日経平均の下落の背景

8月の相場は高いという予測をしていましたが、1日(木)の△337の14,005円、2日(金)の△460の14,466円と2日間で約800円上昇したものの、先週はこの上昇分を打ち消す下げとなって柴田罫線では売転換が出現し、三角保ち合いを下に切った形で終わりました。8月SQ値13,640円を切って引けていますので、早い段階でこの13,640円を上回らなければ調整が長引くことになります。

背景には、アメリカの金融緩和の方向性を巡り、円高進行がきっかけとなりました。6日(火)にシカゴ連銀総裁が、9月に金融緩和の早期縮小に言及したことを機に円高が進行しました。しかし、これまでは金融緩和の早期縮小の話しが出るたびにアメリカの長期金利が上昇し、日米金利差からドル買い・円売りとなっていましたが、今回は逆にドル売り・円買いとなって、7日(水)の日経平均は▼576の13,824円と急落しました。そして翌日8日(木)も▼219の13,605円となって売転換が出現したわけです。

よく考えてみると、すでに繰り返されてきた材料であり、2日間で800円も下げる悪材料とはいえません。ではなぜ下げたかというと、日経平均の現物株の薄商いが続いているため、ヘッジファンドなど利ざやを狙う側からすると、ドル・円と日経平均の連動性を演出して先物主導による売買の仕掛けで大きく上下動させているといえます。

SQを除くと、東証1部の1日売買代金は6月:2.56兆円、7月:2.26兆円、8月:2.06兆円と減少してきており、こうしたエネルギー不足の状態では、為替と株価指数先物を組み合わせたヘッジファンドなどの短期筋の取引に振り回されているということです。特に先週は、SQに絡んだ仕掛けが入り、大きく上下動して最終的には1週間で800円近い下落で引けました。本来は市場参加者が少ない閑散相場では「閑散に売りなし」といって大きな動きはあまりないのですが、現在の薄商いの中ではこう着相場とはならず、ヘッジファンドなどが先物主導で仕掛け的な売買を行って相場を動かしています。それを考えると、今週は日本がお盆休みに入って参加者がますます少なくなれば、為替に連動して日経平均は大きく上下に振れることになります。先週の日銀金融政策決定会合では追加策は何も出ず、又アメリカでは2日(金)の雇用統計が市場予想を下回ったことでドル売りとなり、目前だった1ドル=100円突破は遠のきました。

円安シナリオがストップした以上、相場を大きく動かして利ざやをとるには、円高の方向を攻めるしかなく、本来円安要因の金融緩和策の早期縮小観測は「これによってアメリカの景気回復は遅れる不安材料」として取り上げられ、リスク回避の円高要因になっているといえます。

今週は、日本もお盆休みに入りますます参加者が少なくなり、先物に振り回される展開となりそうです。本日の12日(月)も前場▼185の13,430円まで下げたあと、△43の13,658円まで反発したかと思うと、後場は再び13,500円を割る場面もありましたが、▼95の13,519円で引けました。相変わらず先物主導の売買が続いています。

下値ポイントをどうみればいいのか

下値ポイントは、7月29日(月)の時点で13,300円水準としていましたが、いったん2日(金)の14,466円まで戻した後の下落ですので13,000~13,300円のゾーンで考えていた方がよいでしょう。ただし、ドル/円のチャートをみると94円水準が三角保ち合いの下値のフシとなっていますので、日経平均の下値ゾーンと一致してくる可能性があります。

先物主導となっていますので、このまま13,000~13,300円の下値ゾーンまで下げるのか、それとも現水準から反発していくのかわかりませんが、当面は上値も限定的で、まずは14,000円のフシ、次に14,300円の上値ラインとなります。13,000~14,300円の大きなボックスの中で、13,300~14,000円のボックス相場となるかもしれません。このあとボックス相場を上に放れるのか、下に放れるのかは消費税問題の行方とNYダウを中心とする先進国の株式市場の動きが注目となります。NYダウのチャート分析で説明していますが、日足でダブル天井(ドイツ、フランスも同じようなダブル天井)となっており、直近の高値を抜くことができなければ大きな調整となっていく可能性があります。

