今日のまとめ
- 航空業界は典型的な市況産業
- M&Aで過剰キャパシティが整理され、利益が出やすくなった
- 格安航空会社が登場、その多くは堅実に経営されている
航空業界
航空業界は典型的な市況産業であり、景気や燃料コストに業績が大きく影響されます。一般に航空会社は損益分岐点が高く、財務的には魅力に乏しいです。このような体質なので米国の航空会社の多くは長年、赤字を垂れ流してきました。
しかし相次ぐM&Aで過剰キャパシティが整理されたことで、ようやく近年は各社ともコンスタントに利益を出せるようになってきています。
もうひとつの流れは格安航空会社の流行です。この分野ではサウスウエスト・エアラインズが確固とした地位を築いていますが、近年、ジェットブルー・エアウェイズ、スピリット航空など堅実に経営されている優良企業が相次いで参入しています。
このセクターの主な銘柄は次のようになります。
銘柄名 | コード | 特徴 |
---|---|---|
アラスカ・エア・グループ | ALK | シアトルを拠点とする |
デルタ航空 | DAL | アトランタを拠点、世界展開 |
ジェットブルー・エアウェイズ | JBLU | 格安航空会社 |
サウスウエスト・エアラインズ | LUV | 格安航空会社 |
スピリット航空 | SAVE | 格安航空会社 |
ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングス | UAL | シカゴを拠点、世界展開 |
アラスカ・エア・グループ
アラスカ・エア・グループ(ティッカーシンボル:ALK)はワシントン州シアトルに本社を置く航空会社です。同社はホライズン・エアを傘下に持っています。
同社は主にアメリカ西海岸の各都市を結ぶルート構成になっています。とりわけシアトルはマイクロソフト、アマゾン、スターバックスなどが本社を構えるダイナミックな街で、そこをハブ空港とする同社にとって追い風の環境となっています。
アラスカ・エア・グループの使用機体の平均年齢は8.8年と比較的若いです。
同社は堅実経営で知られており、過去41年のうち赤字を出したのは6年だけです。過去5年の一株あたり利益(EPS)成長は年率平均28.0%でした。
また潤沢なキャッシュフローを生かし自社株を買い戻すとともに配当も出しています。
バランスシート上には8.7億ドルの負債が載っていますが、これは自己資本の27%にすぎません。
デルタ航空
デルタ航空(ティッカーシンボル:DAL)はアトランタに本社を置く大手航空会社です。
同社は時価総額ベースで全米最大の航空会社であり、運行キャパシティ(毎週35万座席)でもライバルのユナイテッド・コンチネンタル(毎週34万座席)をしのいで第一位です。
同社は2008年にノースウェスト航空を買収し、その後、重複するルートを整理することで機体数を減らしています。
機体の平均年齢は17.1年で、大手では最も旧式です。
同社の業績は下のようになっています。
バランスシート上の負債はノースウェスト航空と合併した直後の2009年には170億ドルあったのですが、現在は94億ドルに減っています。それでも年間での金利負担だけで8.5億ドルもあり、今後、一層負債を圧縮する必要があります。
ジェットブルー・エアウェイズ
ジェットブルー・エアウェイズ(ティッカーシンボル:JBLU)はニューヨークに本社を置く格安航空会社です。
同社は既存の航空会社が着目しなかったニッチの需要を掘り起こすことで成長してきました。一例としてサンフランシスコの対岸のオークランド国際空港を深夜に飛び立ち、翌朝、ニューヨークに到着する「レッドアイ(=赤い目、つまり夜通し飛び続ける便)」を最初に運行しました。
西海岸→東海岸という長距離ルートを多数運行している関係で、ジェットブルーは最低限の機内サービスは提供しています。その意味では一切無料サービスをしないスピリット航空に比べて若干運賃設定は高くなっています。
機体の平均年齢は7.1年で、スピリット航空に次いで若いです。
同社は安定的に業績を伸ばしています。
ロードファクターは83.7%で、安定しています。また負債が自己資本に占める割合は52%です。
サウスウエスト・エアラインズ
サウスウエスト・エアラインズ(ティッカーシンボル:LUV)はテキサス州ダラスに本社を置く格安航空会社です。
同社は過去41年間、一度も赤字を出していないことで有名です。同社はスピリット航空に次いで業界で最も運行コストが低いです。機体の平均年齢は10.9年です。
同社は米国内で24%のマーケットシェアを誇っており、サンフランシスコ・ベイエリア、南カリフォルニア、ラスベガス、デンバー、ワシントンDC、シカゴなどの大都市圏ですでに首位になっています。
同社のバランスシート上の負債は28億ドルで、自己資本の23%にすぎません。
スピリット航空
スピリット航空(ティッカーシンボル:SAVE)はフロリダ州に本社を置く格安航空会社です。
同社は2011年5月に新規株式公開(IPO)された、若い会社です。
同社の経営方針は業界で最低の航空運賃を常に目指し、マーケットシェアではなく収益にフォーカスした経営を心掛けるということです。
このため同社の営業マージンは15.0%とアラスカ・エア・グループに次いで航空業界で最も高いです。
同社は年率15~20%輸送キャパシティを増やしてゆく計画ですが、あくまでも利益優先で、若し満足な利益を確保できないと判断した場合には業容の拡張にはこだわらない主義です。
同社は航空会社としては極めて珍しい、無借金経営です。
同社は現在、55機のエアバスA320を40の空港の間で運行しています。機体の平均年齢は4.4年です。
同社は格安航空として操業効率を高めコストを下げる目的で、ビジネスクラスやファーストクラスなどは設けていません。またすべての乗客を同等に扱い、一切の特別な計らいや例外を作りません。これは乗務員トレーニング・コストを削減するための方針です。
同社はさらに最も高い財務的リターンが見込めるルートから優先的に拡張してゆき、不採算になったルートはすぐに撤退します。
このようにして、とにかく航空運賃の面で業界最低を実現することに全力を尽くすわけです。
また同社は荷物をチェックする顧客や機内サービスに対しては別途料金を課すことで知られています。同社は売上高に占める別途料金の比率が40.4%にも上ります。こういうやり方を「えげつない」と感じる顧客も居ないわけではありませんが、大半の乗客は、とにかく、航空券が安い方が得だと考えています。
同社の機体は一日平均して12.7時間稼働しており、ライバルのジェットブルー(11.9時間)やサウスウエスト(9.7時間)より空を飛んでいる時間が多いです。
それは逆に言えば今回、新しく導入されるパイロットの過労防止規定(FAR117)を順守するためには一部運行スケジュールを変更ないしキャンセルする必要が生じることを意味します。
スピリット航空は極めて安定的に業績を伸ばしています。
同社の米国市場におけるマーケットシェアは座席数ベースで僅か1.4%にすぎません。したがって今後の成長余地は大きいです。
ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングス
ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングス(ティッカーシンボル:UAL)はシカゴに本社を置く大手航空会社です。
同社は大西洋路線、太平洋路線、南米路線など国外にも大きなネットワークを持っています。
機体の平均年齢は13.5年です。
同社の業績はあまり冴えません。
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