• 存在感増す、アメリカを中心とした海外勢の取引

    主要メンバーは香港・アメリカ・オーストラリア・シンガポール勢

    売買高を増加させるアメリカ勢

  • 円建て原油の売買高が上場来初めて同ガソリンを上回る

    海外勢の石油関連取引銘柄はガソリンから原油へシフト

    ETNを通じて注目をあつめる円建て原油

  • 取引量が増加した円建て原油市場で売買拡大の可能性

    2015年2月の月間出来高は上場来10位の高水準

    原油と石油製品間の価格差に着目した取引がよりやりやすく

  • 騰落率ランキング
  • 国内先物主要銘柄の値位置

存在感増す、アメリカを中心とした海外勢の取引

図:1 東京商品取引所における海外勢による売買高(上位10位)の推移
(単位:百万枚)

東京商品取引所ウェブサイト「海外玉取引高表」より筆者作成

東京商品取引所が公表している海外からの委託売買によれば、2008年以降、その売買高は増加傾向にある。

2013年から2014年にかけて、香港・シンガポールからの取引が減少したが、オーストラリア、アメリカからの売買が増加し、その減少分をおおむね相殺する格好となっており、総じて、2008~09年からの海外からの委託売買の増加傾向は継続しているようである。

主要メンバーは香港・アメリカ・オーストラリア・シンガポール勢

図:2 海外勢の主要メンバーは香港・アメリカ・オーストラリア・シンガポール勢

東京商品取引所ウェブサイトのデータより筆者作成

貴金属はおおむね上位4カ国(香港・アメリカ・オーストラリア・シンガポール)が4分する格好となっている。

石油関連は上位4カ国の中でややシンガポールの比率が低いものの、こちらもおおむね4カ国が占めている。

ゴムは生産地ということもありシンガポールの割合が高い。ゴムの「その他」にはタイ・マレーシアなどが含まれる。

売買高を増加させるアメリカ勢

中でも2013年から2014年にかけて売買高を増加させているのがアメリカ勢である。

図:3 東京金におけるアメリカ勢の売買推移と東京金全体の
売買に占める同勢の割合

東京商品取引所ウェブサイトのデータより筆者作成

図:4 東京原油におけるアメリカ勢売買の推移と東京原油全体の
売買に占める同勢の割合

東京商品取引所ウェブサイトのデータより筆者作成

金・原油ともにアメリカ勢の取引高はおおむね上昇傾向であり、かつ全体の売買に占める割合が上昇傾向にある。

これらの状況より、金・原油市場において米国の日中(日本時間夜)取引が増加していると考える。

・東京金・東京原油の取引時間帯別の出来高

図:5 東京金の時間帯別出来高(2013年と2014年の比較) (単位:枚)

楽天証券提供チャート分析ツール「Futures Analyst」のデータより筆者作成

図:6 東京原油の時間帯別出来高(2013年と2014年の比較) (単位:枚)

楽天証券提供チャート分析ツール「Futures Analyst」のデータより筆者作成

金・原油ともに、21時から翌0時までの時間帯において、2014年は2013年になかった出来高に山ができている。

海外勢の時間帯別の売買の時間帯などの詳細は公表されておらず、当然のことながら夜間取引の売買高の山がアメリカ勢の売買によるものだけと言い切ることはできないが、少なくとも図3・4のようにアメリカ勢の売買枚数ならびに全体に占める比率が上昇していること、この夜間取引時間帯はアメリカの日中であることなどから、日本時間の深夜における売買枚数の変化について多少はあれど、アメリカ勢の動向が増加に寄与していると予想される。

円建て原油の売買高が上場来初めて同ガソリンを上回る

海外勢の石油関連取引銘柄はガソリンから原油へシフト

アメリカ勢・海外勢全体、ともに最近の傾向として石油関連銘柄の主要な取引対象がガソリンから原油にシフトした点があげられる。

図:7 海外勢全体での石油3銘柄の売買枚数の推移 (単位:枚)

東京商品取引所ウェブサイトのデータより筆者作成

図:8 アメリカ勢の石油3銘柄の売買枚数の推移 (単位:枚)

