はじめに

今回のアンケート実施期間は8月26日~8月28日でした。

8月の国内株市場ですが、月末の日経平均は13,388円となり、前月末比279円安(2.04%安)で終了しました。月足ベースでは4カ月連続の下落です。

米国量的金融緩和の縮小をめぐって、新興国からの資金流出の動きが相場の重石となったほか、夏季休暇や9月のイベントを前にした手控え地合いの中で、先物主導に翻弄される展開など、売り込まれたというよりは、買いがなかなか入らなかったことで下げが目立った格好です。

特に、中旬以降は東証1部の売買代金が2兆円を下回るなどの薄商いが続き、ジリジリと値を下げて行きましたが、日経平均は月初の2日間で800円近くの急騰を見せており、月間の高値(8月2日の14,466円)からは1,000円以上下落しているため、「気が付いてみれば結構下げていた」という印象です。

今回のアンケートは、シリア情勢への不安が高まる中で実施されたこともあり、前回調査よりさらに悪化する結果となりました。ジワジワと弱気の見方が増えてきてはいますが、先行きの強気見通しは依然として維持されています。

次回も是非、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之

1.日経平均の見通し「多くのイベントを控え、慎重姿勢が強まる」

  • Q1:8月26日と1カ月後の日経平均の見通し DI=-2.14
    (7月29日と1カ月後の日経平均の見通し DI=0.87)
  • Q2:8月26日と3カ月後の日経平均の見通し DI=16.85
    (7月29日と3カ月後の日経平均の見通し DI=19.55)

日経平均の1カ月先の見通しDIは前回(0.87)から悪化し、マイナス2.14となりました。DIがマイナスに沈むのは昨年10月調査以来です。一方、3カ月先の見通しDIは16.85で、こちらも前回(19.55)から低下したものの、プラスを維持しています。

アンケート期間最終日(8月28日)の日経平均が、シリア情勢に対する警戒で13,000円台前半まで値を下げる動きを見せるなど、市場のムードが悪化していたこと、また、イベントが目白押しとなる9月直前で様子見姿勢が強かったことも、今回のDI結果に反映されたと考えられます。

DIの内訳となる回答比率(強気、中立、弱気)を見てみると、1カ月先については中立の割合が過半数(52.22%)となっており、残りを強気(22.82%)と弱気(24.96%)の割合が綱引きをしている状況です。また、3カ月先については、強気の割合が最も多い(39.05%)のですが、こちら中立(38.74%)とほぼ拮抗しています。弱気の割合は22.21%で、1カ月先の弱気の割合と比べてもさほど差はなく、相場の先行きに対して雲行きが怪しくなったという印象はありません。確かに今回の結果は、1カ月先のDIが久々にマイナスに転じたというインパクトはありますが、弱気モードに傾いたとまでは言えず、慎重姿勢がより強まっている状況と思われます。

ご存知のように、9月に入ると様々なイベントがこれでもかというぐらい控えています。2020年のオリンピック開催地の決定など個別のものをはじめ、「米国の量的金融緩和縮小」と「国内の消費税引き上げ」の2大テーマも本格的に動き出し、米雇用統計やFOMC、国内のGDP改訂値などが注目されます。また、上半期の終了も迫ってくることで、企業業績の上方修正期待も高まりそうです。

8月は手掛かり難で方向感に乏しく、「イベントの多い9月になれば、相場の方向感が出るだろう」という様子見の展開が続きましたが、いざ9月になってみると、今度は見極めるべき材料が多くて、逆に動きづらいというシナリオも想定されますし、9月の取引は2日から始まりますが、「2日新甫の月の相場は荒れやすい」というジンクスもあるため、9月相場はより柔軟な姿勢が求められそうです。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

2.為替相場の見通し

基準日 ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
8月26日 DI=21.75 DI=15.77 DI=9.95
7月29日 DI=18.86 DI=10.38 DI=7.09

米ドルは、8月2日(金)の米雇用統計が芳しくない結果となったこともあり、米国の金融緩和先送り観測から下げ足を速め、8月8日には95円割れまで下落しました。その後、一目均衡表の雲の下を推移していましたが、地政学的リスクが緩和されると、雲を突破し9月4日現在、99円台後半でクオートされています。
8月末実施の為替DIは、米ドル21.75(前回は18.06)、ユーロは15.77(同10.38)、豪ドルは9.95(同7.09)という結果で、ドル円に限れば3月来の円高を見る向きの減少となりました。

