証券総合口座とNISA口座は一体化されている
楽天証券に証券口座をもち、かつNISA口座も持っている人は多いと思います。あるいは他のネット証券に口座を持ちNISA口座を持っている人も多いでしょう。
実際にNISAの売買を行ってみると、証券口座とNISA口座がシームレスにつながっていることに多くの人が気づいていることでしょう。
仕組みを簡単にいえば、
「証券総合口座かNISA口座か選ぶ」→「銘柄選択」→「売買注文」
ではなく
「銘柄選択」→「証券総合口座かNISA口座か選ぶ」→「売買注文」
の順で売買が行われるわけです。
ポートフォリオをチェックする際にも、ひとつの画面でNISA口座と証券総合口座の保有資産が一覧することができ、全体で損益把握も行えます。
当たり前のように利用している人がほとんどだと思いますが、私はけっこう驚きました。こうしたシームレスな口座管理のもとで、「なんとなく」売買するべきではありませんし、「なんとなく」口座選択をするべきではないと思うからです。
今回は、少しステップアップしたNISA活用法として、口座選択の活用法について少し考えてみましょう。
「先に口座指定」ではなく「最後に口座指定」されるポイントを理解する
口座指定を後回しにするメリットとして、売買システムは同じ仕組みを使えることがあります。なじみの売買画面で注文までいき、最後のところでどちらの口座で保有するか指定した方が、別の画面を使いこなすより便利です。
使い勝手の問題だけではありません。銘柄選びや売買タイミングを決定したのちに、NISAを使うか特定口座で保有するかを決めたほうが、口座選択の余地を最後まで残しておくことができ便利です。(もちろん、最初からNISAで買うつもりの投資商品と自覚して購入することが多いでしょうが、そういう人にとっても困ることはありません)
保有資産全体をひとつの画面でチェックできるほうが便利であることも間違いありません。銀行口座と証券口座をひとつの画面で管理できるアカウントアグリゲーションサービスが便利なのは複数のアカウントを統合管理できるからです。同じ証券会社内の2口座が一覧できないなんてもったいない話はありません。
しかし、分けて管理したほうがいくつか便利があるのも事実です。
NISA口座の「使い分け」「すみわけ」を意識したい
NISA口座は譲渡益非課税のメリットがありますが、損益通算の対象にはなりません。つまり特定口座の売買とNISA口座の売買は税制上は別のものとして管理する必要があります。税制の面では、自覚的に口座選択をしていく必要があります。
投資方針においても、譲渡益非課税のメリットをフルに活用できる投資期間を設定した方が合理的です。投資した年から5年目の年末まで期間をおくことができる(ロールオーバーすれば最大10年)NISAの仕組みは中長期の投資期間をおく投資行動に向いています。売却して譲渡益非課税のメリットを受けるチャンスは一度限りですから、ひとまず売って再エントリーすることはできません(同一年なら残っているNISA枠の範囲に限られますし、翌年以降なら翌年のNISA枠の使用になる)。売買頻度が高いか運用期間が短いと想定される場合は、NISAを使うかどうかは慎重に判断するべきです。
売買手数料の優遇(手数料のキャッシュバックや売買手数料の実質無料化など各社が競い合っている)もNISAを優先して利用したいポイントのひとつです。もし年100万円も新規投資(売却後の再投資も含む)しないのであれば、NISA口座を優先的に利用すればよいことになります。
システム自体は一体化されていようが、いくつかの点においては、利用する側が「使い分け」「すみわけ」を意識してみることが必要です。
「よいメンタルアカウンティング」に自分を導こう
行動ファイナンスでは複数のアカウントを非合理的に管理する行動を、メンタルアカウンティングと呼びますが、NISA口座や確定拠出年金口座を「分けて」管理することはむしろ合理的行動になるかもしれません。
NISAに入れたのだからできるだけ売却は遅らせようかな、と心理的歯止めがかかるのであれば、これは短期的視点により不要な売買を控えることになるかもしれず、悪いメンタルアカウンティングとならない可能性があるからです(確定拠出年金口座などは60歳まで原則おろせないという制度上の制約すら課しているが老後資産形成としては悪い話ではない)。
メンタルアカウンティングは基本的に悪いことと整理されますが、口座分けが合理性を伴うのであれば、これは「よいメンタルアカウンティング」ではないかと私は考えています。たとえば証券口座などはもともと解約が面倒な口座で、売却後現金を出金するまで数日かかります。これが結果として取り崩しの歯止めになっていることがあります。NISA口座も意識することで、さらによいメンタルアカウンティングになるかと思います。
2つの口座が一体となっており、統合管理できることが便利であることは事実です。私たちは便利に振り回されず、便利を上手に使いこなしていく意識をもってシステムを活用してみたいものです。
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