジャーバンドの1シグマのラインを外側に飛び出したところがエントリー(新規注文)ポイントである。その際、必ず標準偏差ボラティリティと修正平均ADXのラインの傾きをチェックしてトレンド相場期間であることを確認しなければならない。日足のローソク足が1シグマの内側に戻ったら、エグジット、すなわちポジションを手仕舞い(返済注文)する。

勝てる場面の見分け方

(出所:石原順)

ユーロ/ドルの横這い相場

下のチャートは通貨市場で最も出来高の多いユーロ/ドルの週足である。レポートで何度も述べているように、昨年の5月からユーロ/ドルは横這い相場で、26週標準偏差ボラティリティや14週修正平均ADXは明確な上昇局面がなく大局はトレンドのない相場と言えよう。中央銀行という仕手の崩れ相場となったドル/円は年初に大きなトレンドが発生したが、通貨市場を代表するユーロ/ドルに方向性が出ない限り、通貨市場全体としては横這い傾向を帯びてくる。

ユーロ/ドル(週足) トレンド相場=ピンクのゾーン・調整相場=ブルーのゾーン
上段:21週ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26週標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14週修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

現在、日足で明確な方向感(トレンド)が出ているのは豪ドル/ドルで、ドル/円や日経平均に方向感はなく、原油先物もADXのみのトレンド相場となっている。堅調に推移しているように見える米国株も実は方向感がない。つまり、<順張り>という意味では、相場に参入する価値のあまりない時期といえよう。

豪ドル/ドル(日足) 豪ドル売りトレンド相場
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

ドル/円(日足) 調整(ランダム)相場
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

日経平均先物(日足)  調整(ランダム)相場
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

原油先物(日足) ADXのみのトレンド相場
上段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

S&P500先物(日足) 方向性が見当たらない・・
上段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)
下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

相場のレンジを当てることは相場の方向性を当てるより難しい

大きなトレンドが発生しない、あるいはトレンド指標が<あいまい>なシグナルしか発していない局面では、レンジ内での売買で収益を上げるしかないが、相場のレンジを当てることは、相場の方向性を当てるより難しい。

筆者がレンジ相場期の売買で使っているのが、J. ウェルズ・ワイルダー・ジュニアが開発した修正平均ADXを利用した相場の転換点を当てる売買手法である。日足相場では<3日修正平均ADXが70以上や30以下の領域で反転した時が相場転換のタイミングとなりやすい。

パラメータが3の修正平均ADX(70以上・30以下の領域での反転)とエンベロープを観察しながら、最近は主に日足で転換点売買をおこなっている。相場の転換ポイントは矢印のポイントである。これは、<修正平均ADX(パラメータ3)>がピークに達した次のローソク足の方向についていくだけの短期売買手法である。トレーリングストップ注文を置いて相場に参入している。

相場で一番大切なのは防御で、具体的にはストップロス注文を置くことである。あとに残された課題は利益をいかに伸ばすかだが、損失の最小化と利益の最大化を両立させる注文方法は<トレール注文>であろう。

<注:トレール注文とは>
逆指値(ストップロス)注文を、より効率的に用いるための注文方法でトレーリングストップ注文とも呼ばれます。ストップロスのための逆指値注文を置いておくだけではなく、実勢の取引レートとほぼ同じ値幅間隔で、ストップ注文の指定レートを徐々に有利な方向へ自動的に追尾してくれます。買いポジションの場合は、相場の上昇に合わせてストップロス注文の指定レートを切り上げてくれます。逆に売りポジションの場合は、相場の下落に合わせてストップロス注文の指定レートを切り下げてくれます。このように損失の最小化と利益の最大化をはかる注文方法がトレール注文です。

日経平均先物(日足)
上段:25日エンベロープ±5%(青)・±10%(赤)
下段:3日修正平均ADX
日足相場では<3日修正平均ADX>が70以上や30以下になった時が相場転換の領域となりやすい。相場の転換ポイントは矢印のポイントである。<3日修正平均ADX>がピークに達した次のローソク足の方向についていくだけの短期売買手法で、ストップロス注文(トレール注文=トレーリングストップ注文)を置いて参入し、失敗すれば直ちに撤退、トレール注文で利益の極大化を狙う売買手法である。

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

S&P500先物(日足)
上段:18日エンベロープ±1%(青)・±3%(赤)
下段:3日修正平均ADX

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

原油先物(日足)
上段:13日エンベロープ±5%(青)・±10%(赤)
下段:3日修正平均ADX

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

ドル/円(日足)
上段:13日エンベロープ±1(青)・±2%(赤)
下段:3日修正平均ADX

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

ユーロ/ドル(日足)
上段:13日エンベロープ±1(青)・±2(赤)
下段:3日修正平均ADX

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

ポンド/ドル(日足)
上段:13日エンベロープ±1%(青)・±2%(赤)
下段:3日修正平均ADX

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

トルコリラ/円(日足)
上段:13日エンベロープ±2%(青)・±3%(赤)
下段:3日修正平均ADX

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

相場に絶対の法則はない。相場で最も重要なのは資産管理である。ラリー・ウィリアムズが言うように、「有能なトレーダーにとって重要なのはチャートにおける支持・抵抗水準ではなく、その日の高値や安値でもない。受け入れる苦痛の程度なのである。自分がどれだけの苦痛を受け入れるか前もって決めておくことが大切」である。

「学び、習い、考え、備え、そして、行動せよ」(ラリー・ウィリアムズ)

このレポートで取り上げた売買手法の詳細はDVD『相場で道をひらく7つの戦略-短期売買実践編』(石原順)で取り上げております。興味のある方はご参照ください。

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日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。