東京商品取引所ウェブサイトのデータより筆者作成

原油とガソリンの売買高が逆転したタイミングは、国内外の原油価格の急落が顕著になった昨年12月近辺であった。

図:9 逆転した東京原油と東京ガソリンの売買枚数 (単位:枚)

楽天証券提供チャート分析ツール「Futures Analyst」のデータより筆者作成

東京商品取引所の石油関連3銘柄(東京原油・東京ガソリン・東京灯油)では、これまで、売買がもっとも活発な銘柄は東京ガソリンだった。

上述のとおり、アメリカ勢・海外勢全体で原油の売買高がガソリンの売買高を上回ったが、東京原油市場全体でもこの逆転現象がおきている。

海外勢の2015年2月データは取引所より3月下旬に公表されるが、足元、3月に入っても日足ベースで原油の売買がガソリンを上回っているため、2月の海外勢においても原油の売買が多かったと思われる。

ETNを通じて注目があつめる円建て原油

図:10 東京原油先物連動のETN残存償還価額総額

野村證券 NEXT NOTESシリーズ ウェブサイトより筆者作成

東京証券取引所に上場しているETN「NEXT NOTES 日経・TOCOM 原油 ダブル・ブル」の残存償還価額が増加、同ETNの売買が活発になっている。

このETN(日経・東商取原油レバレッジ指数連動債)の原指数は「日経・東商取原油指数」とされている。

同指数の構成は東京原油(100%)(東京商品取引所HPより)であるため、これらのETNは東京原油先物価格に連動するものとされている。

ETNの販売増加の拡大は、東京原油先物の認知のさらなる拡大に寄与するものと思われる。

取引量が増加した円建て原油市場で売買拡大の可能性

2015年2月の月間出来高は上場来8位の高水準

図:11 拡大する東京原油先物の出来高

楽天証券提供チャート分析ツール「Futures Analyst」のデータより筆者作成

2015年2月の東京原油先物の出来高(月間ベース)は10年4ヶ月ぶりに22万枚を超え、2001年9月の上場来、8番目の出来高となった。

出来高は、その市場でどれだけ取引が行われたかの「取引の活発さ」のバロメータともいえる。

取引が活発に行われているということは、その市場にはある程度流動性が存在し、それが取引参加への動機になり得る。

今後も出来高増加の傾向が続いていけば、さらに流動性が豊富な魅力のあるマーケットになっていくだろう。

原油と石油製品間の価格差に着目した取引がよりやりやすく

図9で示した東京原油と東京ガソリンの売買枚数のとおり、これらの2つの銘柄の売買枚数はほぼ拮抗している。

原油市場の売買が増加して流動性が増したことで、原油とガソリンの「クラックスプレッド取引」の可能性が拡大している。

原油買い・ガソリン売り、あるいはその逆の建玉を同時に保有・決済し、それらの価格差の拡大・縮小をねらう取引である。

図:12 東京ガソリンと東京原油の価格推移と価格差

騰落率ランキング

図13.2015年2月27日(金)始値と3月5日(木)終値の騰落率ランキング

出所:筆者作成

NY原油反発。ドル円が円安方向に推移したことで円建て商品銘柄が強含み。

国内先物主要銘柄の値位置

チャートはすべて以下の条件で掲載

限月:期先(先限)
種類:日足
移動平均線:紫「9日」・緑「26日」
出所:商品先物取引ツール「Formula(フォーミュラ)」より筆者作成

図14. 東京金 (単位:円/グラム)

4,600円がサポートラインとなり反発
・短期移動平均線は右上がり
・中期移動平均線は引き続き右下がり

図15. 東京白金 (単位:円/グラム)

・4,600円台をはさんだレンジ相場
・短期移動平均線は右上がり
・中期移動平均線は右下がり

図16. 東京ガソリン (単位:円/キロリットル)

・60,000円から61,000円のレンジ相場
・短期移動平均線はやや右上がり
・中期移動平均線は引き続き右上がり

図17. 東京とうもろこし (単位:円/トン)

・27,000円から27,500円のレンジ相場
・短期移動平均線は横ばい
・中期移動平均線は右上がり継続

※レポート内で使用しているデータについて
特にことわりがない限り、国内商品先物銘柄は6番目の限月(期先)を、海外商品先物はその時点で取引量が最も多い限月(中心限月)のデータを採用。