はじめに

今回のアンケート実施期間は、1月27日~1月29日でした。

1月の国内株式市場を振り返りますと、月間を通じて下落基調を辿りました。日経平均は月間ベースで大幅に反落し、月末の終値は14,914円。前月末比で1,376円(8.45%)安となりました。当初は昨年末の株価急上昇の修正との見方も多く、持ち直す場面もあったのですが、終盤にかけて下げ幅が拡大しました。

1月も引き続き米国の動向が注目を集め、米12月雇用統計は弱い結果でとなりました。米景気が順調に回復しているとの見方そのものに大きな変化はなかったのですが、市場は予想外の指標結果や悪材料に対して敏感に反応するムードとなりました。そこに新興国経済に対する懸念が重なり、相場が急激に不安定になりました。

今回のアンケートですが、こうした相場の地合いの変化が意識され、前回の強い「株高・円安」の見通しが大きく後退する結果となりました。

次回も是非、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之

1.日経平均の見通し

  • Q1:12月30日と1カ月後の日経平均の見通し DI=8.96
    (12月30日と1カ月後の日経平均の見通し DI=53.36)
  • Q2:12月30日と3カ月後の日経平均の見通し DI=15.97
    (12月30日と3カ月後の日経平均の見通し DI=37.79)

今回の日経平均見通しDIは、1カ月先のDIが8.96、3カ月先のDI15.97となり、ともに前回の結果(それぞれ53.36、37.79)から大きく悪化しました。とりわけ、1カ月先DIの下落が目立ち、1月相場のムードが反映された結果となっています。DIの内訳となる回答比率(強気、中立、弱気)を見ても、1カ月先、3カ月先ともに弱気の割合が2割程度に増えています。

ただ、強気の回答割合はともに約3割以上を維持しているため、依然として先行きに対する見方は、弱気に傾くというよりは、前回調査ほどではないものの、強気見通しが後退したと考えられます。実際に、日経平均の動きを週足チャートで追っていくと、1月末時点では26週移動平均線水準に位置しており、「確かに1月の株価下落はきつかったが、まだ、昨年末の過度な楽観による修正の範囲内」と捉えることができました。ただ、2月以降も大きく下落する場面が目立っていたため、現在は弱気派が増加していると思われます。

とりわけ、月末にかけて下げ幅が急ピッチで拡大しましたが、その理由とされているのは新興国に対する不安が台頭してきたからとされています。アルゼンチンやトルコなどの通貨が急落したことや、中国では製造業PMIが冴えない結果だったこと、米FOMCでは予想通りの量的金融緩和の縮小が決定される一方で、新興国リスクに対する言及が無かったことなどの材料が相次いだことが不安を高めた格好です。

ただ、直近の株価下落はやや不安先行の面も否めません。米国の量的金融緩和が新興国に与える影響や、「どの新興国のどんな不安がどの程度のリスクなのか?」という点について、これから不安要素の洗い出しと整理が進んでいくと思われます。新興国不安と一括りにされていますが、例えば中国ではシャドーバンキングや地方政府の債務問題、タイやトルコは政情不安など、それぞれ抱えている問題はまちまちです。

昨年5月の終わり頃に、バーナンキ前FRB議長が量的金融緩和の縮小について言及したのをきっかけに、新興国からの資金流出懸念が高まって、相場が急落する局面がありました。その後の調整は8月終盤まで続きましたが、その期間は約3カ月でした。もちろん、前回と今回の状況が同一ではありませんが、株式市場が落ち着き、次の展開に入るまではしばらく時間がかかる可能性は意識しておいた方が良いかもしれません。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

2.為替相場の見通し

基準日 ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
1月27日 DI=22.25 DI=17.11 DI=9.05
12月30日 DI=59.37 DI=45.85 DI=31.73

2013年末調査のDIでは、70%近い投資家が円安方向をみていました。ドルは年初高値105.44円をつけたあと、1月末には102円割れまで下落する展開となっており、円高進行の兆候が見え始めています。

