今日のまとめ
- スマートフォンへの移行が大きなテーマ
- アップルは新製品の発表で売上モメンタムを取り戻したように見える
- アーム・ホールディングスはスマートフォン市場のシェア50%を誇っている
- 台湾セミコンダクターは半導体企業としては極めて利幅が大きい
- スカイワークスは「モノのインターネット」で恩恵を蒙る
- シーゲートはクラウド・コンピューティングで恩恵を蒙る
スマートフォンの登場で市場が変容
ハイテク・セクターはアメリカ株の中で最も大きなセクターであり、それゆえ銘柄数も多いです。今日はその中で携帯電話やタブレットなど、我々消費者が身近に使っているデバイスのメーカー、さらにそれらのメーカーに部品を供給している企業を取り上げます。
アップルが2007年1月にiPhoneを発表して以来、消費者のコンピュータへの接し方は大きく変わりました。それまでは主にノートパソコンでネットを楽しんでいたのが、スマートフォンに移行したのです。
2012年末の時点で世界のスマートフォンのユニット数は7.3億ユニットでとなっています。米国での普及率は48%、中国は24%です。これが2017年には世界のスマートフォンのユニット数は18億ユニットに増え、その時点での米国の普及率は80%、中国は50%と予想されています。
こうしたスマートフォンの劇的な普及は、消費者向けコンピュータの市場を変容させ、従来のノートパソコンなどの需要が頭打ちになる一方で、スマートフォンやタブレットなどの新しいデバイスの需要が急増しました。
アップル
この新しいトレンドをいち早く先取りし、市場の育成に大きく貢献した企業がアップル(ティッカーシンボル:AAPL)です。アップルの売り上げ規模はiPhoneを最初に発表した2007年の240億ドルから2012年には1,565億ドルへと激増しました。過去5年間の営業キャッシュフローの成長率は年率61%でした。
しかし同社の成長率は最近、目に見えて鈍化しています。この一因はスマートフォンが広く普及したことによります。また最近、アップルの新製品は目新しさに欠けると言う指摘もあります。
しかし最新のiPhone5SとiPhone5cは発表後最初の三日間だけで900万台売れたとアップルは発表しています。これはアナリスト達の予想を大幅に上回りました。つまり一見するとアップルは昔の勢いを取り戻したように見えるのです。
ただ、この「三日間で900万台売った」というコメントは、気をつける必要があると思います。なぜなら最終的に消費者が購入した実数だけではなく、通信会社に一括して買い取らせたiPhone5cも「売れた」として計算している可能性があるからです。これについては性急に結論を出すのではなく、今後の決算を精査する必要があるでしょう。
【記号の見方】
- DPS 一株当り配当
- EPS 一株当り利益
- CFPS 一株当りキャッシュフロー
- SPS 一株当り売上高
アーム・ホールディングス
アーム・ホールディングス(ティッカーシンボル:ARMH)はスマートフォンやその他のデバイスを駆動するマイクロプロセッサーのデザイン会社です。わかりやすい言い方をすれば、ガジェットの心臓部となる半導体の意匠を、ライセンス契約などを通じて多くのテクノロジー企業に供与している会社です。つまり知的所有権がこの会社の財産なのです。現在、世界のスマートフォンの約50%が、同社の知的所有権で動いています。
同社の回路デザインの特徴は消費電力が少ない点にあり、これはスマートフォンやタブレットにとりわけ適しています。モノを作って売っているのではなく、デザインを売っているので、グロスマージンは極めて高いです。同社の2012年の年間売上高は9.35億ドルと比較的小さいのですが、時価総額が225億ドルもあり、株価評価が極めて割高なのは、そのためです。
同社が販売している半導体デザインの使用権は、スマートフォンの一台のコストのうち、ほんの僅かの割合しか占めていません。従って、スマートフォンの価格が下落した場合でも同社は値引きプレッシャーを殆ど感じないと思います。同社の業績は、どれだけ多くのメーカーにそのデザインが採用され、どれだけ大量にそれらの製品が出荷されるかにかかっています。
台湾セミコンダクター
台湾セミコンダクター(ティッカーシンボル:TSM)は「TSMC」と呼ばれることが多いです。同社は半導体の専業ファンドリーとして、顧客の半導体デザイン会社が持ち込んだデザインに従って、実際に半導体を量産する仕事を行っています。
同社の顧客は極めて幅広いため、どの企業がマーケットシェアを伸ばしても、半導体の生産の仕事は同社に舞い込んでくるため、顧客企業やブランドの浮沈は、同社の業績に余り大きな影響を与えません。むしろ景気全体の影響の方が重要になってきます。
同社は営業マージンが61%もあり、半導体の会社としては極めて儲かっています。そのことは16~28ナノメターなどの最先端のプロセス技術に積極的に投資出来ることを意味し、同社のリードを一層広げることに寄与します。
同社の過去5年間のキャッシュフロー成長率は年率9.5%でした。また同社株は配当利回りが2.8%あります。
スカイワークス・ソリューションズ
スカイワークス・ソリューションズ(ティッカーシンボル:SWKS)はスマートフォンをはじめネットワーク機器、自動車、医療など様々な分野で使われる半導体を作っています。
同社はインターネット・オブ・シングス(IOT=別名「モノのインターネット」)と呼ばれる、家電製品や防犯システムなどのインターネットによる制御、監視のトレンドの恩恵を受けます。
同社の過去5年のキャッシュフロー成長率は年率36.5%でした。同社は無借金経営です。
シーゲート・テクノロジー
シーゲート・テクノロジー(ティッカーシンボル:STX)はハードディスク・ドライブの会社です。
消費者の好みがノートパソコンからハードディスク・ドライブを搭載していないスマートフォンへとシフトしているということは、一見すると同社にとって逆風の環境のように思われます。
しかしスマートフォンからアクセスするクラウド・サービスの流行でハイパフォーマンスのデータ・ストレージの需要は高まっており、利幅の大きいそれらの製品の好調が同社の業績を下支えしています。
過去5年間のキャッシュフロー成長率は年率17%でした。また同社は3.6%という高い配当利回りを持っています。
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