楽天証券経済研究所所属のアナリスト今中能夫による今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。
今後の相場の見通し、決算発表情報、個別銘柄の短期株価見通しなどを分かりやすく解説しています。

マーケットコメント

日経平均の上昇続く、アメリカの金融緩和縮小は見送りへ

2013年9月17日の週の株式市場は、前週の好地合いを引き継ぎ、強い展開でした。日経平均は17日に下がったものの、18日はアメリカFRBの金融緩和縮小に関する決定を前に前日比193.69円高となり、19日はFRBの金融緩和見送りの決定を受けて、前日比260.82円高となり、14,700円台に乗せました。20日は前日比23.76円安の14,742.42円で引けましたが、9月9日に三角保合いの先端を上放たれてから、上昇基調がはっきりしてきました。

FRBの金融緩和見送りは市場のコンセンサスとは逆の意外な決定でした。FRBの発表を受けて、外国為替市場では一時円高ドル安となりました。しかし、金融緩和見送りを歓迎して、日本、アジアなどの新興国、欧州各国で株式市場が上昇する「リスクオン」の形になると、再び円安ドル高に転換し、ユーロもユーロ高円安になりました。為替のこの動きが自動車、電機、機械の株価を支援する構図になっています。

相場の材料も厚みを増してきました。9月7日の国際オリンピック委員会総会において2020年夏季オリンピック・パラリンピックが東京に決定してから、東京湾沿岸のマンションの売れ行きに弾みがついています。この動きは早晩東京都内、特に山手線沿線に波及すると思われます。19日に発表された平成25年都道府県地価調査を見ると、3大都市圏で地価上昇が起こっていますが、今後、山手線沿線での再開発地域の地価上昇や新たな再開発計画に弾みがつくと思われます。

グラフ1 日経平均株価:日足

表1 2013年都道府県地価調査(2013年7月1日時点)

建設、不動産の材料が相次ぐ

また、9月14~16日の3連休は、台風で京都が洪水に見舞われました。現状では、このような異常気象が毎年続くと考えざるを得ません。こうなると、2020年東京五輪前後に大勢の外国人観光客が日本に押し寄せてくるまで、東京だけでなく、地方の観光地で可能な限りの対策をとらなければなりません。ただし、川の上流に遡って洪水対策をする治山治水となると、普通は五カ年計画を2~3回やらなければできないものです。早く計画をたてて、道路、トンネル、橋の補修、新設や新たなダムの建設などの対策を立てなければ間に合わないと思われます。

加えて、来年度中に「リニア中央新幹線」が着工されます。2027年に品川-名古屋間が開業し、2045年に新大阪まで延伸する計画です。総工費は、品川-名古屋間が5兆4,300億円、品川-新大阪は計9兆円となる計画です。事業主体の東海旅客鉄道(JR東海)は否定的ですが、前倒し建設を望む声も大きくなり始めています。これまでの大規模鉄道建設の実例を見れば、建設期間中、品川から名古屋までの駅周辺の経済に大きなプラスの影響が出ると思われます。

更に2027年に品川-名古屋間が完成後は、金融と不動産など各種サービス業の中心である東京と、自動車、自動車部品の世界的集積地である中部経済圏が一体となります。2045年に品川-新大阪間が開通すると、これも世界有数の電機、電子部品、機械産業の集積がある関西経済圏が、関東、中部と一体化することになります。非常に大きな経済効果が生まれると思われます。

東証建設業指数が年初来高値を更新

この中で、株式市場における建設セクターへの関心が一段と高まっているようです。東証業種別株価指数の建設業指数は、5月22日につけた高値749.11を、9月10日756.37で更新し、9月19日には760.59となって今年高値を更新しました(グラフ5)。この動きを追うように、不動産業指数も9月19日に1,830.27を付け、4月12日の年初来高値1,901.13に接近しています。2020年東京五輪が東京の地価にすでに影響を与え始めていること、全国で洪水対策やインフラの補修が必要になっていること、来年度のリニア中央新幹線の着工などで、建設需要は増加局面に入ったと思われます。

