冷静な人、慎重な人はむしろ投資が難しいときがある
市場が盛り上がっています。9月19日に日経平均株価は6年10カ月ぶりとなるリーマンショック以降の最高値になりました。NYダウも同様で、同日の9月19日には3日連続で史上最高値をつけています。
いずれも景気の回復期待への安心感などが語られていますが、個人投資家のみなさんのなかには、相場の上昇あるいは変動に居心地の悪さを感じている人もいるかもしれません。
要するに「上がりすぎ」ではないか、と考えてしまい、手が出せない局面です。しかし、目の前で相場はするすると上昇を続けていくことがしばしばあります。
「この値上がりは経済の実態に即しているだろうか」という質問には答えることは困難です(ある意味答えられない、ともいえますし、答える必要がないという人もいるでしょう)。
冷静な人あるいは慎重な人ほど、「これは根拠なき熱狂ではないか」と考えてしまい、上昇相場に手が出にくくなります。私も割とそういうところがあって、今のようなマーケットは居心地が悪くて手が出しにくいです。
冷静さあるいは慎重さは投資において重要な資質ですが、結果として利益を得にくくなるのであれば、少し考えてみる必要がありそうです。
今回はなんとなく投資からのステップアップとして、冷静な人や慎重な人の対応策を考えてみたいと思います。
自分の判断が正しい、と思うことは疑ったほうがいい
最初に少し時間を割いて考えてみたいのは「自分だけが判断ミスをしてはいないか」ということです。仮にあなたの判断が合理的であったり理性的であったとしても、100人のうち99人が買いと考えるのであれば、それは市場の大勢から明らかに乖離しています。
投資においては自分の判断が正しいと考えがちで、これは誰しも陥るオーバーコンフィデンス(自信過剰)の罠です。たいていのオーバーコンフィデンスは、強気の投資判断で相場から飛び出してしまい損失を出すわけですが、慎重な投資判断が稼ぐチャンスをスキップし続けるというのは裏目に出た「儲け損ない」のシチュエーションです。これは悩ましい課題です。
慎重な人や冷静な人は、熱気に浮かされるタイプとは全く異なる視点で、「自分の判断は保守的に過ぎるのではないか」と自問自答してみると効果があると思います。
自分の中の判断と、市場の判断の2つを視野にいれよう
自分の中の投資判断と、市場が下した(ときに非合理的な)投資評価は、イコールになる必要はありません。むしろ異なる2つの判断が存在するのだ、と考えるほうが現実的です。
例えばリーマンショック直前の市場においては誰もがうすうすと過熱感を感じながらも、上昇を続ける相場にはつきあい続けるような雰囲気が漂っていました(…といっても、これは後付けで評価できる話です)。
もし、あなたが違和感を感じているのであれば、それは相場のピークをあなたが感じつつある、ということかもしれません。その感覚は大事にして、無理に実際の相場観と重ねなくてもいいと思います。そのうえで、同時に今のマーケットとどうつきあうかを考えてみます。
AKBの総選挙でいえば、「自分の好み」がありつつ、「たくさんの他人の好み」も考えて順位予想をするようなものです。自分はアンダーガールズ(総選挙で17~32位)の女の子が好きだが、大勢としてはまゆゆが1位なのだろう、と予想するイメージでしょうか。
冷静な人や慎重な人ほど少しリラックスしてみましょう。株式市場や為替相場も同じくらいに考えてみてはどうでしょうか。
もちろん、対策も考える 悩むときは少額で投資する
もちろん何も対策を講じずに過熱感のある相場でも投資を行えと言うつもりはありません。慎重さを投資行動にも活かしてみたいところです。
ひとつ考えられるのは「投資をしない」という判断からステップアップするものの、「投資額は控えめに」投資とつきあうアプローチです。
市場の反転を予想しつつも上昇が続いていく相場において、(1)値上がり益の可能性は捨てず、かといって(2)大きな損失可能性は抑えたい、のであれば投資額を控えることが慎重派にとっても納得のいく投資行動になるはずです。
「投資行動をしないことで少なくとも損失を被らずにすむ」ということは理解しつつも、このままでいいのかと悩んでいる個人投資家が追加投資を行う際には、従来の相場より投資額を調整してみると入りやすいと思います。
マーケットに応じて投資金額を調整しながらつきあう、というのは慎重派ならではの冷静な選択となるでしょう。
違和感につきあい続ける必要はない 撤退できる覚悟と準備もしておく
もちろん、違和感がありながら上昇相場に乗り続ける必要はありません。2つの戦略は意識しておきましょう。
1つはリバランスの感覚です。保有してもよいと考えているリスク資産の保有割合を超えて相場の上昇が続いているのであれば「部分的に利益確定」を行い、リスクウエートを抑える行動を取ります。これにより市場の過熱感に対する違和感の解消を合理的に行ったことになります。
資産のすべてではなく一部を売却することで、残りの投資資金については市場全体の今後にもついていくことができますし、取り過ぎたリスクは低下しますのでこれは慎重な投資家の取るべき行動といえます。
もうひとつは市場の反転急落に対応する備えです。違和感を感じているのに実際の市場が下落した場合において対応が後手後手に回るのはバカらしい話です。
市場がピークアウトしたらどのくらいの下落で手を打つかは慎重派として考えておきたいものです。またそうした市場の変化をキャッチできるようにニュースやアラートのメールが届くようなセットもしておくといいでしょう。
投資を長く続けていきたいと考えるなら冷静さや慎重さは欠かせません。しかし、冷静さや慎重さが行きすぎるとこれもまたうまくありません。コントロールも必要になります。
ベストセラー小説のタイトルではありませんが「冷静と情熱のあいだ」に投資マインドを置くことを考えてみてください。
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