オバマ大統領再選後、「財政の崖」問題などに直面し、アメリカ経済の回復が懸念されていましたが、ここにきて株価の動きは新しい相場を感じさせる動きとなっています。大型株で構成されるS&P500は、1月25日(金)の終値△8の1502Pとなって5年ぶりにフシ目となる1500Pを上回り、高値更新を続けており、2004年11月以来の8営業日続伸となりました。NYダウは、昨年高値を更新し△70の13,895ドルで引けて、2007年10月11日の史上最高値14,198ドルを目指す形となってきました。

NYダウの柴田罫線(チャート)は上向き先細三角形の上放れへ(NYダウのチャートを参照)

先週の1月21日(月)の分析では、2011年の10月4日の10,404ドルからの短期上昇トレンドを追う形で分析してきましたが、ここにきて昨年の10月5日の13,661ドルの高値を更新してきたことで、中長期のトレンドで分析をし直すと別の見方がでてきました。

リーマンショック後の2009年2月9日に6,440ドルの安値をつけ、ここから2011年の5月2日の12,876ドルまでの大きな上昇トレンドを形成しました。その後は、この年の10月4日の10,404ドルまで調整し、ここから12,876ドルを基点とする、緩やかに上値を切り上げる上昇と10,404ドルを基点に角度の大きい下値を切り上げる上昇、つまり上向きの先細三角形の保ち合いを形成してきました。この煮詰まってきた中で、昨年の11月16日の12,471ドルを安値に上昇して昨年来高値を更新し、この上向き先細三角形を上放れる形となりました。2007年10月11日の史上最高値14,198ドルを試す形といえます。

先週末までのNYダウは、6日続伸で、13,895ドルと2007年10月以来5年3カ月ぶりの高値で終わりました。経済指標の改善と2012年10-12月期決算で予想を上回る企業が多く、市場心理が好転し急ピッチな上昇が続いています。ただ急ピッチな上昇だけに何か悪材料が出ると一服する可能性もあります。目先は13,500~14,000ドルのレンジを想定。

柴田罫線でNYダウのチャートの形をみる限り、2007年10月11日の14,198ドルの史上最高値を更新し、さらに上を目指す可能性は高いといえます。ただし、相場ですので一方的に上げ続けることはなく、また、「財政の崖」問題も先延ばしされただけですので、株価のマイナス要因にはなります。住宅関連指標や雇用問題もまだ不透明ですので、大きな上下動を繰り返しながら、上を目指すことになるかもしれません。NYダウの相場が崩れるとみる場合は、2012年11月16日の12,471ドルを終値で切った場合といえますので、ここに注目しておくとよいでしょう。

上放れの背景…過剰流動性とアメリカのシェール革命

ここにきて、アメリカ株式が2007年の史上最高値を試す動きとなっている背景は、1つにはFRBのゼロ金利政策による金余り相場となっていることによります。この視点からみると、どこかでゼロ金利政策の変更(出口戦略)が行われるといったん大きな調整がくる可能性があります。しかし、長期でみるとアメリカの株式は30年以上も上昇し続けていますが、その理由は経済が後退期に入る時に、大きなイノベーションが起こるということです。 以前はIT革命、今度はエネルギー革命というものです。

昨年の9月、オバマ大統領は「100年分の天然ガスが開発可能となる」とシェール革命が企業に及ぼす明るい未来図を示しました。シェールとは泥土が堆積してできた「頁岩(けつがん)」で、この中に天然ガスと原油が含まれています。これまで、この天然ガスと原油を採掘するのが難しく、コストもかかっていましたが、水圧で岩に割れ目をつくってガスと原油を取り出す技術が確立され、コストが急激に低下しました。今後、生産量の急増が見込まれる新しいエネルギー資源の誕生ということで「シェール革命」と呼ばれています。

