はじめに

今回のアンケート実施期間は2月25日~27日でした。

2月の株式市場も堅調な地合いが続きました。月中はG20を前にアベノミクスに対する為替の円安誘導批判が不安視されたことや、米国金融緩和策の出口戦略の議論、イタリア総選挙の動向などがきっかけとなり、利益確定売りに押される場面も目立ちましたが、日銀の新体制移行による金融緩和観測や、企業業績の上振れ期待、TPP交渉参加をはじめとする政策への思惑を先取りする動きなどが相場を支えました。

結局、2月末の日経平均は前月末と比べて約420円高で終了し、月間ベースでは7カ月連続の上昇となりました。積極的に買い上がる材料の不足感が意識され始めているものの、売り込む状況でもなかったため、底堅い相場環境でした。

為替市場については、ドル円は概ね92円~94円台での推移が続きました。不安視されていたG20は無難に通過し、海外からはデフレ脱却のためのアベノミクスは一応支持された格好ですが、声明文からは、「急ピッチな通貨安はちょっとね…」という本音も透けて見え、政策アピールによる積極的な円安志向は採りにくい状況となっています。また、海外要因による円買いの場面も見られました。

そのため、今回のアンケートは前回調査に比べて、株高・円安に対して強気の見通しが一服する結果になりましたが、全体としては堅調な相場基調は続いていると言えます。

次回も是非、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。

楽天証券 経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之

1.日経平均の見通し

  • Q1:2月25日と1カ月後の日経平均の見通し DI=49.18
    (1月28日と1カ月後の日経平均の見通し DI= 55.64)
  • Q2:2月25日と3カ月後の日経平均の見通し DI= 38.46
    (1月28日と3カ月後の日経平均の見通し DI= 47.87)

日経平均の1カ月先の見通しDIと3カ月先の見通しDIは、それぞれプラスとなりましたが、前回のDI(それぞれ55.64、47.87)に比べてやや弱い結果となりました。もっとも、前回は調査開始以来の強気判断だったため、決して見通しが悪化したわけではありません。実際に、強気・中立・弱気の回答比率を見ると、強気の割合は3カ月連続で50%を超えています。

今回のアンケート期間の2013年2月25日(月)から27日(水)は、国内株式市場が慌しく動きました。開始日の25日(月)は、日米首脳会談を受けてTPP交渉参加への思惑や日銀人事案がほぼ固まったことなどの好材料が重なり、日経平均の終値は1万1,662円と、2008年9月29日以来、約4年5カ月ぶりの水準まで上昇しましたが、その後の26日(火)~27日(水)は、イタリア総選挙の結果や自動的な歳出削減が強制発動される米国の動向などが警戒され、一時1万1,250円台まで下落する場面がありました。そのような状況でも、見通しDIがしっかりした結果だったわけですから、株式市場の先高感は続いていると言えます。

相場の地合いが良い時は次々と買い上がる材料を先取りしていきます。例えば、日銀の新体制移行によるさらなる金融緩和観測や、企業業績の上振れ期待、アベノミクス「3本目の矢」である成長戦略への期待などです。とりわけ、金融緩和については、2月4日の夕方に、白川日銀総裁が任期満了を待たずに3月19日に辞任する意向を表明したときから、株式市場で織り込む動きは始まっていました。

現在は買い上がる材料をある程度先取りしてしまったため、さらに次の材料待ちの状況です。今後の大きなポイントとしては、①「日銀の新体制がどこまで踏み込んだ緩和を行うか」、②「実際の企業業績の上方修正はどうか」、③「6月中を目処に策定される成長戦略が中長期的な日本の成長期待につなげられる内容となるか」が挙げられます。また、④「海外情勢の改善によるリスクテイクの動き」も注目されます。具体的な進展が出てくるまでは、要人発言や循環物色の動き、海外情勢の動向などに反応する相場展開が中心となりそうです。

