今日のまとめ

  1. 最近の長期金利の上昇で住宅建設関連株は調整局面にある
  2. 債券買い入れプログラム縮小の見送りは、同セクターにとってプラス
  3. 同セクターの企業は借入が多いので市況の変化に常に気をつけること

長期金利と住宅建設関連株の関係

住宅建設業者の株価は金利と住宅市場の動向に大きく左右されます。リーマンショックで米国の住宅建設業者はどこも大打撃を受けました。その後、連邦準備制度理事会(FRB)の極めて緩和的な金融政策に救われる格好で、米国の住宅市場はある程度持ち直してきました。

しかし今年の春ごろからFRBの債券買い入れプログラムが縮小されるのではないかという観測が出て、長期金利が上昇し、それを嫌気して住宅建設業者の株も調整局面にあります。

下は米国の30年住宅ローン金利のグラフです。今年の5月以降に上昇している点に注目して下さい。

米国30年住宅ローン金利(%、セントルイスFRB)

次は住宅着工件数です。住宅ローン金利の上昇で、最近、陰りが見えていることがわかります。

米国住宅着工件数(千件、年率換算、季節調整済み、商務省)

ただFRBは9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で債券買い入れプログラムの縮小を見送りました。景気が、まだ本格的に立ち直れていないというのが、その判断の背景にあります。

これを受けて米国の長期金利は少し下がりはじめ、住宅市場にとってもホッと一息つける展開となっています。

また住宅価格自体は、下のグラフにあるように着実に回復してきています。

S&Pケース・シラー20都市住宅価格指数(セントルイスFRB)

これらのことから、現在の住宅建設関連株の調整は、長期回復局面の小休止の段階であり、再び株価は上昇局面に入ると考えられます。

ただ住宅建設業者は土地を取得し、住宅を建ててから販売するため、その間、土地や住宅を在庫に持つことになります。このため市況が暗転する局面では、在庫の評価損で思わぬ大赤字を計上することがあります。実際、リーマンショック以降の各社の業績はボロボロでした。

さらにこれらの企業の多くは土地取得や住宅の建設に際しての借入が多く、物件が動かなくなると、とたんに資金繰りに困ります。

このように住宅建設業界の株はとても荒っぽいので、上手くタイミングを捉えて売買する必要がありますし、金利が上昇しているとき、住宅の販売が低迷しているとき、住宅価格が下がっている時は、躊躇せず損切るべきです。

DRホートン

DRホートン(ティッカーシンボル:DHI)はテキサス州に本社を置く住宅建設業者です。初めてマイホームを買う層を主な顧客としています。同社の売る家の売値の平均は22.3万ドルです。この購買層は、住宅ローン金利の上昇の影響を比較的受けやすいです。従って金利上昇局面では敬遠されやすい株だとも言えます。

DRホートンの業績(ドル、2013年以降は予想、バリューライン)

【略号の読み方】

  • DPS 一株当り配当
  • EPS 一株当り利益
  • CFPS 一株当りキャッシュフロー
  • SPS 一株当り売上高

DRホートンは31億ドルの負債を抱えており、これは自己資本の42%に相当します。またインタレスト・カバレッジは5.2倍です。これは住宅建設業界の中にあっては平均的なバランスシートだと言えます。

DRホートン(DHI、キャピタルIQ)

ハブナニアン・エンタープライゼズ

ハブナニアン・エンタープライゼズ(ティッカーシンボル:HOV)はニュージャージー州に本社を置く住宅建設業者です。同社の最近の販売トレンドは、あまり芳しくありません。

ハブナニアン・エンタープライゼズの業績(ドル、2013年以降は予想、バリューライン)

また同社の負債、15.5億ドルは、ほぼ自己資本に匹敵し、しかも利払いにかなり四苦八苦している様子です。敬遠すべき株だと思います。

ハブナニアン・エンタープライゼズ(DHI、キャピタルIQ)

KBホーム

KBホーム(ティッカーシンボル:KBH)はカリフォルニア州に本社を置く住宅建設会社です。同社は最近、高級住宅へと事業戦略をシフト中です。裕福層は住宅ローン金利が上昇しても、それほど住宅の購買行動に変化を見せません。その意味では向こう数年を見据えた場合、同社の戦略は時代の流れに沿っていると言えるでしょう。

KBホームの業績(ドル、2013年以降は予想、バリューライン)

KBホームのバランスシートには19億ドルの負債が載っており、これは自己資本の80%に相当します。あまり強いバランスシートだとは言えません。

KBホーム(DHI、キャピタルIQ)

レナー

レナー(ティッカーシンボル:LEN)はフロリダ州に本社を置く住宅建設業者です。売上の4割が東海岸であり、堅実に経営されています。最近の販売トレンドも好調です。

レナーの業績(ドル、2013年以降は予想、バリューライン)

同社の負債額は51億ドルで、これは自己資本の58%に相当します。利払いは、余り心配ないと思います。

レナー(DHI、キャピタルIQ)

NVR

NVR(ティッカーシンボル:NVR)はバージニア州に本社を置く住宅建設業者です。同社は住宅建設業者の中でも最も借入が少なく、また配当を払わず、自社株買い戻しで株主に還元することで知られています。

NVRの業績(ドル、2013年以降は予想、バリューライン)

負債比率は自己資本の31%です。利払いに対する懸念はありません。また同社はリーマンショック後も営業ベースで一度も赤字に転落しなかった珍しい会社です。

NVR(DHI、キャピタルIQ)

パルト・グループ

パルト・グループ(ティッカーシンボル:PHM)はミシガン州に本社を置く会社です。同社は最近、安売りをせず、売上高を犠牲にしてもマージンを守る経営に転換しています。それを反映して売上トレンドは他社に比べると悪いです。

パルト・グループの業績(ドル、2013年以降は予想、バリューライン)

同社の負債は21億ドルで、自己資本の48%です。

パルト・グループ(DHI、キャピタルIQ)

トール・ブラザーズ

トール・ブラザーズ(ティッカーシンボル:TOL)はペンシルバニア州に本社を置く企業です。高級住宅に特化しており、平均販売価格は61.2万ドルです。このセグメントの購買層は住宅ローン金利の上下に余り左右されません。

トール・ブラザーズの業績(ドル、2013年以降は予想、バリューライン)

同社の負債は26億ドルで、自己資本の43%です。バランスシートには問題はありません。

トール・ブラザーズ(DHI、キャピタルIQ)