従来型の原油やガスで圧倒的な生産力を誇っていた中東やロシアの地位が相対的に低下する一方で、エネルギー輸入国の米国が輸出国に転換する見通しです。エネルギー情報局によると、2020年代初頭には天然ガスの生産が消費を上回り輸出国になると予測しています。又、シェールオイルも国際エネルギー機関によると、米国が2020年代半ばに世界最大の原油生産国になり、カナダを含む北米は2030年ごろに原油輸出が輸入を上回ると見通しています。つまり、アメリカが中東産油国の立場になるということです。エネルギー価格が低下すれば、すべてのコスト減に結びつきますので、アメリカの経済力は再び高まることになります。2020年代はそんなに先のことではないので、長期的に株価はアメリカのエネルギー革命を織り込んだ上昇になりつつあるのかもしれません。

今週は決算発表に注目…どこまで円安を織り込んでいるのか
-1月28日(月)に寄り付き11,000円に到達し、利益確定売りへ-

先週は為替の動きに左右され、10,441円まで下げて10,926円へ急反発

1月21日(月)の予測では、22日(火)の日銀の金融政策決定会合の結果発表のあと材料出尽くしになる可能性が高く、前週の週足でも十字線に近い陰線となって目先相場の転換を意味するとしました。副タイトルでは、大きな下落(10,500円水準以下)では買っていくところとし、10,580円を切ると1月17日の10,432円を試す動きとなり、この水準は下値抵抗ゾーンとなるところともしました。

週明けから21日(月)の▼165の10,747円、22日(火)の▼37の10,709円と続落後、23日(水)は日銀決定会合通過で為替が89円から88円台への円高に振れ▼222の10,486円の大幅下落となって、10,500円を割れました。24日(木)の前場には10,441円の安寄りしたあと為替が円安基調となったことで、後場急速に切り返し、△133の10,620円で引けました。さらに週末の25日(金)は欧米の経済指標の改善から円が対ドルで90円台半ば、対ユーロで121円台の急激な円安となったことを受け、△305の10,926円と一気に10,900円台を回復しました。

23日(水)のメッセージで、9,400~11,000円(その前に10,950円)の間の往来相場となって、そのあとに上放れることを想定していましたが、10,441円を安値に一気に10,926円となって、9,400~10,950円の上限まで接近して引けました。

輸出企業はどこまで円安を織り込んでいるのか…決算発表に注目

結局、先週は想定した10,400~11,000円(その前に10,950円)のレンジの中で為替市場や先物市場での動きに左右される展開となり、10,441円の安値から10,926円の高値まで上昇して引けました。下値では1月9日の10,398円、1月17日の10,432円、そして先週の10,441円と下値を切り上げる順上げの3点底の形となっており、先週末に終値ベースでは高値を更新したことや、さらに円がドルに対して91円台、ユーロに対して122円台へと一段の円安進行となったことで、本日の寄り付きは△76の11,002円となりました。心理的なフシ目である11,000円に到達したことで目標達成感から利益確定売りとなって、▼102の10,824円で引けました。

今週は、本格化する企業決算が焦点となります。今回の決算発表は読みにくいと思われます。すでに急激な円安を織り込んで主力の輸出関連株は上昇してきており、企業の決算発表も円安進行を前提とした発表になるものと思われます。前回の決算発表の時点で為替は80円どころでしたが、今回は約10円の円安が進んだ90円水準となっています。この約10円の円安水準を織り込んで輸出関連株が買われてきたとするならば、決算発表でいったん材料出尽くしとなり、までそこまで織り込んでいないとすれば、決算発表での上方修正でさらに株が買われるということになります。

本日の日経平均の動きをみると、為替の91円水準までは目先織り込んだともみれますが、さらに円安(92円以上)進行となれば再度11,000円を試して上に抜けていく可能性もあります。ただ言えることは、利益確定売りで下げれば格好の買いチャンスになるということです。円が一服しても次期日銀総裁に向けた関心が高まり、4月に向けた円安トレンドが株価を押し上げることになる可能性が高いからです。

(指標)日経平均

先週の1月21日(月)の分析では、一時的に円高となっても日経平均の下値は限定的で、下げても1月17日(木)のザラ場安値10,432円が下値ポイント、上値では11,000円としました。22日の日銀金融政策決定会合の結果を受けて一時円高に振れ日経平均は1月21日(月)に10,441円まで下落しましたが、すぐに円安基調となり大きな円安進行となったことで、週末の25日(金)は10,926円で引けました。42年ぶりの11週連続の上昇となりました。

