毎日投資情報をチェックするのが理想だが

毎日マーケットをチェックするのと、チェックしないのとでは、もちろんチェックした方がいいに決まっています。しかし、理想としてはそうでも、現実として毎日マーケットを見られないことはあるはずです。

投資は現実的な世界です。心のこもった投資資金がマネーゲームの投資資金より有利な運用条件を得られることはありません。高い経営理念を誇る企業が高いパフォーマンスをあげる保証もありません。理想だけで投資がうまくいくほど話は単純でありません。

だとすると、投資のように現実を理解することが重要な世界において、「毎日マーケットをチェックし売買指図すべし」のように理想だけを言って現実にできない人のことを考慮しないのもおかしな話です。

特に老後資産形成については、理想だけでなく現実的な投資方法を考える必要があります。というのも、定年退職しリタイア生活をスタートさせるまでの間、継続的に取り組む必要があるからです。仕事やプライベートの充実に忙しい日々において、毎日マーケットをチェックできない可能性は現実的に高いはずです。

毎日マーケットを見なくてもすむ投資手法はないものでしょうか。

投資情報を毎日チェックせずともすむ投資手法はあるか

投資情報を毎日チェックする必要があるということは、投資のアプローチにおいて「ひんぱんに売買する必要がある」「価格変動のリスクが高い」「自分の運用方針が把握できていない」「心理的に落ち着くことができない」ということではないでしょうか。

ひんぱんに売買する必要がある

信用取引等のポジションはいつか解消しなければならないため、常にマーケットをウォッチする必要があります。レバレッジをかけた投資手法(FX等)も同様です。10%の下落で全損リスクを負うから毎日マーケットをウォッチする必要が出ます。これらの投資を老後資金運用では行わないだけでマーケットをチェックする負担は大きく軽減されます。

価格変動のリスクが高い

レバレッジをかけた運用や個別銘柄の投資については価格変動の度合いが高いものになってしまいます。TOPIXはほとんど動いていない日に自分の投資銘柄だけマイナス20%になってしまった(バッドニュースが明らかになったなど)ということがありうるわけです。解消方法のひとつはETF等の活用によるインデックス運用です。インデックスも値動きは大きいとはいえ、個別銘柄ほどの価格変動に振り回されずにすむので、マーケットをチェックする毎日の負担が軽減されます。

運用方針が把握できていない

自分のポートフォリオがどれくらい価格変動するかイメージを持たずに投資をする人が多いのですが、金額ベースで納得をしておくべきです。きちんと分散投資をしているポートフォリオであれば、一年間にマイナス20%以下になることはまずありません(企業年金運用はリスクを高く取りつつリスク抑制の工夫をしたポートフォリオですが、過去20年で最悪だったのが2008年度のマイナス18.3%です)。だとすれば、今ある投資金額が200万円なら、年間40万円のマイナス以上の下落はまずない、ということになります。この段階で許容できないのであれば投資をしすぎということになりますので、それに応じた投資金額に調整することでリスク管理の負担は軽減できます。

心理的に落ち着かない

投資初心者はドキドキする感情のコントロールを学ぶことも経験のひとつですが、老後資産形成については落ち着かない日々を30年過ごし続けるわけにはいきません。保有資産全体に占める投資比率、投資金額総額に占めるリスク度が高すぎることが要因であれば、感情をコントロールできる程度の投資額に下げてみるべきです。むしろ投資を続けることを優先させてみてください。先ほどの例でいえば、投資金額100万円で年間の最悪損失額が20万円というように引き下げてみます。長い時間をかけて投資額と許容度を広げていき、30年後に3,000万円の運用管理ができるくらいのつもりで一歩一歩増やしていくといいでしょう(定年退職時にはこれくらいの運用をできる能力と経験が欲しい)。

塩漬けと、市場を見ないでよい投資手法の選択は違う

ここまで、マーケットを見る頻度を低くする投資方法を検討してきました。老後資産形成については現実的選択肢としてマーケットを見る頻度は低くしても、差し支えなく運用が継続できる方法を考えたいものです。

ところで、こうした運用方法を提案すると「それは塩漬け容認ですか」と怒られることがありますが、塩漬けすることと毎日マーケットを見なくても運用できる工夫(カッコよくマネーハックといいたい)をすることは別物です。

塩漬けは投資判断の放棄です。元本割れの恐怖から目をそらしている状態です。
ここで述べている考え方はむしろ積極的に投資判断しているといえます。その方法が、デイトレードやスイングトレードのようなアプローチではなく、数カ月から数年程度の見直しですむ運用方針の採用なのです。
必要に応じて見直しは行うべきですし、見直しの実行さえするな、と述べているわけではありません(見直しの実行は重要です!)。

老後資産形成のような長期投資においては、良い意味での「ほったらかし」を可能とする仕掛け作りが重要です。運用をスタートしたときは、毎時間ごとにマーケットをチェックし売り買いしたくなるものですが、そればかりが資産形成ではありません。
ほったらかしにならない程度で、毎日マーケットウォッチをしなくても運用が継続できる程度の運用方法を考えてみるといいでしょう。

おまけ

また、ニュースチェックに時間がかかるので負担に感じるような人は、チェックを楽にする工夫もしてみるといいでしょう。
例えば、スマートフォンとRSSリーダーの活用で、最新情報を手元でいつでもチェックできる体制は簡単に構築できます。twitterでも経済情報を発信するアカウントをフォローすれば、ツイートのチェックの合間に情報入手可能です。

スマートフォン用のアプリも便利です。マーケット情報を配信するアプリやネット証券会社のアプリもニュースをチェックするのに便利です。iSPEEDなら「市況」「ニュース」タブをクリックすれば電車の移動中に概況把握もできます。情報収集の利便性を向上することで、毎日の時間を減らすのもひとつの方法でしょう。

便利なツールに慣れるために2時間かかっても、毎日10分チェックが早くなれば、2週間で時間は取り返せます。テクノロジーはどんどん活用していきましょう。

「現実問題」として毎日市場を見ない投資を考える

塩漬けと「毎日市場を見ない投資」は違う