はじめに

11月の国内株式市場を振り返ると、序盤は円高基調や需給懸念などが重石となって冴えない展開が続いていましたが、相場の地合いが一転したのは、8日に発表された米10月雇用統計の結果が予想以上に強かったことがきっかけでした。さらには、14日のイエレン次期FRB議長の公聴会で金融緩和姿勢があらためて確認されると、上昇が加速する格好となりました。

その後も、各国の経済指標結果や、ECBの利下げ、日銀の追加金融緩和観測など、世界的な景況感の回復基調と金融緩和観測によるリスクオンの流れは継続し、28日には5月につけた終値ベースでの年初来高値を更新しました。

結局、月末の日経平均は15,661円で終了し、前月末比で1,333円(9.3%)と大きく上昇しました。

今回のアンケート期間は、日経平均が7月、9月、10月の戻り高値を突破し、テクニカル分析のいわゆる「三角保ち合い」を上放れしたタイミングでもありました。そのため、「株高・円安」の見通しの強さが目立つ結果となりました。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之

1.日経平均の見通し

  • Q1:11月25日と1カ月後の日経平均の見通し DI=36.27
    (10月28日と1カ月後の日経平均の見通し DI=15.64)
  • Q2:11月25日と3カ月後の日経平均の見通し DI=30.18
    (10月28日と3カ月後の日経平均の見通し DI=27.17)

今回の日経平均見通しDIは、1カ月先のDIが36.27、3カ月先のDIが30.18となり、ともに前回の結果(それぞれ15.64、27.13)から大きく上昇しました。

DIの内訳となる回答比率(強気、中立、弱気)を見ると、1カ月先の強気派の増加が顕著で、今年4月以来、7ヶ月ぶりに中立派を上回りました。3カ月先についても、昨年12月以降、強気派がいちばん多い状況が続いていますが、強気派の割合は3カ月先よりも1カ月先の方が多くなっていることから、とりわけ短期の見通しが強まった格好です。

世界的な景況感の改善と金融緩和観測を土台とした、「リスクオン」ムードが最近の株高・円安の背景にあり、下値不安が後退したところに、金融緩和が乗っかった過剰流動性相場の典型と言えます。この流れに変化が出てくるかどうかが今後のポイントですが、まずは土台の部分、とりわけ米国の経済指標やクリスマス商戦の動向を見極めていく展開がしばらく続くと思われます。

また、11月末時点の日経225オプション取引(12月限月)のコールの建玉の状況を見ると、権利行使価格16,500円の建玉が一番多くなっています。「先物やデリバティブ主導の展開」という言葉を耳にすることが増えましたが、12月13日のメジャーSQに向けた思惑で一段高のシナリオも想定されます。ただ、短期の急上昇による反動には注意が必要です。

確かに、下値不安が後退していることで株価が上昇しやすくなってはいます。実際に、アンケート期間終了後の28日には、終値ベースでの年初来高値を5月以来に更新しましたが、当日の売買代金(東証1部)は2兆円割れとなっており、5月の年初来高値時(約3.9兆円)の水準を大きく下回っているため、欲を言えばもう少し売買に厚みが欲しいところです。

今年も残りわずかとなりましたが、昨年末からの各国の株価指数の推移を見てみると、連日で最高値を更新していた米NYDOWや独DAXなどは20%台の上昇に対して、日経平均の上昇率は50%前後となっています。他の株価指標に比べて好パフォーマンスとなっている日本株のさらなる上昇には、世界的なリスクオンの材料以外に、「日本を買う」独自の材料が必要になってくるのではと考えられます。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

2.為替相場の見通し

基準日 ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
11月25日 DI=48.19 DI=40.28 DI=25.65
10月28日 DI=19.03 DI=22.94 DI=22.94

12月2日、ドルは日銀の金融緩和拡大からの日本株高を背景に5月23日以来の103円台をつけ5月22日の年初来高値103.76円を狙う展開になっております。消費増税を前にした景気刺激目的の金融緩和がどこまで実行できるかが注目ポイントです。

