先週はイタリアの総選挙の結果を受けて急落するが、週後半戻す

先週の予測では、チャートは上放れの形となり、上下動を繰り返しながら12,000円を目指す形へとしました。但し、目先は11,600円台からは上値重く、イタリア総選挙の結果待ちとなり、大きな悪材料にならなければ11,400円台が下値ゾーンとしました。

25日(月)に海外株式の上昇、TPP交渉参加表明、日銀次期総裁に黒田氏起用の方針を受けて為替が1ドル=94円台の円安進行となり、△276の11,662円と2008年9月29日以来の水準を回復しました。しかし、イタリアの総選挙を受けて欧州債務不安からNYダウが急落し、為替もリスク回避の円高となり、ドル/円では90円台、ユーロ/円では118円台の急激な円高となり、日経平均は、27日(水)には▼144の11,253円となって、25日移動平均線(27日時点11,190円)に接近する動きとなりました。

その後、FRB議長のQE3(量的金融緩和)は継続するとの示唆をしたことや住宅関連の経済指標の改善を受けて、NYダウは14,000ドルを回復して史上最高値をうかがう動きとなり、為替もやや円安基調となったことで、28日(木)の日経平均は△305の11,559円、3月1日(金)は一時11,648円まで上昇し、△47の11,606円で引けました。トピックスは25日(月)の昨年来高値980Pを更新する984Pとなりました。2月を終えて、7カ月連続の上昇を記録しています。

円安は一服傾向にあるものの、内需株が買われて上値目指す

3月20日に就任する黒田次期日銀総裁の積極的な金融緩和策への期待から円安基調にあるものの、これまでのような一本調子の円安シナリオは、G20以降は海外からの批判もあって、描きにくいと思われます。そのため、為替は当面92~95円のレンジのもみあいが想定され、その間は安倍政権の政策にあった内需関連が物色されやすいといえます。先週末の3月1日(金)は不動産、倉庫、食品、医薬品、地方銀行が物色されて高値銘柄続伸となっています。

先週末の安倍首相の施政方針演説をみると、金融政策、財政政策、成長戦略の3本柱の中でも成長戦略に重点を置いています。復興や防災をはじめ、TPP交渉参加をにらんだ農業支援、エネルギー改革、再生医療、クールジャパン(※)などが盛り込まれています。
※クールジャパンとは、日本独自の文化が海外で評価を受けている現象で、当初は主に秋葉原に代表されるようなマンガやアニメ、渋谷・原宿のファッションなどを示していました。要するに日本独自の文化をビジネスとして世界に進出しようというものです。

そうなると、株式市場は政策テーマになる銘柄が物色されることになりますので、不動産、倉庫などの含み資産の資産株、バイオ関連株、農業関連株、海洋資源関連株などがその対象と考えられます。

本日4日(月)は、先週末のアメリカ市場が堅調で、為替も1ドル=92円台から93円台へ1円以上も円安に振れたことで△89の11,695円と高寄りし、一時11,767円まで上昇しました。しかし、その後は黒田次期日銀総裁の所信表明が終わると円安一服となり、又上海市場が3%近い急落となっていることで上げ幅を縮小し、一時11,613円まで下げ、大引けは△45の11,652円となりました。高値更新をしているものの、出来高は2月初旬は40~50億株だったものが30億株前後となってきており、一気にこれまでのように大幅に上昇するのは難しくなっているといえます。

(指標)日経平均

先週の予測では、日米首脳会談でTPP交渉への参加表明や日銀の総裁人事で買われてくる可能性が高い一方で、イタリア総選挙の結果を受けて利益確定売りの可能性もあるとしました。

週明けの25日(月)は、TPP交渉参加表明、日銀の次期総裁に金融緩和積極派の黒田氏の起用の提示からの円安進行、欧米株高を受けて△276の11,662円と約4年5カ月ぶりの高値をつけましたが、翌26日(火)は、イタリア総選挙の結果を受けて欧州信用不安が高まり、▼263の11,398円と反落しました。27日(水)は▼144の11,253円まで下落。しかし、28日(木)は欧米株高を受け、円安は一服しているものの内需株が買われて△305の11,559円と急反発、週末の3月1日(金)は先物主導で△47の11,606円で引けました。高値を更新しているものの、これまでのように円が一方的に上昇しにくい状況では内需株が買われても日経平均の指数はそんなに大きく伸びにくく、高値圏でのもみあいの可能性が高いと思われます。日経平均は先高期待が高いものの、買いがでは財政懸念からリスク回避の円買いの方向も考えられます。11,300~11,700円のレンジ内を想定。

4日(月)は、前場は黒田次期日銀総裁の所信表明への期待から円安が進み、一時11,767円まで上昇するものの、表明後は円安一服となり、上海市場の急落もあって上げ幅を縮小し△45の11,652円で引けました。

日経平均

(指標)NYダウ

先週の予測では、バーナンキFRB議長証言が注目となり、28日(木)のGDPが上方修正されるようだとNYダウの史上最高値も意識されるが、3月1日(金)の歳出の強制削減の決定が不安材料としました。

週明けの25日(月)は、イタリア総選挙の結果を受けて▼216の13,784ドルと大幅反落。しかし、FRB議長の量的金融緩和の継続を示唆する発言と経済指標の改善で、26日(火)は△115の13,900ドル、27日(水)は△175の14,075ドルと2日連続の大幅上昇となり、「ろく買」が出現しました。28日(木)は11,149ドルまで上昇し、週末の3月1日(金)は終値で△35の14,089ドルと昨年来高値で引けました。

史上最高値まであと少しと迫っていますが、最高値を更新するかどうかは3月1日より実施の強制歳出削減実施が投資家心理にどう影響を与えるかとなります。まだ3月27日の暫定予算の期限まで時間があるために目先は大きな悪材料とは考えられてないのかもしれません。今週は、週末に2月の雇用統計の発表もあり、最高値近辺でのもみあいとなるかもしれません。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、日銀の次期総裁に金融緩和積極派の黒田氏の起用の提示からさらなる金融緩和期待が高まるものの、一方で欧州債務不安がくすぶっており、当面は92~95円のレンジの動きを想定しました。

結果的に、週明けの25日(月)は日本市場ではTPP交渉参加表明、次期日銀総裁へ黒田氏の起用方針、アメリカ株高を受けて94円台の円安となりましたが、引け後の欧州でイタリア総選挙の結果を受けて欧州信用不安が高まって90.85円まで急激な円高進行となりました。その後はイタリアの政局不安はあるもののいったん落ち着き、アメリカではバーナンキFRB議長の証言や好調な経済指標を受けてやや円安方向へ戻し、週末の3月1日(金)は93.55円で引けました。

今週は、3月20日に就任する黒田日銀総裁の積極的な金融緩和への期待から円が売られやすい状況にはあります。但し、4日(月)の黒田氏の所信表明で目先円安一服の可能性もあります。今週も92~95円のレンジが想定されます。

ドル/円