今週も円安基調は変わらないと思われますが、さらに大きな円安(92円台)とならない限り高値圏でもみあう展開が想定されます。その動きの中で28日(月)は、ボックスの上限とした11,000円に到達し目標達成感から寄り付き11,002円をつけて利益確定売りとなり▼102の10,824円で引けました。主要企業の決算発表が本格化しますが、特に輸出関連企業は円安効果を織り込みながら上昇してきているだけに、このまま更に上昇するかどうか注目するところです。チャートでは、11,000円水準は抵抗ゾーンとなります。下げても下値は10,600円が抵抗ラインとなっています。

日経平均

(指標)NYダウ

先週の1月21日(月)の分析では、2011年の10月4日の10,404ドルからの短期上昇トレンドを追う形で分析してきましたが、ここにきて昨年の10月5日の13,661ドルの高値を更新してきたことで、中長期のトレンドで分析をし直すと別の見方がでてきました。

リーマンショック後の2009年2月9日に6,440ドルの安値をつけ、ここから2011年の5月2日の12,876ドルまでの大きな上昇トレンドを形成しました。その後は、この年の10月4日の10,404ドルまで調整し、ここから12,876ドルを基点とする、緩やかに上値を切り上げる上昇、10,404ドルを基点に角度の大きい下値を切り上げる上昇、つまり上向きの先細三角形の保ち合いを形成してきました。この煮詰まってきた中で、昨年の11月16日の12,471ドルを安値に上昇して昨年来高値を更新し、この上向き先細三角形を上放れる形となりました。2007年10月11日の史上最高値14,198ドルを試す形といえます。

先週末までのNYダウは、6日続伸で、13,895ドルと2007年10月以来5年3カ月ぶりの高値で終わりました。経済指標の改善と2012年10-12月期決算で予想を上回る企業が多く、市場心理が好転し急ピッチな上昇が続いています。ただ急ピッチな上昇だけに何か悪材料が出ると一服する可能性もあります。13,500~14,000ドルのレンジを想定。

NYダウ

(指標)ドル/円

2008年8月15日のドルの高値110.5円からの下降トレンド(A)の中で、この年の12月18日に87.3円の安値をつけ、直角三角形の保ち合いを形成。この保ち合いを下放れし、2011年10月31日の75.6円まで下落。ここを安値に底値圏でのもみあいとなり、2012年2月1日の76.1円、9月13日の77.1円と順上げの三点底(逆三尊)となって、10月19日に79.4円で買転換出現。ここから自民党の圧倒的勝利と安倍首相のデフレ対策のための金融緩和への期待が高まり、2008年8月15日の110.5円からの下降トレンド(A)を一気に抜け出し、2011年4月6日の85.5円を突破し、1月11日(金)は89円台を回復。

先週は22日の日銀金融政策決定会合の結果を受けて、目先材料出尽くしから23日(水)には88.1円までの円高進行となり、その後は欧米の経済指標の改善を受けてドルが買われ、25日(金)には急激な円安の動きなりました。

先週の予測では、1月18日の90.21円を上回れば92円台を目指すとし、下値は87.9円を守れるかどうかとしましたが、23日(水)に88.1円までの円高のあと急激な円安となって90円台半ばまで進行しました。25日(金)には更に円安が進行し一時91.19円までとなりました。先週末にかけては欧米の経済指標の改善を受けてドル買い・ユーロ買いが進み、日銀が金融緩和姿勢を強めるとの見方から円安が急ピッチで進み91円台をつけました。92円は上値抵抗ラインとなるところですので、ここからは利益確定の円買いも膨らみそうですが、国内外の株式市場が堅調であれば更なる円安も想定されます。30日(水)のFRBで想定より早く金融緩和の出口戦略を模索しているとの思惑が広がれば、ドル買いが進んで円売りに勢いがつくことになります。2月1日(金)の米雇用統計も注目です。88~92円の範囲を想定。

ドル/円