クリスマスと年始は少し、お金と幸せについて考えてみたい
世の中はクリスマスシーズンです。どこか華やいだ雰囲気に街も包まれています。通り過ぎる人もみんなうれしそうな表情が多いようです。
クリスマスが終わればすぐにお正月です。お正月も人々が幸せそうな日々を過ごす時間です。家族や親類、あるいは友人と過ごす時間をもつ人も多いでしょう。
今年最後の更新では、「お金と幸せ」の話をしてみたいと思います。楽天証券に口座を持ち、資産運用を行っている人にも、市場が閉まっているときでいいので、「なぜ、自分は運用するのか」を少し考えてみてほしいのです。
たくさんのお金があれば幸せになるほど、単純ではないが…
「なんとなく」を卒業し、運用の目的をしっかり考えてほしいというのがこの連載のねらいの一つなのですが、「お金が多いほど幸せになれる」とは皆さんも考えていないと思います。世の中はそんなに単純ではありません。
しかし、「お金がなければ幸せを得られない可能性は高い」とも感じているはずです。そして、多くの場合、現状ではまだお金はあまり十分ではないと考えているから、リスク資産運用にチャレンジしているのではないでしょうか。
現役期間だけでなく、定年退職後のことも考えてみると、ほとんどの人の経済的問題は深刻です。特に老後については、定期的収入を公的年金だけに依存することになった場合、お金の不足が幸せを得られない状態を作る可能性は飛躍的に高まります。
運用は経済的に必要なお金を、効率的に作り出す手段です。もはや運用をせずとも幸せを担保できる保証はありません。
不労所得だとか汚い稼ぎ方だと揶揄する人も多いと思いますが、たくさんのお金を生み出す手段として運用に前向きに取り組んでほしいと思います。
そしてもちろん、「なんとなく」ではなく必要な目標額を意識し、目標実現のために運用に計画的に取り組んでいってほしいと思います。
お金を増やすことは幸せではなく、使うことで幸せを作り出せる
一方で、お金を増やすことそのものに幸福感はあるでしょうか。もちろん、株価が上がれば嬉しいし、相場の見通しが当たれば成功感を覚えます。最高の快楽だと信じている人もいるでしょう。
しかし、あえて尋ねてみたいのですが、「お金を増やすことそのものが人生の幸せではない」と思いませんか?
やはり、お金を使って幸せを得ることのほうが大事ではないでしょうか。
困らないだけの資産がありながら、取り崩すことを恐れるあまり、経済的に厳しい老後を送るお年寄りが実際にいます。さらに増やそうとしている人もいます。
残念ながら、こうした年金生活者はお金があってもきちんと幸せを生む使い方ができていません。
これでは「清貧の思想」を愛読して、お金がなくても幸せにすごす老後のほうが精神的に豊かかもしれません。
お金は満足を得る形で使ってこそ、幸せを得ることができます(もちろん使いすぎで借金するようでは本末転倒ですが)。
お金は目的ではなく、手段です。そして、資産運用もまた、目的ではなくお金を増やすための手段に過ぎません。
現役時代においても、老後の生活においても、生活の幸せを度外視してまでお金に仕える必要はないのです。
この年末年始には、自分のお金とのつきあい方はどうか、少し考えてみてはどうでしょうか。
お金がかかることをこれだけ予見できる時代はない
ところで、将来にどれだけお金がかかるか、いつ頃にかかるか、といったことをこれだけ予見しうる時代は今までにありませんでした。
団塊世代以前については、ほとんどの場合、がむしゃらに働き続けることを考えることはあっても、長寿を意識し計画的に老後のための資産形成を行う視点はありませんでした。
私たちは現在と将来を見通して経済的課題やそのための必要額を検討することができます。むしろ将来のことをまじめに考えると、お金がかかることに気付いて愕然とすることのほうが多いかもしれません。
しかし、将来にお金がかかることを知ることは「幸い」であると思います。少なくとも、知らずに漫然と時間を過ごすより、その対策を考える時間を得られたのですから。
お金についてしっかり考え悩むことができることもまた、幸せです。そういう人は、お金を増やすことを「なんとなく」ではなく、意識的に考えることができるでしょう。
ESGもいいが寄付についても考えてみたい
最後に、「寄付」の話をしてみたいと思います。寄付もまた個人の幸せとお金が接点を持つポイントのひとつです。
ESGあるいはSRIのような、社会責任投資のアプローチを投資家も意識するように指摘する人がいます。投資の判断は個人の自由ですから、こうした投資を採用する人もいていいと思います。
しかし、私は「運用は運用」「社会貢献は社会貢献」で分割したほうがすっきりするように思います。特に個人においては運用成績を犠牲にする可能性を負ってまで社会責任投資をする必要があるか疑問です。パッシブ(インデックス)運用も、社会責任投資を真剣に考える人からすればダメらしいのですが、これでは運用管理の負担は増しますし、個人の運用の選択肢はますます狭くなってしまいます。
個人の場合は、運用は運用で継続し、年収の0.5~1%程度を目安に寄付をすればいいと思います。そうすれば社会貢献もしながら、投資方針を変えずにすっきり運用できると思います。
今年は震災に際して寄付をした人の多かったことと思いますが、寄付金の一部は所得控除もしくは税額控除の対象になります。これは寄付金の一部を国に払わせているようなものです。ESG投資に税制優遇は今のところありませんので、投資と社会貢献は分ける価値はあります。
投資をする人は、確定申告をする人が多いと思いますので、寄付についても考え、また確定申告してみてはどうでしょうか。年内に寄付をすれば、来年の確定申告に間に合います。
寄付は見ず知らずの誰かを幸せにすると同時に寄付をした自分の心も幸せにする手段です。クリスマスから年末年始にかけてのこの時期、無理のない範囲で寄付を考えてみるのも、お金について考えるいいきっかけになると思います。
今年最後の掲載は、運用のテクニックやライフプランのテーマを離れて、運用をする「意味と幸せ」について考えてみました。
お金と幸せについて考えることは、「なんとなく」資産運用を行うことから卒業するための要素でもあります。お説教をするつもりも、宗教的意図を込めるつもりもありませんが、クリスマスから年末年始にかけて仕事も休みになるこの時期、少し思いを巡らしてみてはいかがでしょうか。
来年も、人生を豊かにするための運用について考えていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
メリークリスマス! そして、よいお年を!
運用は幸せを作り出す「手段」である
個人は「寄付」と「運用」を並行してもいい
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