はじめに

今回のアンケート実施期間は6月24日~6月26日でした。

6月の国内株市場を振り返ると、前月下旬にバーナンキFRB議長が米議会証言において、量的金融緩和策の縮小に言及したことのインパクトは大きく、月の前半は下値を探る動きが中心でした。FOMC(18日~19日)を控え、緩和策縮小の有無をはじめ、新興国市場からの投資資金の引き上げ警戒などの思惑が交錯し、さらに、メジャーSQ(14日)到来による需給要因が加わったことで荒い値動きとなり、日経平均は一時節目の12,500円を下回る場面も見られました。

その後は下値を切り上げながら徐々に落ち着きを取り戻す展開となりました。FOMCが通過した後も量的緩和の早期縮小観測は燻り続けましたが、その一方で値頃感による買いも入った格好です。ただし、中国に対する不安(景気減速警戒やIPO再開観測による需給懸念、金融システム懸念など)が意識され、上値を抑えました。

結局、6月末の日経平均は前月末比で97円(0.71%)安の1万3,677円となり、月間ベースでも2カ月連続の下落でした。とはいえ、最終日に今年3番目の上げ幅(463円)となるなど、株価調整の一服を感じさせる面も垣間見せています。

こうした状況を受け、今回のアンケートは前回調査からやや悪化する結果となりましたが、投資家の心理が弱気に転じたわけではなく、特に足元で慎重姿勢が強まった印象です。先行きについても依然として強気が多い結果となりました。

次回も是非、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。

楽天証券 経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之

1.日経平均の見通し

  • Q1:6月24日と1カ月後の日経平均の見通し DI=6.58
    (5月27日と1カ月後の日経平均の見通し DI=17.71)
  • Q2:6月24日と3カ月後の日経平均の見通し DI=23.99
    (4月30日と3カ月後の日経平均の見通し DI=34.03)

日経平均の1カ月先の見通しDIおよび3カ月先の見通しDIは、それぞれプラスの6.58、23.99となり、前回のDI(それぞれ17.71、34.03)を下回ったほか、2回連続で低下しました。

今回のアンケート期間(6月24日~26日)の日経平均ですが、買い先行後に軟調な推移が続きました。参院選の前哨戦となる東京都議会選が前日(23日)に行われ、与党が勝利したことで、参院選への期待(国会のねじれ解消による安定政権の誕生)が高まったことが買い材料になりましたが、米量的金融緩和策の早期縮小懸念の余波でアジア株市場が下落したことや、中国リスク(景気減速やシャドーバンキング、地方政府の債務問題)などの外部要因によって売りに押される展開となりました。

内訳となる回答比率(強気、中立、弱気)を見てみると、1カ月先は中立の割合がいちばん多く、約半数(49.26%)を占めています。確かに強気の割合が減少(28.66%)し、弱気の割合(22.08%)が増えてはいますが、まだ強気が弱気を上回っています。さらに3カ月先については、強気の割合が多数派(44.16%)で、中立(35.67%)や弱気(20.17%)を上回っています。前回よりは勢いが弱まったとはいえ、依然として相場の先高感は続いていると見る投資家が多いことが窺えます。

米量的金融緩和の早期縮小観測をきっかけに、これまでの金融相場が転換期を迎える中、今後も米中を中心とする国外情勢が相場の地合いやムードを形成しそうですが、次第に国内への注目も高まっていきそうです。焦点になるのは、「企業業績」と「アベノミクス」への再評価です。今回のDIの結果にあるような、株式市場の中長期の先高感は、これらへの再評価期待が背景にあると思われます。特に7月は決算発表と参院選の二大イベントが控えています。金融相場から業績相場へと移行できるかがカギとなりますが、7月1日に発表された6月日銀短観の結果は概ね良好な結果となり、企業の景況感は足元で堅調と言えます。

一方で、国外についてはにわかに中国に対する警戒が高まっています。そのきっかけとなったのは、上海銀行間取引の短期金利(Shibor)が急騰したことですが、そもそも中国の短期金利の上昇は6月のあたまから始まっており、景気減速に対する懸念も今更の感があります。中国当局は景気対策や金融オペなどの政策を打ち出す機会があったにも関わらず、最近まで敢えて何もしませんでした。要はわざと今の状況を作ったわけです。

