世界的には老後資産形成へ手厚い支援が進む
老後資産形成は社会的にも重要な課題です。それは日本に限った話ではなく、世界的にも同様で、個人の老後資産形成に対して税制上のメリットのある制度を創設する例が多くあります。
イギリスやオーストラリアの例などでは、企業年金制度のない会社員は強制的に制度に加入させ、積立させるような流れもあるほどです。
こうした自助努力支援が進む背景には、世界的にも公的年金制度の充実は困難であるという理由があります。公的年金の充実が期待できないのは日本も同様ですから、日本でもこうした支援策が期待されるところです。
そこで、「なんとなく投資からの脱出」の観点からも、日本の老後資産形成支援策を見てみます。
2014年度に予定の日本版ISAとは
日本では証券税制優遇策ということで譲渡益課税が10%になっていますが、これは2013年末で終了が予定されています。そこで、これに代わる制度として「日本版ISA」が予定されています。ISAというのはイギリスの制度であるIndividual Savings Accounts、つまり個人貯蓄口座の略です。
現行では毎年、年間100万円まで投資可能なISA口座を開設し、その中で投資した資金については売却時の譲渡益を非課税とするものが予定されています。ただし、権利行使は一度限りであるほか、10年内の売却が求められます。また時限立法措置を想定しており、3年間のみ実施される予定です。
思い出されるのは、長期保有した上場株式等の100万円特別控除でしょうか。2001年に創設されたもので、2001年11月30日から2002年12月31日までの間に購入した上場株式について、一定期間保有し、2005年1月1日から2007年12月31日までの間に譲渡した場合、取得対価1,000万円までの部分の譲渡益は非課税とするというものでした。投資経験が10年以上ある人は「ああ、そんなものもあったなあ」と懐かしく思うかもしれません。
ちゃぶ台返しで創設を狙う日本版IRA
イギリスではISA制度が恒久化されることで、結果として老後資産形成に資する制度に成長したのですが、現状の日本版ISAはあまりにも期間限定措置にすぎ、老後資産形成には役立ちません。
そこで金融機関関係者からわきあがっているのは「せっかくスタートするなら日本版IRAに衣替えしてはどうか」というものです。IRAというのはアメリカの制度で、Individual Retirement Account、つまり個人退職勘定の略です。アメリカでは順調に残高を伸ばし、今では401(k)プランを上回る規模で成長しています。
日本版IRAと日本版ISAの違いは、中長期運用と60歳以降の払い出しを前提とし、恒久措置化を目指そうというものです。詳しくは比較表を図に示しています。
ただし、こちらについてはすんなり実現に至っておらず、昨年末の政府税制改正大綱では採用されていません。今のところ、証券税制優遇の終了時には日本版ISAをスタートとなっています。
老後資産形成として有利な口座は使いたい
老後資産形成に限らず、資産形成においては有利な口座、条件は活用したいところです。すでに実施済みの類似の制度としては個人型確定拠出年金(401k)があります。こちらは積み立てた掛金が全額所得非課税となるうえ運用益も非課税となります。受取時も非課税になる可能性があるなど、日本版ISA、IRAを上回る税メリットです。
ただし、中途解約は原則不可で60歳以上の受け取りを求められます。利用者についても自営業者など国民年金保険料を納めている人と、企業年金のない会社員に限られています(といっても利用可能な人は3,500万人もいる)。
老後資産形成を行う意識があれば、税制優遇のある個人型401kは魅力的な選択肢であり、利用可能な人はチェックしてみるといいでしょう。自分の老後のために積み立てると、目の前の所得税が下がるわけですから、使わないのももったいない話です。
企業年金のある会社員など約1,600万人に含まれる読者は、個人型401kが利用できませんが、今後の日本版ISA、日本版IRAに関する情報をチェックし、利用可能になった場合は積極的に活用を検討してみたいところです。
国も年金水準を引き下げている以上、何らかの代替策を講じる必要があります。税制優遇が充実されることを期待したいところです。
DC/日本版ISA/日本版IRA 比較表
確定拠出年金 (個人型) |
少額投資非課税措置 (日本版ISA) |
個人型年金積立金 非課税制度 (日本版IRA) |
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日本の制度 (日本版ISAは予定) (日本版IRAは構想) |
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諸外国の制度 | (アメリカ 401k)
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(イギリス ISA)
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(アメリカ roth IRA, )
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