建設会社にとっては、今後、労務費、資材費の上昇を工事単価上昇で吸収できるかという問題が出てきますが、大成建設、大林組、鹿島建設などの大手は、費用の増加は受注単価に転嫁する方針です。建設需要の勢いが強いため、大手が全面転嫁の方向性であれば、熊谷組、西松建設などの準大手クラスやショーボンドホールディングス(各種補修)、ライト工業(法面工事)、NIPPO(道路舗装)などの専門会社も価格転嫁することができると思われます。

10月にも日経平均は16,000円か、大勢上昇相場に転換する可能性が出てきた

9月24日の週の株式市場を展望すると、27日に8月の全国消費者物価指数が発表されます。デフレ脱却の程度を測る重要指標です。アメリカでは25日に8月の耐久財受注と新築住宅販売件数、26日に第2四半期(4-6月期)GDP確報が発表されます。また、10月上旬に安倍首相が消費税増税を決断すると思われます。

株式市場にとって最大の注目点だった9月のFOMCを無事通過したこと、為替が堅調に円安方向になっていること、建設分野での好材料が多いことを考えると、日経平均は一段高する可能性があります。日経平均にとって逆向きのアクシデントがなければ、早ければ10月中にも16,000円に達し、年初来高値を更新する可能性があります。グラフ2でわかるように、16,000円の少し下には長期で強力な上値抵抗線がありますが、これをクリアできる可能性があるのです。その後も16,000円以上の株価が維持できれば、今秋から来春にかけて1990年1月から23年間の長きにわたって続いた大勢下降相場が終了し、少なくともオリンピックまでの7年、長ければリニア開業までの14年から20年以上続く可能性がある大勢上昇波動が形成される可能性があります。日本の株式市場は重大な局面、歴史的転換点に差し掛かっていると思われます。

グラフ2 日経平均株価:月足

注目セクター、注目銘柄

注目セクター、銘柄は、内需の建設、不動産とグローバルの自動車、電機の二大分野からまず選びたいと思います。即ち以下の通りです。

建設:大成建設、大林組、鹿島建設、熊谷組、ショーボンドホールディングス、ライト工業、NIPPO、日本橋梁、横河ブリッジホールディングスなど

不動産:三菱地所、三井不動産、住友不動産、東急不動産、平和不動産、NTT都市開発、トーセイなど

自動車:トヨタ自動車、本田技研工業、富士重工業、マツダ、日野自動車、いすゞ自動車、デンソーなど

電機:ソニー、パナソニック、村田製作所など

また、福島第一原発の汚染水処理に国が全面的に関与することになったことから、政府は今のところ否定的ですが、今後東京電力の法的地位の問題が浮上する可能性があります。東電問題は、国のエネルギー体制の変更に繋がる問題です。例えば、基幹電源として原子力は本当に正しい選択なのかという議論はいずれ出てくると思われます。原子力に変わる基幹電源は、石炭、LNGの火力発電以外にありえません(太陽電池などの再生エネルギーは取れるエネルギーが小さすぎて基幹電源には今のところ向きません)。石炭、LNGの輸入業者である三菱商事、三井物産、住友商事、海外で発電所の運営事業を行っている丸紅、伊藤忠商事など総合商社、LNGプラント建設の日揮、千代田化工建設が挙げられます。

なお、原発の廃炉でも発電所建設でも大成建設などの建設会社が必要になります。建設会社が必要な分野は拡大しています。

表2 楽天証券WEEKLY

グラフ3 信用取引評価損益率と日経平均株価

グラフ4 輸出・グローバル関連

グラフ5 内需関連

グラフ6 金融関連

グラフ7 日米金利差

グラフ8 ドル円レート:日足

グラフ9 ユーロ円レート:日足

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