楽天証券経済研究所所属のアナリスト今中能夫による今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。
今後の相場の見通し、決算発表情報、個別銘柄の短期株価見通しなどを分かりやすく解説しています

マーケットコメント

4月30日の週は連休の谷間で方向感乏しい

2013年4月30日の週の株式市場は、ゴールデンウィークの谷間ということもあり、方向感の乏しい相場でした。円高がゆっくり進行していることを反映して、日経平均は前週末の13,800円台から5月2日金曜日は13,600円台に下落しました。トヨタ自動車、本田技研工業などの自動車セクターが軟化しましたが、来週の決算発表への期待や今週発表された決算への評価を反映して、ソニー、パナソニック、村田製作所、京セラなどの電機、電子部品が強含む展開となりました。内需・金融緩和関連では、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャルグループなどのメガバンク、野村ホールディングスなどの大手証券、三菱地所、三井不動産などの不動産の株価は、堅調ではありますが、伸びのない展開でした。

新興市場では、主力銘柄の中で株価が波乱となる銘柄も見られるようになりました。新興企業の中でも先駆したガンホー・オンライン・エンターテイメント、ユーグレナの株価が5月1日に大きく下げた後2日に急反発する展開となりました。いずれも大幅に上昇した銘柄だけに今後の展開が注目されます。また、タカラバイオ、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングなどバイオ、iPS関連の一部は、「iPS細胞で創薬」という5月2日日経1面の記事を受け上昇しました。IT、ゲーム関連では、コロプラ、enish、モブキャストなどの好業績あるいは比較的PERが安い銘柄が物色されました。連休明けの物色の方向性が注目されます。

今週は連休の谷間なので、足元の傾向、即ち、やや円高に向かっていること、長短金利が下落していないこと、大型株の伸び悩みと自動車セクターの下落、新興市場での荒っぽい動きなどが、傾向的なものなのかどうか、判断がつきにくい状況です。

来週5月7日の週は、主力銘柄の3月決算が一斉に発表されます。トヨタ自動車(8日)、富士重工業(8日)、日産自動車(10日)、ソニー(9日)、パナソニック(10日)、三井倉庫(7日)、三菱地所(7日)、三井不動産(9日)、三井物産(7日)、三菱商事、丸紅、伊藤忠商事(以上8日)、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(9日、2013/12期1Q)などです。来週は、為替市場、金利と企業のファンダメンタルズの両方を睨む展開が予想されます。特に新興市場が更に上値を追う動きになるかどうかが注目されます。

表1:楽天証券投資WEEKLY

グラフ2 日経平均株価:月足

グラフ3 信用取引評価損益率と日経平均株価

グラフ4 ドル/円レート:日足

グラフ5 ユーロ/円レート:日足

マーケットスケジュール

2013年5月7日の週の日本での注目点は、10日発表の4月の景気ウォッチャー調査です。株高の消費への影響が注目されます。

特集:2013年3月期決算発表メモ 2

先週に続き注目決算に関して、簡単に報告します。

京セラ

2013/3期売上高1兆2,800億円(前年比7.5%増)、営業利益769億円(21.2%減)、当期純利益664億円(16.2%減)、2014/3期会社予想、売上高1兆4,000億円(9.4%増)、営業利益1,400億円(82.0%増)、当期純利益960億円(44.4%増)、EPS523.3円。

スマートフォン向けなどのセラミックパッケージ、太陽電池が増えたものの、欧州の自動車向けセラミック部品が減少したこと、アメリカの電子部品子会社AVXが環境浄化費用213億円を計上したことが響き、2013/3期は減益となりました。2014/3期はAVXの環境浄化費用がなくなること、スマートフォン向け電子部品の伸びが見込まれるため、会社側は2014/3期の業績回復を見込んでいます。業績と株価をポジティブに見たいと思います。

村田製作所

2013/3期売上高6,810億円(前年比16.5%増)、営業利益586億円(30.4%増)、当期純利益423億円(37.6%増)、2014/3期会社予想、売上高7,800億円(14.5%増、営業利益1,000億円(70.5%増)、当期純利益700億円(65.1%増)、EPS331.6円。

好業績でした。2013/3期の用途別売上高を見ると、通信(スマートフォンなど)3,298億円(前期比24.8%増)、コンピュータ及び関連機器(タブレットPCなど)1,343億円(23.4%増)、カーエレクトロニクス(カーナビゲーションや電装品向け)1,020億円(19.5%増)となっており、スマートフォン向けが全社業績を牽引しています。

2014/3期も4月から受注が堅調で、スマートフォン大手向けの受注が高水準を維持している模様です。円安メリット、操業度効果、合理化効果が値下げ効果を上回り、2014/3期も業績続伸が予想されます。ややPERが高くなっていますが、大手スマートフォンメーカーの部品発注が村田製作所のような大手に集中しており、業績の変化率に注目したいと思います。

マツダ

2013/3期売上高2兆2,052億円(前年比8.5%増)、営業利益539億円(前期は387億円の赤字)、当期純利益343億円(同1,077億円の赤字)、2014/3期会社予想、売上高2兆4,800億円(前年比12.5%増)、営業利益1,200億円(122.5%増)、当期純利益700億円(104.1%増)、EPS23.4円。

2013/3期は、大きく業績が回復しました。マツダは国内生産比率が約60%と高く、円高で大きなダメージを受けましたが、円高に対応した合理化と昨年11月からの円安で急角度で業績が回復しました。2014/3期は円安メリットに加え、CX-5、Mazda 6(アテンザ)と超低燃費技術「スカイアクティブ」搭載車種の増加によって大幅な業績回復が見込まれます。スカイアクティブ搭載車種の比率は2013/3期19%から2014/3期41%に拡大する見込みで、これも業績改善を後押しすると思われます。業績と株価をポジティブに考えたいと思います。

本田技研工業

2013/3期売上高9兆8,779億円(24.3%増)、営業利益5,448億円(135.5%増)、当期純利益3,671億円(73.6%増)、2014/3期会社予想、売上高12兆1,000億円(22.5%増)、営業利益7,800億円(43.2%増)、当期純利益5,800億円(58.0%増)、EPS321.8円。

2013/3期は、東日本大震災とタイの洪水からの販売台数回復に昨年11月からの円安メリットが加わる内容でした。特に4Qに円安メリットが出ましたが、同時に為替予約損が営業外損益に発生しました。また、2輪事業がインドネシアのローンの頭金規制やブラジルのローン規制の影響を受けたため、営業減益となりました。4輪事業は黒字転換しましたが、全体の業績は少々物足りないものとなったことは否めません。

2014/3期は大幅増益予想ですが、コストも増えます。新車やフルモデルチェンジが多くなるため、新工場の稼動開始を含めた設備投資が多く、減価償却費が増える見込みです。研究開発費も増えます。一方で秋に新型ハイブリッドシステムを搭載し、トヨタのアクアに並ぶかそれを上回る燃費性能を持つと予想される新型フィットを国内に投入する計画です。海外でもアコード、シビック(いずれもアメリカ)、ブリオ(アジア)など売れる車が多くなっています。再成長へ向けた動きが注目されます。

表2:主要企業の2013年3月期決算発表予定日