恐らく、多少の景気減速や混乱を覚悟で、中長期的な経済構造改革を重視する姿勢をとり、シャドーバンキングの拡大阻止や一定の不良債権の処理を進めようとしているフシがあります。そのため、景気や株価を浮揚させることを目的に政策を出してくるのではなく、あくまでも市場の混乱

楽天証券 経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
6月24日 DI=32.06 DI=18.90 DI=13.16
5月27日 DI=37.85 DI=28.47 DI=20.49

米ドルは週足ローソク足チャートでみると、昨年9月末の安値77.45円から本年5月103.70円レベルまでの上昇分の0.382戻し(フィボナッチ)の93.70円水準できれいに折り返し、7月2日にはおよそ1か月ぶりの100円台に値を戻しています。6月末実施の為替DIは、米ドル32.06(前回は37.85)、ユーロは18.90(同28.47)、豪ドルは13.16(同20.49)という結果で、さらなる円高を見る向きが多くなってきているようです。

米ドル

米ドルは6月13日に93.80円まで下落しましたが、7月2日は100円台に回復しています。6月24日実施のDIをみると、昨年12月をピークに6カ月連続で減少(65.95-62.11-54.12-49.90-41.32-37.85-32.06)、円高方向の回答が20.38%と昨月に引き続き本年では一番高い数字の更新となり、円安回答は52.44%(前月比-3.81%)となりました。DI実施時点では、米ドルの日足チャートの一目均衡表をみますと、まだ雲の下にいることから、このような結果になったように思われます。

市場では、中国の金融引き締め、米国QE3の終了観測にともなうドルへの資金移動からのドル高観測の見方が強くなっているようです。ただし、先の一目均衡表では、7月4日現在、雲の中で推移していること、101.30近辺が雲の上限であることから、この水準を抜いていくことがポイントではないでしょうか。

米ドルの注目の日程

  • 7月5日  米雇用統計
  • 7月11日 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
  • 7月31日 米連邦公開市場委員会(FOMC)政策金利発表

ユーロ、豪ドル

6月ユーロDIは円高方向への回答が前月比+4%となった結果、18.90と5月から10ポイント近く下落しています。一目均衡表でみると、ユーロも米ドル同様雲の中にどっぷりつかっていますので、当面は雲上限131円、下限126円が上下トレンドへの突破口になりそうです。
ユーロはギリシャ、スペイン、ポルトガルとリスクが台頭しては消えているので、一喜一憂せず為替の動向を見極める必要がありそうです。

直近のユーロ材料

ポルトガル
重要閣僚辞任のポルトガルの政治混乱から国債利回りが急上昇
早期総選挙の可能性
ギリシャ
緊急支援継続に財政改革の進捗提示を要請(ユーロ圏当局者)

豪ドルDIは前回の20.49から13.16と2カ月連続で大きく下落しています。ただし円高方向が増加したのではなく、円安方向が減少し“変わらず”とみる向きが増加しました。主な要因は、中国の金融引き締め観測からの景気停滞懸念によるものです。一目均衡表でみると、豪ドルは雲の下限を抜け深いところで推移していること、基準線も下方向に向いていることもあり早期な上昇は難しそうです。今月も豪ドルは、中国の経済指標に注意しながら、見ていきたいところです。

楽天証券 FX本部長 永倉 弘昭

3.今後注目する投資先

  今回 前回
アメリカ 43.10% 45.14% △ 2.04%
EU諸国 6.79% 5.21% 1.59%
ブラジル 14.23% 22.22% △ 8.00%
ロシア 6.79% 8.33% △ 1.54%
インド 22.72% 26.04% △ 3.32%
中国 7.43% 10.07% △ 2.64%
中東・北アフリカ 11.46% 13.89% △ 2.42%
東南アジア 40.55% 43.40% △ 2.85%
中南米 5.10% 10.76% △ 5.67%
東欧 3.61% 2.43% 1.18%

4.今後注目する投資商品

  今回 前回
国内株式 77.28% 79.51% △ 2.23%
外国株式 24.84% 24.31% 0.54%
投資信託 27.39% 31.94% △ 4.56%
ETF 14.23% 15.28% △ 1.05%
FX(外国為替証拠金取引) 14.86% 15.28% △ 0.42%
国内債券 6.58% 5.90% 0.68%
海外債券 7.64% 7.99% △ 0.34%
15.29% 14.24% 1.05%
原油 4.03% 3.47% 0.56%
商品 2.97% 2.78% 0.19%
REIT 10.83% 12.15% △ 1.32%
CFD 1.49% 0.69% 0.79%

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。