「10月末買い」は好調、ただし12月に半分利食う予定

10月から続いている株価の季節的な上昇サイクルは未だ継続中である。NYダウが若干冴えないものの、日・独の株価インデックスの10月末買いは好調である。このレポートで述べているように、筆者は12月16日のFOMCまでは強気の方針で臨んでいる。

本日12月3日に「ECBのドラギが動く」という観測が根強く、日・欧の株式市場はもう一段の上昇も考えられよう。ただし、筆者は12月中にポジションを半分は利食いする予定である。米国が利上げをするのと、1990年以降は「1月高」のアノマリーがワークしなくなり、特に近年の相場は「10月から12月まで上げて1月に下げる」というパターンが多いからである。

日経平均(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)

(出所:石原順)

独DAX指数(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)

(出所:石原順)

NYダウ(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±0.6シグマ(緑)

(出所:石原順)

日経平均の年間変動パターンと6カ月投資のリターン
(1945年1月から2015年1月までのNYダウの月末値をもとに日経新聞前田昌孝編集委員作成)

(出所:石原順)

NYダウの月別値動き

(出所:日経ヴェリタス 前田昌孝編集委員作成)

円の8年サイクルと円安の賞味期限

来年2016年に向けての注意点は、円安の賞味期限であろう。円のボトム(円安のピーク)の8年サイクルの前回のボトムは2007年6月高値124円13銭である。次の円のボトム(円安のピーク)は、サイクルでみると2014年後半~2016年前半に到来する。来年の前半はそろそろ円高に注意が必要な時期に入ってくるといえるだろう。

ドル/円(月足) 円のボトム8年サイクル
円安のピークは8年サイクルでみると2014年後半~2016年前半(黄色のゾーン)に到来する

(出所:石原順)

エンベロープ売買も好循環

9月後半から再開している1時間足を使ったエンベロープ売買の好循環が続いていて、1時間足取引がうまくワークしている。円相場は<1時間足>でみると、その変動は概ね13時間移動平均線の±0.6%乖離の範疇で動くといわれている。

0.6%まで動くのはトレンドが発生した場合で、低変動率相場、すなわち、ノーマル相場の動く範囲は、概ね13時間移動平均線の±0.6%乖離(赤のバンド)の半分である13時間移動平均線の±0.3%乖離(緑のバンド)の範囲に収まっている。

現時点までは、筆者は以下の通貨の-0.3%や-0.6%の水準はすべて押し目買いに動いてきた。その大きな理由は日足相場に方向性がない(標準偏差ボラティリティが低下中)からである。

ドル/円(1時間足)
上段:13時間エンベロープ ±0.3%バンド(黄)・±0.6%バンド(緑)
下段:26時間標準偏差ボラティリティ

(出所:楽天FX マーケットスピードFX)

豪ドル/円(1時間足)
上段:13時間エンベロープ ±0.3%バンド(黄)・±0.6%バンド(緑)
下段:26時間標準偏差ボラティリティ

(出所:楽天FX マーケットスピードFX)

NZドル/円(1時間足)
上段:13時間エンベロープ ±0.3%バンド(黄)・±0.6%バンド(緑)
下段:26時間標準偏差ボラティリティ

(出所:楽天FX マーケットスピードFX)

カナダドル/円(1時間足)
上段:13時間エンベロープ ±0.3%バンド(黄)・±0.6%バンド(緑)
下段:26時間標準偏差ボラティリティ

(出所:楽天FX マーケットスピードFX)

筆者は、日足で円売りトレンド相場になっている場合や方向性のない相場では、13時間エンベロープで押し目買いを継続するが、日足で円買いトレンドが発生した場合は13時間エンベロープでの押し目買いは休止する。トレンド(方向性)の有無を判定する指標は、26日標準偏差ボラティリティである。

ドラギの政策は金融緩和のつもりがタンス預金で金融ひっ迫になる可能性も

今晩12月3日のECB理事会では、最低限の政策として預金金利の0.1%~0.2%引き下げのほか、資産買い入れ(月額)の100億ユーロ増額と買い入れ期間の3カ月~6カ月延長が決まると噂されている。ECB理事会が新たな金融緩和策を発表することは、すでに織り込み済みで、市場の関心はサプライズがあるかどうかに集まっている。

いずれにせよ、市場ではドラギの追加緩和は中央銀行バブルの延命につながるということで歓迎されているが、欧州に投資しているファンドの間ではドラギが市場予想以上の緩和を行った場合、金融緩和が金融ひっ迫になりかねないと危惧されている。

ドイツの国債の金利はすでに5年までマイナス金利となっているが、これ以上マイナス金利が進むと、ユーロ圏からカネが出ていく可能性があるというのだ。また、個人も実質マイナス金利の中で、カネを銀行に置いておくよりタンス預金を増やすかもしれない。欧州の金融機関はこれから2年間は苦境が続くといわれるなか、欧州を大乗するドイツ経済も三重苦と言われ景気指標に陰りが出ている。ドラギのマイナス金利拡大という追加緩和は、金融緩和のつもりが金融ひっ迫になる可能性を孕んでいる。

ユーロ圏の利回り曲線

(出所:フィナンシャルタイムズ)

ユーロ圏の国債金利(期間:1か月~30年)

(出所:フィナンシャルタイムズ)

人民元安はトレンドか?

現在、じりじりと人民元安が進行している。人民元安が進行すると中国の輸入が減少するだろう。原油や銅の下落と並んで世界経済の不景気を暗示する現象として、ファンドも警戒し始めている。

ドル/人民元(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

原油先物(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

銅先物(日足) 世界景気の先行指標
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド±1シグマ(緑)

(出所:石原順)

米製造業ISMとSP500株価指数

12月1日に発表された11月のISM(米供給管理協会)製造業景気指数は5カ月連続で低下して48.6となり市場予想の50.5を大幅に下回るとともに、2009年6月以来の低水準に沈んだ。

ISM(米供給管理協会)製造業景気指数

(出所:石原順)

米国の景気に与える製造業の影響は、GDPでは1割程度に過ぎない。しかし、S&P500株価指数に占める製造業の割合は6割となっている。筆者が米国株のインデックス投資でS&P 500を選択せずにNYダウを選択しているのは、ドル高で米製造業の業績が伸びないからである。

日本株は参議院選挙にむけての景気浮揚策次第

賃上げ要求、設備投資の推奨や携帯電話料金の引き下げの要求、シャープへの介入(今に始まったことではないが)など、このレポートで指摘してきたようにアベノミクス「統制経済」となりつつある。その中で、日本株は参議院選挙にむけての景気浮揚策次第である。そうであれば、日本株の賞味期限はとりあえず来年前半までだろう。

「確かに、政府は目先の金利を下げることができる。紙幣を増発できる。銀行を使って金融の緩和ができる。そうして空景気と見せかけの繁栄を作ることができる。しかし、そうしたブームは、遅かれ早かれ終焉する。そして不況が待ち構えているのだ」「インフレ政策は単独の現象ではない。現在の政治経済的・社会哲学的発想のほんの一部である。ちょうど、金本位制という堅実な金融政策の提唱者が、自由主義、自由貿易、資本主義、平和主義と密接な関係にあったのと同じように、インフレ政策は、帝国主義、軍国主義、保護主義、社会主義の本質的一部なのだ」(ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス オーストリアの経済学者)

『DVD 相場で道をひらく7つの戦略 ──標準偏差ボラティリティトレード』(石原順) が楽天ブックスで好評発売中です。

日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。