以上を考えると、リスクをとれない人はさらに大きく下げるのを待ち、リスクをとれる人は損切りを設定しての投資で、当面は14,000円水準での短期の利益確定となります。

(指標)日経平均

先週の予測では、5月23日の15,942円を高値、6月13日の12,415円を安値とする三角保ち合いの形が出来上がり、8月1日に14,005円で買転換が出現したことで14,000~14,500円のもみあい(煮詰まり)のあと、悪材料が出なければ上放れとなる可能性としました。

しかし、アメリカで2人の地区連銀総裁が量的緩和策の縮小は9月の可能性を言及したことで、金融緩和の方向性が不透明となって円高が進行し、日経平均は前週比▼850の13,615円となりました。ただし、大きく下げるほどの悪材料ではありませんでしたが、7日(水)は週末9日(金)のSQに絡んで薄商いの中を先物主導で▼576の13,824円の急落となりました。そして8日(木)も▼219の13,605円となって柴田罫線では売転換出現となり、想定とは逆に三角保ち合いの下放れの形となりました。

今週は、日本もお盆休みに入りますます市場参加者が減少し材料難で方向性を欠く中、先物主導での展開となりそうです。材料が少ないために円の動きを材料として日経平均が動いており、為替に注目となります。目先の下値は13,300円、その下は13,000円水準(柴田罫線では13,245円)となります。上値を試すためには、まず早い段階で8月SQ値13,640円をクリアーできれば14,000円となります。

週明け12日(月)は、薄商いのなか寄前のGDPが予想を下回ったことで▼185の13,430円まで下げるものの、前引け後に急速に先物主導で買い戻しが入り13,658円まで上昇しました。しかし、後場には再び売られて▼95の13,519円で引けました。

日経平均

(指標)NYダウ

先週の予測では、注目すべきイベントを終えて材料に乏しいものの楽観的見方が多く、新しい悪材料が出ない限り高値圏でのもみあいか、じり高を想定しました。

しかし、地区連銀総裁が量的緩和策の縮小は9月の可能性を言及したことで金融緩和の方向性が不透明となり、株価は軟調となって7週間ぶりの週足で陰線となり、週末9日(金)は▼72の15,425ドルで引けました。

FRBの量的緩和縮小が9月の可能性が高まれば、景気回復ベースの鈍化への警戒感から軟調な動きが続くことが想定されます。量的緩和縮小の早期実施がくすぶる中、今週は8月の景気指数や経済指標の発表が相次ぐため注目となります。ここで注意しなければならないのは、7月18日からの15,500ドル台でのもみあいの中で、31日に15,634ドルをつけて15,499ドルで引け、8月2日に15,658ドルをつけて2山を形成し、7日に15,470ドルとなって15,499ドルを切ったことで日足でのダブル天井の形となっています。柴田罫線では週足に近い形ですので、何も出ていませんが、注意していなければなりません。ただし、8月2日の15,658ドルを突破すれば問題ありません。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、8月7日~8日の日銀の金融政策決定会合で何らかの追加緩和策が出なければ円高基調となり、98~100円のレンジを想定しました。

結局は、急激な円高進行となりました。それは、日銀の金融政策決定会合が現状維持のままの上に、アメリカの金融政策の方向が不透明となって株が売られ、ドルも売られて10年債利回りが低下し、円は一時95円台の円高となりました。

現状のドル・円は日経平均に連動しており、薄商いの中日経平均が下がると円高進行となり、さらに日経平均が下がるという動きが先物主導でなされています。夏休みモードに入っており、もう少し円高基調が続く可能性があります。

チャートをみてみると、今年2月25日の90.90円をドルの安値の基点とし、5月22日の103.7円を高値の基点とする三角保ち合い(A)を形成しており、ザラ場では94円台までの円高の可能性があります。円安にブレでも当面は99円水準までとなります。今週は94~98円を想定。

ドル/円