「なんとなくNISA」ではつまらない
少額投資非課税制度、NISAの本申し込みスタートを10月1日に控え、ニュース報道、マネー雑誌の特集、各金融機関のDMと情報が増えてきました。税制優遇は個人にとってなかなか得がたい恩典であり、投資を行うならこれを利用しない手はありません。
「なんとなく」であっても、CMや営業をきっかけにしてNISAに興味を持つことは、とても大事なきっかけです。すでに口座開設をしている人からすると驚くかもしれませんが、投資の最大のハードルは口座開設です。もしかすると、NISAブームがこれを乗り越えるきっかけになるかもしれません。
しかし、その後の運用で納得のいく結果となるかは「なんとなく」だけではうまくいきません。本連載は「なんとなく投資」から投資初心者から脱出することが目標です。そこで、「なんとなくNISA」にならないための運用術について本連載でも少し考えてみたいと思います。
NISAの運用スタンスをどう置くか考える
制度の概要や詳細については、楽天証券内にも特設ページがあり、詳しく紹介されていますので(私もオンラインセミナーなどに登場していますので、ぜひご覧ください)、そこに制度の解説は譲るとして、ここで考えてみたいのはもう少し具体的な活用の方法です。
本欄の読者はまさか「何をしなくても国が儲けさせてくれる制度がNISAだ」というトンデモナイ誤解はしていないでしょうが、NISAの投資方法は様々です。外国の個別銘柄へ株式投資し一点買いをしてもよければ、国内株式を投資主対象とするインデックスファンドで毎月数万円程度の積立投資をしてもかまいません。
逆にいえば、投資方法の幅広さはNISAの魅力でもあります。NISAはあくまで譲渡益の税制メリットを享受できる「器」であり、投資方法にはほとんど制限がありません。自分に合った商品選択が可能なのです(ただし公社債投信や預貯金は対象外ということは商品選定における制限になります)。
そう考えると、投資の理解や経験の度合い、投資資金額の多少などが、NISAの活用方法においても少なからず影響を与えてきます。そのあたりのスタンスを整理していくと、個人にとってNISAをどう運用すべきか、少しずつ方法が見えてきます。
年間の投資金額を軸に投資スタンスを整理する
最初に考えてみたいのは年間投資額です。NISAの非課税枠が100万円あるということは、同じリターンを得られたと仮定すれば10万円投資した場合より100万円投資した場合のほうが非課税メリットも大きくなります。NISAの場合、投資元本の制限のみが設定されているので、どれだけ100万円を超えて儲かっても非課税で売却できます(運用益も含めて100万円という勘違いが時々あるようです。これは財形年金などのイメージと混同した誤解です)。
まず、100万円をいつでも拠出できる層です。この場合、投資戦略においても多様な戦術をとることができます。例えば、年間を通じて安値と考えられるタイミングを見計らった一括投資を行うことができます。もくろみが当たれば高いリターンを得られます(が、タイミングを判断する苦労も伴います)。もちろん定期的な購入も可能ですから、選択肢が多いということになります。
しかし、そもそも年間100万円の投資枠を確保できないという人も多いことでしょう。このとき、年100万円の投資はできないのだからNISAを使えないのだと思う必要はまったくありません。金額が少なくとも税制優遇が受けられる口座を利用してかまいませんし、むしろ金額が少ないからこそ税制優遇は取り逃さないぞ、というぐらいの意識が欲しいくらいです。
ただし、投資金額の捻出について、毎月の給与や賞与を原資にする場合、定期的に数万円程度、あるいは夏と冬に数十万円の資金確保を行うことになるでしょう。これが投資の戦術に影響を及ぼします。
年間投資額が100万円に達しない人の投資戦術
少額の投資であり、定期的に少額の投資原資を獲得するような場合、これをスポットで購入するか、定期的な積立投資とするかはスタート時点でしっかり検討しておく必要があります。
給与の一定額ないし賞与の一定額を定期的に投資原資とする場合、シンプルで確実な戦術は積立投資ということになります。この場合の最大のメリットは投資漏れを避けられることです。普通預金口座にプールして投資のタイミングを待とうとすると、他の用途に消費してしまう恐れがあり、ねらったタイミングが来たときに資金不足になるかもしれません。そこで、給与振り込み日の翌日などのタイミングで確実に引き落としされる方法をNISAでも考えてみるわけです(引き落とし日の指定は各社の仕様にもよる)。
とはいえ、投資額が少ないから一括投資が許されないということはありません。それに自分の手で購入ボタンを押すほうが、投資のおもしろさを感じることができることも事実です。この場合に考えてみたいのは、毎月の給与を原資とした投資資金は積立、ボーナスを原資とした投資資金はタイミングをねらったスポット投資に振り分けてみる発想です。
例えば毎月の2万円は積立投資、ボーナスからの10万円(×2)は数か月ほどの期間でタイミングを見ながらスポット投資をしてみるような方法でNISAを使ってみるとおもしろいでしょう。ただし、タイミングにこだわるあまり、ボーナスからの投資を実行しないとNISAの年間利用額が大きく下がり、結果として税制メリットも小さくなる恐れがあります。また投資信託は一日に一度しか基準価額が変更されず、買い付けが翌日以降になることもあるなど、株式やETFほどタイミングをねらった投資は行えませんので注意が必要です。
意識的にNISAを活用して投資のステップアップを
NISAは大きな器であり、同一年に売却を行うような短期投資で使うことも、中長期投資の基礎として10年投資を試みることもできます。だからこそ、利用者側が「NISAをどう使うか」しっかり意識しておくことが必要になります。
使い方には多様性があるNISAを通じて、投資のステップアップをしていってみてはどうでしょうか。
NISAの年間投資額から投資戦術を考える
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