米ドル

米ドルは8月2日の100円乗せから8月8日の95.80円まで5日間で4円以上下落しましたが、その後徐々に上昇し一目均衡表の雲に頭を抑えられていました。8月末実施のDIをみると、昨年12月をピークにそれまで7カ月連続で減少していましたが(65.95-62.11-54.12-49.90-41.32-37.85-32.06-18.06-21.75)、8カ月振りの上昇となりました。ただし、円安方向への回答が(7月42.91%、8月42.57%)増加していないので、当面は1ドル=100円手前での推移をみている投資家が多いようです。
9月4日 17時現在、ドルは99.80円の高値をつけ100円を狙う展開となっていますが、心理的な大きな節目でもあるため上値抵抗は強力です。100円超えは、米経済指標の上振れと、シリア問題の鎮静化がキーとなるのではないでしょうか。

9月5日以降の米ドルの注目の日程:

  • 9月5日  米ISM非製造業景況指数
  • 9月6日  米雇用統計
  • 9月17~18日 米FOMC 18日は政策金利発表及びFRB議長記者会見

QE3終了の動向については要注意
バーナンキ議長の後任人事にも注目(サマーズ氏ならドル高進行の可能性も)
日本の消費増税の行方(早期決定であれば円安方向へ)

ユーロ

8月ユーロDIは15.77と上昇しました。円高方向でみていた投資家が円安方向に若干ではありますがシフトしたようです。
これは、1. ドイツ経済指標の強さ  2. 英国でシリアへの軍事介入否決、フランスは賛成も単独行動せず他国と連携  3. スペイン、ギリシャ、ポルトガルの債務問題が大きく問題視されていないことにありそうです。ドルの上昇からユーの対ドルレートは下げていますが、対円レートは130円を支持線に推移しています。

豪ドル

豪ドルDIは前回の7.09から9.95と7カ月ぶりに上昇しました。円高方向の回答が1%減少し、円安方向の回答が2%増加しました。テクニカルでは依然大きなダウントレンドではありますが、8月7日と8月28日に86.40円台の底値をつけダブルボトムを形成しています。その後、90円を回復し一目均衡表の上雲に突入していることもあり、今後は93-94円の抵抗線を抜けることができるかが、上昇に向けた鍵となりそうです。

しかしながら、ファンダメンタルを考慮すると(1)豪中銀(RBA)による利下げ(2)資源価格が緩やかな上昇に留まること(3)中国経済の停滞より、豪ドルの上昇は限定的と見たほうがよさそうです。

9月3日の政策金利発表でRBAは2.5%に据え置きましたが、金融緩和政策について終了を示したわけではなく、声明文のなかで豪ドルの水準が高いとしました。

9月17日公表の豪中銀理事会議事録に注目したいところです。

楽天証券 FX本部長 永倉 弘昭

3.今後注目する投資先

  今回 前回
アメリカ 47.01% 50.52% △3.51%
EU諸国 10.11% 7.79% 2.32%
ブラジル 20.67% 15.74% 4.93%
ロシア 9.49% 6.57% 2.92%
インド 20.37% 23.36% △2.99%
中国 7.96% 7.79% 0.18%
中東・北アフリカ 9.19% 10.38% △1.19%
東南アジア 37.67% 43.08% △5.41%
中南米 8.73% 8.82% △0.09%
東欧 3.83% 5.19% △1.36%

4.今後注目する投資商品

  今回 前回
国内株式 78.56% 76.12% 2.44%
外国株式 20.67% 25.26% △4.59%
投資信託 34.92% 35.64% △0.72%
ETF 15.47% 16.78% △1.31%
FX(外国為替証拠金取引) 15.93% 13.49% 2.43%
国内債券 7.66% 8.13% △0.47%
海外債券 9.04% 9.52% △0.48%
18.07% 17.30% 0.77%
原油 5.05% 4.50% 0.56%
商品 2.91% 2.42% 0.49%
REIT 13.78% 13.67% 0.11%
CFD 0.46% 1.56% △1.10%

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。