ドル円の1月は月足で陰線となり、米ドルのDIは22.25(前回は59.37)、ユーロ17.11(同45.85)、豪ドルは9.05(同31.73)という結果となり、3通貨ともにさらに円高方向を見る投資家が大きく増加しました。

米ドル

米ドルは、12月調査のDIでは70%近い投資家が円安方向をみていましたが、今回1月末の調査では47.6%と半数割れしました。

年初の105円台からの急落で、2/3には101円割れしました。昨月のDIで、注しなければいけない点として、3点あげましたが(前回DIレポートを参照してください)、そのうち「経済指標の下振れ」という点に、市場は大きく反応しリスク回避の円高進行となっています。ただし、正確には米国経済の下振れではなく米国のテーパリングからの新興国を巡るリスク台頭となったようです。

アルゼンチンのデフォルトリスクからトルコ、南アフリカの予想外の利上げに新興国売り先進国買い(特に円)が選好されたようです。

ただし、すでに足元の市場の注目は新興国懸念から先進国のファンダメンタルの確認となっており、米雇用統計、ECB理事会、製造業関連の指標も重要です。

一目均衡表で米ドル日足をみると、2/5現在、雲の最下限で推移しており当面は101円を巡る攻防になりそうです。

ユーロ

1月末のユーロDIは17.11と前回より28.73ポイント下落しました。

ユーロも米ドル同様円安方向を予測する投資家が半数割れし41.32%となりました。1月のユーロは1月初の145円から2月初の136円まで大きく下落しました。リーマンショック以来の140円からの下落に投資家の失望感も見えてきます。

ユーロの対ドルレートをみると、1.38でトリプルトップを形成後、乱高下しているのも注目です。本DIレポートが公表時にはECB理事会の結果が出ていると思われますが、インフレ鈍化をうけて利下げの可能性もありますので注目です。

12月のユーロ圏の失業率は、10%を超えておりまだ金融緩和はありそうです。

また、ドルが対円でどう動くかがおおきなカギとなりそうです。

豪ドル

豪ドルDIは9.05、前回比-22.68となりました。円高方向の回答が23.88%と3通貨総じて倍増となりました。

前回のレポートでは「この2か月間近く91-95円で推移しており、明確なトレンドが出ていない」と書きましたが、終値ベースで2013/9より下抜けしていなかった90円を割り込んだことは、90-91円を抵抗ライン(レジスタンス)とし、頭が重い展開がうかがえそうです。

方向感を失っていた豪ドルが、下落基調にあるのは1. 円高/米ドル安 2.豪ドル安/米ドル高のダブルパンチが要因です。特に豪ドルの対米ドルレートは1/24に3年半ぶりに0.86台をつけました。

また中国の低調な経済指標や新興国の混乱によるリスク回避がさらに下値圧力をかけており、低いDI値を証明しているようです。

楽天証券 FX本部長 永倉 弘昭

3.今後注目する投資先

  今回 前回
アメリカ 52.08% 58.93% △6.85%
EU諸国 16.38% 15.71% 0.67%
ブラジル 14.59% 16.91% △2.32%
ロシア 5.95% 6.51% △0.56%
インド 25.67% 20.54% 5.14%
中国 7.74% 8.80% △1.06%
中東・北アフリカ 10.76% 8.06% 2.70%
東南アジア 35.21% 38.39% △3.18%
中南米 5.38% 6.36% △0.99%
東欧 3.34% 3.28% 0.06%

4.今後注目する投資商品

  今回 前回
国内株式 80.44% 78.02% 2.42%
外国株式 23.23% 28.49% △5.27%
投資信託 42.14% 44.36% △2.22%
ETF 17.11% 20.64% △3.52%
FX(外国為替証拠金取引) 13.37% 16.36% △2.99%
国内債券 7.33% 8.30% △0.97%
海外債券 9.62% 9.30% 0.32%
14.75% 13.92% 0.83%
原油 2.69% 2.93% △0.24%
商品 1.55% 2.24% △0.69%
REIT 14.59% 17.60% △3.01%
CFD 0.73% 1.69% △0.96%

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。