消費増税策送りと大型財政出動待ちの相場

「現在の相場の動きを見ていると、日本株もドル/円も上げたがっているように見える」というのが、運用者の共通した意見だ。したがって、好材料が出たらそれなりに相場は上がる可能性がある。市場が待っている好材料とは、一億総活躍などのプロパガンダではなく、消費増税先送りと大型の財政出動の発表である。しかし、5月26~27日の伊勢志摩サミットが終わらないと、消費増税策送りと大型財政出動は発表されない。市場はそれを待っているのである。

その先に運用者が注目しているのは、7月の参議院選挙だ。ここまでは政策が出てくるので、株はうかつに売れないとの警戒感がある。依然、7月のW選挙も噂されているが、「来年4月の消費増税を予定通り行うのであればW選挙もあるけど(消費増税後の選挙は負ける可能性がある)、消費増税を2~3年先送りするのであれば、安倍政権としてはあと2年超ある衆議院の満期を待って選挙をすればよい。

消費増税の先送りは財務省としては困るが、財務省としては別の増税を考えればよいことだ。あとは、マイナス金利やゼロ金利をできるだけ長く引っ張って、金融抑圧(みえない増税)によって財政再建を目指すということだろう。

ルー財務長官による執拗な円安牽制

為替市場では2月末の上海G20で、米国と中国が談合したという「上海合意」がまことしやかに囁かれ続けている。米国の通貨政策の転換はおそろしく単純だ。米国は景気が良くなるとドル高政策を採用し、景気が悪くなるとドル安政策を採用する。

上海G20後はイエレンFRB議長の発言がハト派色を増し、米国は為替操作の監視リストに日本を加えた。5月4日にはルー米財務長官が「日本はG7やG20のメンバーとして、通貨切り下げ競争や為替レートの目標設定を控えるという国際的合意を(今まで)順守してきた。そして、これからもメンバー全員がこの合意に沿うことは非常に重要である。日本は、非常に積極的とも言える金融政策ばかりを頼りにせず、財政政策の変更や構造改革などを実施すべきである」と、日本の通貨介入の実施に対する警告をしている。

5月13日にもルー米財務長官は日本の円売り介入の思惑を改めて牽制し、「構造改革などによる内需底上げが必要だ。G7財務相・中央銀行総裁会議では通貨安競争の回避を再確認する」とも表明している。為替(円安)が全ての日本市場で、米国の円安牽制に対する警戒もあり、伊勢志摩サミット待ちの相場となっている。

トレンド相場

現在の相場でトレンドが出ているのは原油と豪ドル/ドルであろう。筆者はこれらの商品については順張り(トレンドフォロー)を行っている。

石原式勝てる場面の見分け方

(出所:石原順)

ドル高になっても原油が買われる動きが続いており、市場はリスク選好に動いてきた。ここにきて、ゴールドマン・サックスも原油に対して強気転換したと報道されている。ただし、原油はプーチン露大統領の「50ドル以上にならない」という発言が意識されそうなポイントに到達している。また、原油上昇を言い当てたラリー・ウィリアムズの原油の上昇ターゲットは49~50ドルである。テクニカルで対処すればいいが、ここからの動きには注意が必要だろう。

原油先物(日足)
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

豪ドル/ドル(日足)
上段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(青)
中段:26日標準偏差ボラティリティ(緑)下段:14日修正平均ADX(青)

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

転換点売買のシグナルとトレーリングストップ売買

筆者は現在のトレンドレスな相場状況で、株式インデックスと通貨の相場の転換点を当てる短期売買を続けている。トレンド指標(ADX・標準偏差ボラティリティ)で方向性を確認し、トレンドがない場合はストップロス注文を置いて逆張り・転換点売買を行う。一方、トレンドが発生した場合、逆張りは直ちに停止して、トレンドについていく手法を採用する。

現在、筆者はパラメータが3の修正平均ADX(70以上・30以下の領域での反転)とエンベロープを観察しながら相場の転換点売買を行っている。相場の転換ポイントは下のチャートの矢印のポイントである。これは、<修正平均ADX(パラメータ3)>がピークに達した次のローソク足の方向についていくだけの短期売買手法である。

相場で一番大切なのは防御で、具体的にはストップロス注文を置くことである。あとに残された課題は利益をいかに伸ばすかだが、損失の最小化と利益の最大化を両立させる注文方法は<トレール注文>であろう。

<注:トレール注文とは>
逆指値(ストップロス)注文を、より効率的に用いるための注文方法でトレーリングストップ注文とも呼ばれます。ストップロスのための逆指値注文を置いておくだけではなく、実勢の取引レートとほぼ同じ値幅間隔で、ストップ注文の指定レートを徐々に有利な方向へ自動的に追尾してくれます。買いポジションの場合は、相場の上昇に合わせてストップロス注文の指定レートを切り上げてくれます。逆に売りポジションの場合は、相場の下落に合わせてストップロス注文の指定レートを切り下げてくれます。このように損失の最小化と利益の最大化をはかる注文方法がトレール注文です。

