投資はすべて自分で行えるわけではなく、「任せる」余地があるしくみ
例のワインファンドの破たんは、改めて投資の難しさを考えさせました。というのも、意識を高くし知識を蓄えてもなお、こうした金融商品の詐欺からは逃れられないという教訓になってしまったこと、匿名投資組合のしくみが悪意ある運営者の詐欺から投資家を保護する機能が弱いことなどが明らかになったと思うからです(まともな匿名投資組合もあるとは思いますが)。
しかし、投資というのはすべてを自分で行うものではなく、「任せる」余地があるしくみであることは事実です。これを理解しないと「なんとなく投資」している状態になってしまいます。
そして、投資の子細を人に任せることは決して悪いことばかりではありません。普通の会社員が投資のエキスパートになる必要はないが、投資による果実を得ようとしたとき、専門的な誰かに任せるほかないからです。
投資の違いによって「どこまでの範囲」を「どの程度」任せるのか、少し考えてみましょう。
一般的な投資手法の「任せ」度合いを比較してみる
一般的な投資手法について「任せる」レベルを比較してみると下記のような感じになります。
個別株
まず、「個別株」に投資をする場合、個別企業の好みなどを勘案して投資銘柄を個人が選択する点で、投資信託等に比べはるかに個人の選択の意味合いが高いことになります。
しかし、それでも経営そのものは経営者に委ねるしかありません。株主としてある程度経営に口出しはできるものの、すべてをコントロールできるわけではありません。
投資コストはもっとも低くなるものの、他の投資手法に比べて銘柄選択や売買タイミングの検討という負担が高くなります。
アクティブファンド(投資信託)
「アクティブファンド」に投資をする場合、運用方針について自らの好む投資信託を選択することができます。
しかし、銘柄の選択、売買基準などはファンドに委ねることになります。
ラップ型、リスク限定型の投資信託等
「ラップ型やリスク限定型のファンド等」はさらにファンドに委ねる余地が大きくなります。
こうしたファンドは何らかの判断基準を設けて市場の騰落を判断しポートフォリオを変動させるわけですが、複数のアセットクラスの保有比率まで変動させる分、特定の投資対象のみで運用するアクティブ型ファンドより「お任せ」度合いは高い商品です。
そして、ほとんどの個人は投資方針についておおまかな理屈しか理解できず購入することになります(理解できれば自分で投資したほうが割安になる)。「リスクは抑えます」「リターンは狙います」といった記述に自分の資金の運命を委ねるようなことになります。
結果として「上昇相場では今ひとつ」「下落相場では結局元本割れ(インデックスに少し勝ったとしても)」というようなあぶはち取らず的結果になることが多いようです(しかも手数料は割高で)。
パッシブファンド(投資信託)
「パッシブ(インデックス)運用の投資信託」に投資をする場合、ファンドに委ねる余地は比較的少なくなります。
ファンドはただ、特定のアセットクラスを対象としたインデックス(複数のアセットクラスを対象とした合成インデックスの場合もある)の騰落を再現するポートフォリオを維持することに集中するだけだからです。
私たちは投資を行いたいと考えるインデックスを選択し、投資金額を決定することで自分の投資成果をほとんどコントロールできます。インデックスとして採用されている指数の騰落がほぼ100%自分の投資成果となります。そしてコストも低く投資が可能になります。
投資を任せる相手に余計なことをさせる余地を与えるか与えないかはよく吟味したい
ときどき勘違いされるのですが、私はインデックス運用が至高であるとは思っていません。むしろインデックス運用にも問題があると思っています。
代表的な問題は「好まざる投資対象を排除できない」ということでしょう。日本株に投資をしたいと考えてはいるが、いくつかの個別の企業については正直1円も回したくない、と思うことは誰でもあります。しかしインデックス運用ではそれは行えません。ただインデックスを丸ごと買うしかないのです。
何らかのルールで絞り込みを行ったインデックスもありますが、それはそれで「インデックスそのものがアクティブ化している」傾向が生じることを否定できません。JP日経インデックス400に賛同するのはいいことかもしれませんが、TOPIXと比べればかなり意図的に銘柄が絞り込まれていることは意識しなければなりませんし、銘柄入れ替えが意に沿わない可能性も大いにあります。
私がインデックス運用に期待しているのはむしろ「投資を任せるが、余計なことはしてほしくない」投資が実現できること、かつそれを「低コストで実行可能である」ことです。
これがある限り、インデックス投資は今後も十分に私たちの主要な投資選択肢としてあり続けることになると考えています。
パッシブ運用は「余計なことをさせない」意義がある
投資は最終的な運用結果の責任を自分が負うのが原則です。だからこそ、どのような「任せ方」で投資をするかきちんと考えておく必要があります。
このとき、「余計なことをさせない」というのも投資における重要な判断基準のひとつです。運用の成否すべてについてこちらが期待したことをしっかりやってもらい、かつそれ以上のことをやらせないことは、運用管理上も悪くないことです。
投資を任せる相手方に裁量の余地を与える、ということは結果としてうまくいくことと、結果としてはうまくいかないことの両方の可能性について売買の自由度を相手に与えるということです。
もっと直接的にいえば「インデックスを下回る可能性がある運用結果(そしてそれは少なくない可能性である)」であったときに感情的な納得を得られる投資の任せ方かどうか、考えてみてはどうか、と思います。
もし、インデックスに負ける、市場の平均に負けることが納得できないのであれば、パッシブ運用を選択するほうがよいでしょうし、それが低コストで実現できるのであればなおさらです。
コストについては言うまでもなく、あなたの運用成果を確実に押し下げる要因ですし、コスト高が運用成績の上昇を呼び込む関係(およびコスト高が元本割れを回避するライセンスになる関係)は基本的にありません。
「余計なことをさせない」運用方法であるパッシブ運用を積極的に活用し、かつ低コストのメリットを得ることは個人投資において価値が高いと思います。
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