図1:NY金 先物 (期近)日足チャート
単位:ドル / トロイオンス

出所:マーケットスピードより楽天証券作成

続く株価下落とゴールド上昇(2016年1月8日(金)掲載分より)

年初からの金融市場の混乱は続いています。昨日は上海株が日本時間10時半のオープニングからまた大きく売り込まれ、30分も取引せずに7%以上下落、4日に続いてサーキットブレーカー発動、なんとそれ以降の取引は停止で、昨日は早々に市場がクローズとなってしまいました。これではただ単に不安を増幅させるだけで、まったく何の解決にもならないのですが、やはりその愚を当局も悟ったようで、4日から導入されたばかりのサーキットブレーカー制度、もはや今日から一時停止することが発表されました。この株売りのきっかけになっているのが、人民元安。オフショアのマーケットではすでに1ドル6.73元まで下落しており、国内市場の昨日の人民銀行発表の「基準値」は6.5646元と4年10ヶ月ぶりの元安になっていますが、まだまだ下落余地があるということになります。中国の投資家が通貨安を嫌気して売っているのでしょうが、おそらくはレバレッジをかけ過ぎた投資家(お金を借りてきてまで株を買っていた人々)がこっぴどくやられて売りを出しているのですが、当局の規制で売れずという状況になっているのでしょう。でもそれが、日本、欧米の株式市場まで波及、世界の株式マーケットは今週一週間たった4日間で軒並み5-7%近く下がっています。やはり今年は株売りゴールド買いに、少なくとも年前半はその動きが顕著になっています。

昨日のゴールドはまさに株売りに対照的に、safe haven的なゴールド買が続き、昨年の11月以来の1,100ドルを突破。Comexで積み上げられた投資家のショートポジションもあいまって、この株式市場の状態、(サーキットブレーカーが停止された上海がどうなるか注目です。)そして中東、北朝鮮という不安材料がまだ投資家の心に重たくのしかかっている限り、買いが入りやすいのは明らかです。

一方、リスクオフで資金が集まっているゴールドに対して、その他の商品は逆にリスクオフによって売られています。原油はリーマン時の安値を下回り一時32ドル台でこれは12年ぶり。貴金属ではシルバーはゴールドに引っ張られて上昇していますが、プラチナはかろうじて価格かわらず(落ちて戻って)、パラジウムだけが大きく下げとうとう500ドルを割ってしまいました。世界最大のガソリン車のマーケットである中国の経済先行きへの不安から、投資家の投げが出ているようです。売られすぎだと思います。ここは5年のくらいのviewでbuy and holdしたいところです。

今日もまた上海株を中心にした神経質なマーケットになりそうです。またニューヨークでは雇用統計の発表の日でもありますが、FRBが12月に金利を上げたことにより、昨年ほどのインパクトはないでしょう。しかし、今後の金利上げの指標として考えていましたが、現在の中国発信世界同時株安の状況ではFRBのさらなる金利上げはずれ込む可能性が非常に高くなったと思います。

昨年年末にいろんなところに書きましたが、やはり年末年始は今年も転換点になりましたね。相場のアノマリーと言っていいでしょうね。

Risk off -株下げ、Gold上げ、ドル上げ、Pd下げ(2016年1月7日(木)掲載分より)

年初から世界が揺れています。どうして年が変わってからドッと噴出すのでしょうか。とたんに世の中リスクだらけになってしまい、挙句の果て今度は北朝鮮の水爆実験。我々日本人にとっては特にこれはとんでもない話です。まったく常識が通用しない指導者が率いる独裁国家がそこにあるというのはとんでもないリスクであることを再認識させられました。中国経済への不安、中東の緊張に加え、北朝鮮リスクの再浮上で、世界の金融市場も落ち着かない動きになりました。

ゴールドにはsafe havenへの買いが、特に北朝鮮の水爆実験(日本時間午前10時半ごろ、北朝鮮の正式発表は12時半くらい)以降継続して入り、上昇を続けました。高値は1,095ドル。でそこでニューヨークが終わりました。その他買われたのは、ドル、円、米国債。