日経平均先物(日足)
上段:25日エンベロープ±5%(青)・±10%(赤)
下段:3日修正平均ADX
日経平均先物日足相場では<3日修正平均ADX>が70以上や30以下になった時が相場転換の領域となりやすい。相場の転換ポイントは矢印のポイントである。<3日修正平均ADX>がピークに達した次のローソク足の方向についていくだけの短期売買手法で、ストップロス注文(トレール注文=トレーリングストップ注文)を置いて参入し、失敗すれば直ちに撤退、トレール注文で利益の極大化を狙う売買手法である。

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

日経平均先物(1時間足)
上段:13時間エンベロープ±1%(青)・±2%(赤)
下段:3日修正平均ADX
日経平均先物1時間足相場では<3時間修正平均ADX>が70以上や30以下になった時が相場転換の領域となりやすい。相場の転換ポイントは矢印のポイントである。<3時間修正平均ADX>がピークに達した次のローソク足の方向についていくだけの短期売買手法で、ストップロス注文(トレール注文=トレーリングストップ注文)を置いて参入し、失敗すれば直ちに撤退、トレール注文で利益の極大化を狙う売買手法である。

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

S&P500先物(日足)
上段:18日エンベロープ±1%(青)・±3%(赤)
下段:3日修正平均ADX
S&P500先物日足相場では<3日修正平均ADX>が70以上や30以下になった時が相場転換の領域となりやすい。相場の転換ポイントは矢印のポイントである。<3日修正平均ADX>がピークに達した次のローソク足の方向についていくだけの短期売買手法で、ストップロス注文(トレール注文=トレーリングストップ注文)を置いて参入し、失敗すれば直ちに撤退、トレール注文で利益の極大化を狙う売買手法である。

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

原油先物(日足)
上段:13日エンベロープ±5%(青)・±10%(赤)
下段:3日修正平均ADX
原油先物日足相場では<3日修正平均ADX>が70以上や30以下になった時が相場転換の領域となりやすい。相場の転換ポイントは矢印のポイントである。<3日修正平均ADX>がピークに達した次のローソク足の方向についていくだけの短期売買手法で、ストップロス注文(トレール注文=トレーリングストップ注文)を置いて参入し、失敗すれば直ちに撤退、トレール注文で利益の極大化を狙う売買手法である。

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

ドル/円(日足)
上段:13日エンベロープ±2%(赤)・±3%(緑)
下段:3日修正平均ADX
ドル/円日足相場では<3日修正平均ADX>が70以上や30以下になった時が相場転換の領域となりやすい。相場の転換ポイントは矢印のポイントである。<3日修正平均ADX>がピークに達した次のローソク足の方向についていくだけの短期売買手法で、ストップロス注文(トレール注文=トレーリングストップ注文)を置いて参入し、失敗すれば直ちに撤退、トレール注文で利益の極大化を狙う売買手法である。

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

ユーロ/ドル(日足)
上段:13日エンベロープ±2%(青)・±3%(赤)
下段:3日修正平均ADX
ユーロ/ドル/日足相場では<3日修正平均ADX>が70以上や30以下になった時が相場転換の領域となりやすい。相場の転換ポイントは矢印のポイントである。<3日修正平均ADX>がピークに達した次のローソク足の方向についていくだけの短期売買手法で、ストップロス注文(トレール注文=トレーリングストップ注文)を置いて参入し、失敗すれば直ちに撤退、トレール注文で利益の極大化を狙う売買手法である。

(出所:MT4 売買手法&インジケータ:『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ~短期売買実践編~』石原順)

中央銀行バブルの延命期限は?

FRBが昨日18日に公表した連邦公開市場委員会(4月26~27日開催分)議事録によると、大半の政策当局者は、経済の改善が続いた場合は6月の利上げが適切になるとの認識を示した。議事録が市場の予想よりタカ派だったので、市場関係者は驚いたようだが、本日19日には、スタンレー・フィッシャーFRB 副議長とダドリーニューヨーク連銀総裁が講演を行う予定となっており、市場の注目が集まっている。

今の中央銀行依存の相場は、日欧の金融緩和と米国の利上げ先送りをどこまで続けられるかが焦点となっており、金融緩和が続けられないようなインフレ指標が出てくると、相場はアウトということになる。

いずれにせよ、BOEや日銀がQEを縮小せざるを得なくなると、やがて金融危機が再発する運命にある。債券の帝王ビル・グロースは2017年以降、新債券の帝王ジェフリー・ガンドラックは2018年のクラッシュを予想している。しかし、ファンド勢は今の相場については押し黙っており、誰も何も語ろうとしない。NYダウの動きもまったく方向感を失っている。

BOEや日銀の追加緩和は1年から1年半おきにおこなわれてきた。現在、ファンド勢の頭の中にあるのは、あと何回、追加緩和の余地があるのかということである。中央銀行の政策は、マイナス金利という限界まで達しており、金融危機はいつ到来してもおかしくはないが、BOEや日銀の追加緩和の回数があと1回~2回だとすると、金融危機の発生まで1年から3年の猶予期間があるということになる。

このレポートで取り上げた売買手法の詳細はDVD『相場で道をひらく7つの戦略-短期売買実践編』(石原順)で取り上げております。興味のある方はご参照ください。

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日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。