はじめに

今回のアンケート実施期間は9月30日~10月2日でした。

9月の国内株市場は全体的に上昇基調を辿りました。「国内消費税の引き上げ判断」と「米国量的金融緩和策の縮小」という二大テーマがいよいよ動き出すと注目される中、東京五輪の開催決定をはじめ、景況感が持ち直し傾向となった中国など、国内外の好材料が次々に出始めたことも相場を後押ししました。

また、物色の対象も五輪関連や輸出関連、内需関連といったテーマを切り口に、大型株から中小型株へと拡大しつつ、循環していく流れが続きましたが、金融緩和の縮小が予想外に見送りとなった米FOMC(17日~18日)以降は、上値が重い展開が目立ち始め、月内最終日には米財政問題が警戒され、大幅下落となって終了を迎えました。ただ、それでも9月の日経平均は前月末比で1,000円以上の上昇でした。

今回のアンケートは、その月末から月初にかけて行われました。米財政問題をめぐる議会の動向が警戒される中にも関わらず、前回調査から大きく改善する結果となりました。これまで同様、先行きの強気見通しは依然として維持されている格好です。

次回も是非、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之

1.日経平均の見通し

  • Q1:9月30日と1カ月後の日経平均の見通し DI=16.97
    (8月26日と1カ月後の日経平均の見通し DI=-2.14)
  • Q2:9月30日と3カ月後の日経平均の見通し DI=16.85
    (8月26日と3カ月後の日経平均の見通し DI=30.73)

今回の日経平均見通しDIは良好な結果となりました。1カ月先の見通しDIは16.97で、前回のマイナス2.14から大幅なプラスに転じたほか、3カ月先の見通しDI(30.73)についても、前回(16.85)から大きく上昇し、こちらも改善が目立ちました。

DIの内訳となる回答比率(強気、中立、弱気)を見ると、1カ月先と3カ月先の両方において、弱気派が減少する一方で強気派の増加が顕著となっており、それが今回の結果につながったと言えます。中立派については、あまり大きな変化は見られませんでした。

今回のアンケート実施期間(9月30日~10月2日)の日経平均の動きを追っていくと、前日比で30日が304円の下落、1日が28円の上昇、2日が314円の下落でした。トータルで約590円の下げとなっており、相場の地合いは必ずしも良いとは言えませんでした。それを踏まえると、今回のDIの結果は数字以上に投資心理が改善していたという印象です。

米国の財政問題(新財政年度予算と債務上限の引き上げ)をめぐる米議会のゴタゴタが警戒感を強めながらも、国内の消費税引き上げ判断や、増税による景気下押し圧力を緩和する政策パッケージの発表などの節目も越えたことで、米議会のチキンレースを乗り切った後は、相場環境が改善していくだろうとの見方がDIの結果に反映されたと考えられます。

もっとも、その後のマーケットの展開は、期限を過ぎても米議会で暫定予算が成立できず、一部政府機関の閉鎖が確定し、注目だった米雇用統計の公表が延期されるなどの影響も出始めるなど、不透明感を強めたこともあり、現在の相場見通しはDIの結果よりも弱くなっていると思われます。債務上限問題も、資金が底をつくとされる10月17日が迫る中、米財政問題が一区切りするまでは米国動向に左右される展開が続きそうです。

その一方で、企業業績の上振れや、アベノミクスへの期待など、国内要因は相場を支援する材料が比較的揃っていると言えます。また、10月1日の消費税引き上げ決定に併せ、政策パッケージの発表と安倍首相の会見が開かれましたが、期待の法人税の実効税率引き下げについて、具体的な進展がなかったことを嫌気する見方と、財政再建への取り組みにやや重きを置いた首相会見の内容を好感する見方がありますが、全体としては前向きに捉えて良いと思われます。

さらに、10月15日には臨時国会が召集され、「アベノミクス相場第二幕」を開けられるかが今後の注目ポイントですが、元々、「デフレ脱却・経済成長」と「財政再建」の二兎追いの政策は、矛盾とまでは言わなくてもバランスをとっていくのが難しい課題です。そのため、第二幕の相場は5月半ばまでに演じた、期待がどんどん先行する第一幕とは異なり、具体的な取り組みと成果を評価しながら上昇していく、比較的緩やかなものになる可能性があります。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

2.為替相場の見通し

基準日 ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
9月30日 DI=14.68 DI=14.53 DI=14.68
8月26日 DI=21.75 DI=15.77 DI=9.95