これに対して、株が売られ、新興国通貨が売られ、原油が売られ、PGMが売られました。つまり典型的なリスクオフとして商品はゴールドは買われましたが、そのほかの商品はほぼ前面安となりました。(シルバーはゴールドの引力のおかげで上がらずも下がらず。)

ルーブルは最安値に。中国の元安、そして原油安が大きく響いています。WTI原油は34ドル台前半。これは11年ぶりの安値。30ドルに近づくという予想も。

プラチナは下げ、ゴールドが大きく上昇したために年末年始は170ドルまで縮小していたゴールド-シルバースプレッドは217ドルまで急上昇。

そして貴金属でもっとも下げたのはパラジウム。下値の目途だと思われていた530ドルを割り込んだところで、さらなるストップロスの売りが出たようです。ロシアルーブル安、南アランド安もそれに拍車をかけたものと思われますが、一方、米国では新車販売がガソリン安によって15年ぶりの最高水準となっているというニュースもあり、これはオーバーシュートではないでしょうか。

中東緊張でゴールドしっかり(2016年1月6日(水)掲載分より)

ゴールドはしっかり。大きな動きはありませんでしたが、中東の緊張に支えられてしっかりとした動きでした。中国の株価に対する不安、サウジ-イランの断交から広がる中東のスンニ派対シーア派の問題で、ゴールドは売られにくい状況になっています。昨年が米国の金融政策の行方次第で、ゴールドはこういった緊張にまったく反応しなかったことを考えると、実際に米国金融政策の正常化がなされたことにより、ゴールドの動きもその「クビキ」をはずれ、他の材料にも反応するようになってきたのかもしれません。まだ年初でマーケットは本格的には動いていませんが、大きく離れてしまった投資家のゴールドへのインタレストが戻ってくる可能性が、中国経済と中東緊張によって強まったと思います。この両方とも世界経済に深刻な影響を与えるのではないでしょうか。

ゴールドがやはりもっともしっかり。PGMはプラチナはしっかりですが、パラジウムだけは弱い展開が続いています。最大のガソリン自動車需要国である中国の経済への不安が投資家の売りを誘っているんでしょうね。

CFTC Commitments of Traders Report as of 29 Dec 2015(2016年1月6日(水)掲載分より)

出所:1月6日(水)の池水氏のレポートより抜粋

年末年始で変則的スケジュールですが、29日までの分が昨日の朝発表になりました。88トンあった投資家ロングポジションが62トンに減少。いまだ低水準での小動きが続いています。まだまだComexの投資家はゴールドはショートでhappyということですね。

サウジと中国、株価急落(2016年1月5日(火)掲載分より)

今年の始まり、ゴールドはアジアは静かな始まりでしたが、ロンドン、そしてニューヨークでは中東の緊張- サウジのイランとの断交、バーレーンもそれに追随、国交のみならず貿易や飛行機の乗り入れもやめるというニュースによりsafe haven的買いがゴールドに入り一時1,080ドルまで上昇しました。サウジは国家収入の8割を石油に依存している王制が、石油価格の下落により、にっちもさっちもいかなくなってきているのでしょう。今回のイランとの断絶も大使館の焼き討ちがきっかけになったとは言え、どちらかといえばサウジ国内の引き締めのためという気がします。このままいけばサウジの石油輸出は15年でゼロになるという見通しも出ており、現在の政治体制が果たして維持できるのかどうかも不安があります。中東の緊張はいろいろありますが、OPECの盟主とも言えるサウジの将来の不安が大きな影を落とす一年になりそうです。

株式市場はアジアの始まりとともに売りが先行、上海は7%近く下げ、先に下げていた日経平均の下げを一段ときつくし、日経も3%下げました。上海株は今年から取り入れられたサーキットブレーカーが初日から稼動、皮肉な結果となりました。しばらく落ち着いていた中国の株式市場ですが、今年の先行きに不安が広がるスタートとなりました。中国市場の減速はそのまま世界経済の先行きに直結するといっても過言ではありません。これまた中国経済の行方が今年の大きな材料になりそうです。

ゴールド以外のメタルはsafe haven buyingもなく、弱含みのスタートとなりました。特に円高からの円建ての下げはきつくなっています。ゴールドは安値を更新、他のメタルも昨年の最安値に近いところまで下げてきています。