11月末実施の為替DIは、米ドル48.19(前回は19.03)、ユーロ40.28(同22.94)、豪ドルは25.65(同13.53)という結果で、3通貨ともに円安を見る投資家が大きく増加しました。

米ドル

米ドルは、週足でみると10月最終週から陽線を描き11月14日に100円を上抜けると加速するように上昇し11月中は4週ともに陽線引けしています。その後も、特に下降基調を見ることもなく、12月3日に103.38まで上昇し、5月22日の年初来高値103.76を狙う展開になっています。12月3日東京時間後に外国市場で株安となると、ドルも102円割れまで下落しましたが、その後102.50円までもどしていることから、利食い=買い持ち減少となったようで、目下103.80円近辺のレジスタンスを上抜けするかどうかが注目です。

さらなる上昇トレンドを形成するためには、1. 消費増税を前にした日銀による景気刺激目的の金融緩和 2. 米雇用統計が注目ポイントです。特に12/6の米雇用統計は失業率7.2%、非農業部門雇用者数変化数が18.1万人との事前予想となっており予想を超える改善であれば104円乗せもありそうです。

DIは、48.19(前回比+29.16)。10月末実施のDIと比較すると円安をみる投資家が62.18%と前回よりも23.49%増加しています。 10月までの方向感ない動きからトレンドが形成されたとみる向きが増えました。

ユーロ

11月末のユーロDIは40.28と前回より17.35ポイント上昇しました。

ドル同様に円安方向を予測する投資家が15.1%増加しました。

11月のユーロはユーロドル高、ユーロ円高で135.50円近辺のレジスタンスを上抜けすると、12月2日には2008年10来の140円台をつけました。

ユーロはECBによる追加緩和、米国FRBの緩和縮小時期が焦点となっており、それぞれの金融政策の方向性には開きがありますので、今後注視していきたいところです。

現在のチャートでは次のレジスタンスが、2008年リーマンショック以前の170円目前の高値から2012年7月の94円の2月3日戻しとなる141円にしか見えておらず、このレベルを超えると心理的目標となる145円-150円を狙う展開も否めません。

豪ドル

豪ドルDIは25.65で前回比+12.12。円高方向の回答が14.12%で前回比3.1%減少し、円安方向の回答が39.77%で前回より9%増加しました。

ただし、一目均衡表でみると11月末から雲中に入り込んでおり、ドル円が円安で推移していますが、豪ドルドルの下落が豪ドル円の上昇を抑えているようです。

豪政府は豪ドル高を懸念していることや、米国同様に債務上限問題をかかえていることが要因となっているようです。
今後の豪ドルは以下の点に気をつけてみていきたいところです。

  1. 債務上限問題
  2. 経常赤字
  3. 中国経済

楽天証券 FX本部長 永倉 弘昭

3.今後注目する投資先

  今回 前回
アメリカ 54.92% 47.46% 7.46%
EU諸国 13.34% 14.38% △1.03%
ブラジル 20.08% 19.34% 0.73%
ロシア 6.87% 6.34% 0.52%
インド 19.82% 20.51% △0.69%
中国 8.29% 9.62% △1.33%
中東・北アフリカ 8.81% 7.93% 0.88%
東南アジア 38.21% 41.44% △3.23%
中南米 6.87% 7.61% △0.75%
東欧 3.89% 4.55% △0.66%

4.今後注目する投資商品

  今回 前回
国内株式 82.12% 78.01% 4.11%
外国株式 28.24% 23.68% 4.56%
投資信託 38.73% 40.49% △1.76%
ETF 17.23% 20.40% △3.17%
FX(外国為替証拠金取引) 13.73% 14.06% △0.33%
国内債券 8.42% 8.14% 0.28%
海外債券 10.10% 10.15% △0.04%
13.60% 17.55% △3.95%
原油 3.11% 2.85% 0.25%
商品 2.07% 1.80% 0.28%
REIT 16.97% 17.23% △0.26%
CFD 1.42% 1.27% 0.16%

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。