欧州債務懸念と中国との摩擦で、いったん調整入り

先週は、調整後は上値を試す可能性が高いとしました。それは日米欧の金融緩和によって過剰流動性相場が想定されるからです。しかし、その調整がどこまでの調整となるのかが不透明になってきています。先週は、欧州でギリシャ、スペインの財政問題から債務不安が再燃し、アメリカでは住宅指標が予想を下回り、中国経済の減速懸念も高まり、これに加えて日中の摩擦から自動車大手が現地で減産に追い込まれるなど企業活動への影響が広がり、週末28日(金)の日経平均は一時75日移動平均線(28日時点8,860円)を割り込み、8,838円まであって、終値は▼79の8,870円とかろうじて75日移動平均線を守って引けました。先週は1週間で239円(2.63%)下落し、9月期末の配当落ち(約75円)を考慮すると164円の下落となります。

売買代金はかろうじて1兆円を守りましたが、QE3の発動や日銀の追加の金融緩和にかかわらず、外国人買いが増加しないことが日経平均の上昇を押さえています。これは、昨日の日経新聞のトップに「設備投資、世界で抑制」というタイトルで載ってましたが、主要国の4-6月期は2年ぶりに減少し、企業が需要を見通しづらいためです。そのため、今のところいくら金融を緩和しても需要(設備投資など)には向かわず、本来の意味で企業の業績を先取りして株価が上昇するという形にはなっていません。かと言って、背景には過剰流動性がありますので、ある程度悪材料を織り込んだあと株式市場が上昇することが考えられます。

日経平均が想定以上に調整しているのは、日銀の追加緩和で期待された円安がドルに対して1日しか続かず、すぐに円高となり、さらに欧州債務懸念の再燃で対ユーロに対しても円高が進んだことで輸出企業の採算悪化懸念から大型株中心に売られたことが考えられます。

先に下値を探る展開へ

日米欧の金融緩和政策、中国の追加の景気刺激策と背後には流動性相場の期待があるものの、目先はヨーロッパの財務問題に対してのスペインの対応とECB理事会の応答がどうなるのか、アメリカの9月の雇用統計によって、為替の動向に日本市場は左右される展開となってきています。

本日の日本市場は、9月の日銀短観が前回の6月より悪化し、12月予測も-3ポイントとなっていることや、為替が対ユーロ・対ドルでやや円高方向にあることから輸出の主力株がさえず、後場は一段安となって8,759円まで下落し、大引けは多少戻して▼73の8,796円となりました。 終値で75日移動平均線(1日時点8,866円)を切って引けましたので、調整が多少長引くことになります。ここからの下値メドは9月6日安値の8,646円、心理的フシの8,500円ですが、8,646円水準は昨年からのもみあいで累積売買高が厚いところですので、大きな下値メドとみることができます。指数に連動する輸出関連の大型株が下がっているために日経平均の下げが大きくみえますが、内需関連の好業績銘柄はしっかりしており、何でも下がっているという状況ではありません。

基本は、過剰流動性相場が背景にありますので、大きく下げるところは買いを考えていくところです。

(指標)日経平均

先週の予測ポイントとして、日銀の金融緩和による円安は続かず、円高にブレたことで上値を追えない状況になっており、目先の下値メドの9,000円を切ると8,800円水準としました。週の終値でSQ値の9,076円を上回らなければ、目先の上値追いは厳しいとしています。

26日(水)に欧州問題からNYダウが大幅安となり円高も進行し、権利落ちもあって▼184の8,906円の大幅下落となりました。27日(木)は△43の8,949円と反発するものの、週末の28日(金)は▼79の8,870円となって、75日移動平均線(8,860円)水準まで下げてきました。背景にあるのは中国の景気減速懸念と日中摩擦によって自動車の減産など企業活動への影響が広がりつつあることです。又、ギリシャ、スペインの債務懸念も再燃しています。

今週は、中国市場は休場で、関心はFOMC議事録、米9月雇用統計、ECB理事会に移ることになります。10月4日(木)のドラギ総裁の発言やFOMC議事録の内容に左右される動きが想定されます。75日移動平均線(9月28日時点8,860円)を終値で割り込んでくるようだと調整が長引くことになってきます。7月26日の8,328円から9月19日の9,288円までの1/2押しは8,807円となります。1/2押し以下の下げになると、次の戻りでは9月19日の9,288円に対する2番天井のような動きとなって、9,288円を突破するには時間がかかることになります。そうなると、当面は8,800~9,000円のボックス相場入りとなる可能性もあります。10月1日(月)は▼73の8,796円となり、75日移動平均線(1日時点8,866円)、1/2押し(8,808円)を下回って引けました。9月6日の8,646円を終値で下回ると7月26日の8,328円からの上昇相場がいったん終わり、8,500~9,000円のボックス相場となる可能性があります。

日経平均

(指標)NYダウ

先週の予測では、引き続いてもみあいが続きそうであるが、目先はそれほど上昇余地なく一服ほしいところとしました。

ドイツの経済指標の悪化やギリシャ、スペインの財政問題懸念から25日(火)には▼101の13,457ドル、26日(水)は住宅指標の予想を下回る結果を受けて▼44の13,413ドルと4日続落となりました。27日(木)はスペインの2013年予算案がEUの基準を上回ったことを好感し△72の13,485ドルと反発するものの、週末の28日(金)はスペインの格下げの可能性を嫌気して▼48の13,437ドルと反落しました。2週連続の下げとなり、上値が重くなってきています。

今週のアメリカ市場は、週末の9月雇用統計が注目となりますが、投資家の関心は欧州情勢と中国の景気動向へ移っています。中国市場は今週は休場ですので、8日(月)に発足する欧州安定メカニズムにスペインが支援を要請するかどうかが焦点となります。目先の動きでは、1日(月)の9月ISM製造業景気指数、バーナンキ議長講演、4日(木)のFOMC議事録公開などがあり、一喜一憂する展開も考えられます。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週は、日米欧が金融緩和からリスクマネーに向かった流れが一巡し、再び欧州問題やアメリカ景気の見通しから円が買われる動きとなり、アメリカの住宅関連の指標が回復の鈍さを示せば、ドル売り・円高となる可能性があるとし、77.5~79円を想定しました。

結局、欧州ではギリシャ・スペインの財政問題からユーロ売り・円買いとなり、アメリカでは経済指標が予想を下回ってドルが売られ、円はユーロ・ドルに対しても円高基調となりました。24日(月)の78.16円をドルの高値にして売られる展開となり、27日(木)には77.58円までのドル安・円高となりましたが、週末はドルが78円台まで買い戻されて77.92円で引けました。

今週の円相場は、10月4日~5日に開く金融政策決定会合で追加の金融緩和を見送れば円買いの流れ、5日の9月の米雇用統計が予想を下回れば一段のFRBの追加緩和が高まり、ドル売り・円買いとなりやすく、9月13日の77.13円を試す動きとなる可能性があります。9月27日の77.58円を切るドル安となれば売転換が出現してドルの一段安となります。77.0~78.5円を想定。

ドル/円