米ドルは、米国の資産買い入れプログラムの減の見送りとなる中、米予算案不合意で米政府機関の一部閉鎖問題もあり、値を下げていました。一目均衡表でみると9月は総じて雲上でしたが10月には雲を下抜けました。10月7日 20:00現在97円を割り込んでいます。
9月末実施の為替DIは、米ドル14.68(前回は21.75)、ユーロは14.53(同15.77)、豪ドルは14.68(同9.95)という結果で、米ドルは円高を見る向きが25.08%と前月から4.25%増加しました。

米ドル

米ドルは、9月初旬1か月ぶりに100円台を回復したものの、冒頭で述べた問題から下げ始め、9月中は98円レベルをサポートしていたものの、10月になると一目均衡表の雲を下抜けると下げ足を速め97円を割り込む展開となっています。
DIは、14.68(前回比▲7.07)。円安をみる投資家が2.81%減少し、円高が4.25%増加しました。方向感が定まっていない中、100円台が安定的でないため(9月は5日間)円高方向を予想する投資家が増加したのではないでしょうか。

10月07日現在、いまだ継続する米政府機関の一部閉鎖から4日の米雇用統計の発表は延期され、米国の債務不履行や国債の格下げまで噂されており、円高要因が積みあがっています。また、テクニカル(日足チャート)でみても、8月から形成したヘッド&ショルダー(三尊)のサポート(8月28日と9月18日の安値を結んだライン)を下抜けており、さらに8月にサポートした96円も抜けるようであれば、95円の可能性も出てきます。

ドル上昇のカギとなるのは、政府機関の業務再開と、延期され発表される雇用系の数字が良いものになるかどうかになりそうです。
また10月9日にFOMC 議事要旨が発表されます。ここに資産tapering 見送りの背景に、どのような具体的議論があったかが明らかになります。今後、どのような条件がそろった場合にtapering が開始されるかを探る上で有力な手掛かりとなりそうです。

ユーロ

9月ユーロDIは14.53と前回より約1ポイント下落しましたが、内容はあまり変わりありませんでした。
9月は、ユーロ高ドル安に推移したこともあり、ユーロ(円)も一時135円近くまで上昇しましたが、ドルで円高がすすむと現在は131円台で推移しています。
スペインが公的債務の圧縮にさらなる取り組みが必要であると取りざたされる中、ポルトガルについては支援機関の審査が通過したこともあり、国債利回りが低水準で推移しており、沈静化が一歩進んでいるようです。

豪ドル

豪ドルDIは前回の9.95から14.68と2か月連続で上昇しました。円高方向の回答が18.81%で前回比2.17%減少し、円安方向の回答が33.49%で前回より2.56%増加しました。
また、一目均衡表でみると、4か月ぶりに雲の上で推移しており、9月19日には94円48銭まで上昇しましたが、現在はユーロ同様ドル円の円高に91円台で推移しています。

8月の80円台後半からの上昇の背景は

  • 米国の予算案をめぐる米政府のこう着状態からのドル安豪ドル高
  • 年内の利下げ見通しが遠のいたこと
  • 資源価格(鉄鉱石)の高騰にあります。

ただし気をつけたいのは、1のドル安。米政府の機能停止が継続するようであれば、リスク回避動きが目立つようになり、資産が円に向かう可能性もあります。94円を終値ベースで上抜くことができるのであれば、さらなる上昇もありそうですが、ドルの対円レートを気にしながらの神経質な展開になりそうです。

楽天証券 FX本部長 永倉 弘昭

3.今後注目する投資先

  今回 前回
アメリカ 45.26% 47.01% △1.75%
EU諸国 11.16% 10.11% 1.05%
ブラジル 21.41% 20.67% 0.73%
ロシア 9.17% 9.49% △0.32%
インド 17.74% 20.37% △2.63%
中国 8.26% 7.96% 0.29%
中東・北アフリカ 8.26% 9.19% △0.93%
東南アジア 39.30% 37.67% 1.62%
中南米 8.41% 8.73% △0.32%
東欧 3.67% 3.83% △0.16%

4.今後注目する投資商品

  今回 前回
国内株式 77.06% 78.56% △1.50%
外国株式 23.24% 20.67% 2.57%
投資信託 37.61% 34.92% 2.70%
ETF 16.67% 15.47% 1.20%
FX(外国為替証拠金取引) 13.61% 15.93% △2.32%
国内債券 6.57% 7.66% △1.08%
海外債券 11.93% 9.04% 2.89%
15.60% 18.07% △2.47%
原油 2.91% 5.05% △2.15%
商品 1.99% 2.91% △0.92%
REIT 16.67% 13.78% 2.88%
CFD 1.38% 0.46% 0.92%>

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。