フランス大統領選の第1回投票は事前の予想通りマクロン氏首位、ルペン氏2位の結果となりました。週明けのオセアニア市場では、昨年の英国国民投票やアメリカの米大統領選挙の予想外の結果を警戒しユーロを中心としたショートポジションが積み上がっていたためか、マクロン氏首位との報道が伝わるとショートポジションの買い戻しによって先週の終値と比べてギャップを開けて相場が始まる、いわゆるギャップオープンの展開となりました。おそらく3位以下の候補がマクロン氏支持を表明したことから、第2回決戦投票もマクロン氏優位との思惑も強く働いたことが背景にあるようです。しかし、ユーロやドル円の動きを見ていると過剰反応しているのではないかとの印象を強く受けます。事実、東京株式市場がオープンして大幅高になっても、ドル円は株高を確認すると材料出尽くしからかドル売りとなりました。

直近の世論調査によるとマクロン氏とルペン氏の支持率は6対4でマクロン氏優位の状況となっています。しかし、何が起こるかわからないのが昨年来の教訓です。また、日本のゴールデンウィーク(GW)を挟んで重要な政治イベントや経済イベントが目白押しであり、その中にはドル安要因や円高要因も含まれています。また、5月の連休中には円高になりやすいとの説もあり、大統領選挙後の安心感が消化された後は再びそれらの要因を意識した円高圧力がかかる可能性も残ります。まず、連休前後のイベント日程を整理してみると以下の通りとなります。既に終わったイベントも相場の流れを見る上で参考になるため記載しています。

4月・5月・6月の政治・経済日程

  • 4月14日:米財務省「為替報告書」提出
  • 4月15日:故金日成主席生誕105年
  • 4月18日:日米経済対話
  • 4月20-21日:G20財務相・中央銀行総裁会議
  • 4月23日:第1回フランス大統領選挙
  • 4月25日:朝鮮人民軍創建85年
  • 4月26日:米国税制改革法案公表
  • 4月26-27日:日銀金融政策決定会合(展望レポート公表)
  • 4月27日:ECB理事会
  • 4月28日:米国暫定予算期限
  • 4月28日:米国1-3月期GDli速報
  • 5月2-3日:FOMC
  • 5月5日:米雇用統計
  • 5月7日:第2回投票フランス大統領選決選投票
  • 5月9日:韓国大統領選挙
  • 6月8日:英国総選挙

これだけイベントが集中しているのも珍しいことです。要因が多すぎて全く動かなくなるのか、あるいは大波乱になるのか注目です。また、政治イベントが多いですが、経済イベントにも注目すべきイベントがあります。4月28日の米国1-3月期GDP速報は1%未満との予想も出ており、もしそうなれば6月の利上げ観測が後退し、米長期金利が低下し、ドル売りシナリオが浮上してくるかもしれません。

5月のGW中に円高になるとの説はどうでしょうか。検証するためにハッサクの過去の記録から以下の表にまとめてみました。GW中は円高に行くのかという観点ではなく、5月の安値(円高値)は月の中でいつ付いたのかを調べてみました。結論から言いますと、必ずしも連休中に円高になりやすいと言うわけではありません。5月のGW中に安値を付けたのは10年間の中で2011年と2016年の2回しかありません。5月半ばまでだと6回となります。GW中に円高というよりも5月前半は円高になりやすいということが言えるかもしれません。

過去10年間の5月の月中の動き(ドル円レートは参考値)

年月 5月の高値・安値の動き
2007年5月 月初に当月安値119.07円を付けた後は円安展開、31日に121.99円の当月高値
2008年5月 2日の米雇用統計を受け105.70円(28日まで高値)に上昇、ユーロ円の下落と原油の上昇によるドル売りから12日に102.57円安値を付け、その後ドル高から29日に105.88円の高値
2009年5月 7日、ユーロ売りのドル買いから当月高値99.80円、22日、与謝野財務相が「為替介入は考えの外」との発言から急落し93.85円の当月安値
2010年5月 4日の94.99円の当月高値から6日にはNYダウの約1,000ドルの大暴落によりパニック的な売りによって数時間で5円超の円高87.95円に(当月安値)
2011年5月 世界景気減速懸念による商品・株の下落から5日に79.57円の当月安値を付け、その後19日に82.23円に上昇
2012年5月 80円を挟んで展開から月末には78円台に下落
2013年5月 米景気改善から月初からドル高進行し、22日に103円台後半に上昇後、下旬に日本株が急落し月末に100円台前半に
2014年5月 2日の米雇用統計を受けて103円台に上昇後、米長期金利の低下によって21日に100円台に下落
2015年5月 14日に118円台後半に下落後、ドル高となり28日に124.46円と12年半ぶりの円安水準に
2016年5月 3日に豪州中銀(RBA)の予想外の利下げから当月安値105.55円、月末近くに111.45円の当月高値

※この表でいう「上昇」はドル上昇のことであり、「下落」はドル安のことです。ドルが中心の表現となっています。この言い方が世界標準です。「当月安値」は、ドルの安値(円の高値)のことであり、「当月高値」はドルの高値(円の安値)のこととなります。

5月のGW中に円高になるとの説が根強く残るのは、2010年の円急騰の動きがあったかもしれません。GW中ではないですが、GW明けの6日に数時間で5円の円高に動いた印象が強かったからかもしれません。この動きはハッサクにとっても忘れられません。東京を離れて休暇をとっていたらディーリングルームから電話がありパニックになっていました。レートをチェックしてみると、思わず大台を見間違えたのではないかとびっくりした記憶があります。休暇気分も吹っ飛んでしまいました。

GW円高説にはいろいろな背景があるようです。ドル円の需給を左右する日本の会社が長期休暇のため、海外投機筋が仕掛けやすいとの説があります。ドル安に動いた時に輸入企業や年金・信託などのドルの買い手が乏しくなるため仕掛けやすいのではないかとの見方です。また、日本の輸出企業は長期休暇に入る前に、円高を警戒し事前にドルを売る傾向にあり、売らない場合はドル売りオーダーを増やす傾向があると言われています。ドル売りオーダーを大量に置くことによって円安の動きを抑制するのではないかとの見方もあります。そしてGW中にそれらのオーダーが約定出来なかった場合は、連休明けにマーケットの実勢ベースでドルを売ることもあるため連休明けにはドルの売り圧力がかかりやすいとの見方もあります。最近は日本の貿易黒字額も増えてきているため、こういう見方にも留意しておく必要があります。

今年のGW中はどうなるでしょうか。5月前半はどうなるでしょうか。今年の場合、これらGWの思惑と現実にGW前後に重要なイベントが目白押しと言う背景があるため、フランス第1回大統領選が安堵で終わったからといってやはり警戒を解除すると言うわけにはいかなさそうです。

フランスの決戦投票は確かにマクロン氏優位との調査が出ていますが、保守党の党首がマクロン氏を支持し、マクロン氏への投票を呼び掛けても、現実に投票者がどのように動くかが重要なこととなります。英国の国民投票のように予想外の結末になることもシナリオから未だ外さない方がよさそうです。