相場の堅調地合いは継続しそうだが、少なくとも何でもかんでも好意的に解釈して一本調子で急上昇してきたこれまでの相場はひとまず終了し、冷静さも出始めてきた、今回のDIの結果はそんな印象となっています。

楽天証券 経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

2.為替相場の見通し

  ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
2月25日 DI=54.12 DI=31.59 DI=38.19
1月28日 DI=62.11 DI=54.53 DI=53.05

米ドルは、月足ローソク足チャートでみると、昨年10月以降2月末まで5か月連続で陽線引けしています。為替のDIは、継続する上昇トレンドからの調整見通しが多くなってきているようです。

米ドル

米ドルの円安回答率は、4カ月連続で60%を超えているものの、DIのポイントで見ると12月の65.95から2月は54.12と徐々に減少しています。つまり、円高方向を見ている向きが多くなっているということです。

ただし、今回のDIの実施期間が2月25日(月)~2月27日(水)ということもあり、個人投資家は25日の窓空き高値寄付き(94.40)、下値を探って(90.90)戻して(91.95)引けた大相場を見た結果からともいえそうです。

25日朝に、窓を開けて寄り付いたのは、次期日銀総裁候補としてアジア開発銀行の黒田総裁の名前が挙がったからで、市場はこれを好感してドル買い円売りとなりましたが、欧州時間にイタリアの総選挙で「ベルルスコーニ氏」リードの出口調査結果により一転リスク・オフとなりました。ただし、週足ローソク足でみると、長い下ヒゲを形成していますので、下値固めをした格好となっています。そろそろ、プロフィットテイクの「売り注文」からの下押しを見る向きもDIからは読み取れますが、現状はその「売り注文」を超える「買い注文」となり、下げ止まっているようです。

ユーロ、豪ドル

さて、ユーロと豪ドルのDIは30台となっています。2月末の下落からの戻りが鈍く月足2月のローソク足がいずれも陰線となっていますので、当然の結果でしょうか。ユーロ、豪ドルともに2月の円安回答率が50%は越えているとはいえ、1月と比較して10%以上下げています。つまり円安派が少なくなっているということです。

今後の注目ポイントは、ユーロについてはイタリアの情勢。ユーロ圏の景気低迷を踏まえると、金融緩和継続の観測となるだろうし、リスク・オフからのユーロ下落には注意したい。ただし、限定的なものとなりそうです。

豪ドルは、3月の利下げもなく、3月初めに発表されたGDPもよかったことで、今後の利下観測が後退している中、足許は上昇となりそうですが、3月14日の豪雇用統計および中国の景気をみながらの展開になるのではないでしょうか。

楽天証券 FX本部長 永倉 弘昭

3.今後注目する投資先

  今回 前回
アメリカ 43.68% 43.25% 0.43%
EU諸国 7.14% 8.13% △ 0.99%
ブラジル 28.57% 29.02% △ 0.45%
ロシア 13.46% 8.50% 4.96%
インド 24.18% 30.13% △ 5.95%
中国 7.69% 9.06% △ 1.36%
中東・北アフリカ 5.77% 6.28% △ 0.52%
東南アジア 49.18% 48.80% 0.38%
中南米 10.16% 9.98% 0.18%
東欧 3.85% 4.07% △ 0.22%

4.今後注目する投資商品

  今回 前回
国内株式 77.20% 79.48% △ 2.28%
外国株式 27.20% 25.88% 1.32%
投資信託 31.59% 32.35% △ 0.75%
ETF 14.01% 14.97% △ 0.96%
FX(外国為替証拠金取引) 18.96% 18.11% 0.84%
国内債券 6.59% 4.99% 1.60%
海外債券 9.34% 9.98% △ 0.64%
16.21% 14.23% 1.98%
原油 4.40% 4.62% △ 0.23%
商品 4.12% 4.62% △ 0.50%
REIT 17.86% 14.97% 2.88%
CFD 1.65% 1.66% △ 0.02%

「DI(Diffusion Index)」とは

景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替   DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。