先週後半は、ドイツ憲法裁判所の合憲判断とFOMCのQE3実施声明受け大幅上昇

先週の時点では、欧米株式が高値圏にあることや、3月の高値期日が月末にくることで高値を追っていくのは難しく、基本的にはFOMC声明でのQE3の内容に左右されるとしました。そして強気のシナリオと弱気のシナリオを想定しましたが、結果的には以下の強気のシナリオの動きとなってきました。

『ECB理事会の国債買取プログラムの決定に続いて、FOMCで量的金融緩和(QE3)が決定されれば欧米株式は上昇し、日本株式に割安感が出てきます。ただし、この場合は日米金利差の縮小でドル売り・円高となりますので、日銀のタイミングのよい追加の金融緩和が打ち出されるかどうかとなります。世界的な「過剰流動性相場」のような状況となれば世界同時株高となり、9,220円を突破して9,500円が目標となってきます。』

週前半は、中国の8月貿易収支で、輸出・輸入とも予想を大幅に下回り、世界経済の減速懸念から軟調となりましたが、12日(水)は、メジャーSQを前にドイツの憲法裁判所によるESMの合憲判断やFOMCの追加金融緩和への期待から先物への仕掛け的な買いが入り、△152の8,959円の大幅高となりました。引け後は、予想通りドイツ憲法裁判所の合憲判断、13日(木)はFOMCの声明でQE3の実施決定を受け、NYダウが△206の13,539ドルと上放れとなったことで、日経平均はSQ値9,076円を大きく上回る△164の9,159円で引けました。

予想外の上放れの背景

NYダウは、これまでほとんど下落することなく、QE3期待から年初来高値水準で株価を維持していました。ということは、普通で考えると、QE3を織り込んで上昇してきていたといえます。そのため私は、QE3の実施発表がなければ失望売り、予想された内容ならば材料出尽くしでいったん下落することを想定し、たとえ好感してNYダウが上昇しても日米金利差縮小からドル売り・円買いとなって日経平均の上昇は難しいと考えていました。しかし、最近の世界の主要国の対策により超金融緩和による過剰流動性相場が再びよみがえってきている状況になっています。

まず、9月6日(木)のECB理事会でユーロ加盟国の国債の無制限買入れの合意、12日(水)のドイツ憲法裁判所の欧州安定メカニズム(ESM)の合憲判断が下され、これによりEU(欧州理事)が銀行監督の一元化へ、そして13日(木)のFOMC声明でのQE3実施となりました。今回のQE3で目先材料出尽くしとならなかったのは、QE1、QE2はFRBが債券を購入する場合は期限を決めて方針が打ち出されましたが、今回は「雇用の回復ができるまで、住宅担保証券を毎月400億ドルづつ買い続ける」としました。つまり、FRBは景気が回復するまで緩和策をとり続けると宣言したようなものになったからです。

当面は上昇相場が続く可能性が高い

一歩踏み込んだQE3の実施発表を受けて、NYダウは年初来高値を大幅に上回る4年9カ月ぶりの高値水準となったことで、基本的には上昇が続く可能性が高いといえます。但し、ここから一気に欧米の株式市場が上昇していくとは考えにくいところです。上述したように高値圏でQE3は時間をかけて株価に織り込まれている側面もあり、NYダウはどこかで目先「材料出尽くし」の小幅調整の可能性もあります。

日経平均も7月の急落(7月26日の8,328円)後は、QE3期待で買われてきていますが、QE3に伴う円高はドル/円では進行しているものの、ユーロ/円では先週末に一時4カ月ぶりに1ユーロ=103円台の円安となっており、ドル/円での円高を無視して上昇しています。今週は、日銀の金融政策決定会合で追加の金融緩和があれば、日経平均は戻りが続くことになります。日経平均の為替からみた本格上昇は、1ドル=80円を超えることが条件となります。

今週は、日銀が追加の緩和策を出すか、出さなくても円高が進行しなければ9,350円を試すことになります。ここを突破して9,500円を試すには、アメリカ株高や一段の円安が必要となるでしょう。本日は、QE3を受けた流動性相場(金余り相場)への期待と中国での反日デモの影響の拡大懸念から強弱対立する動きとなって、▼35の9,123円で引けました。目先は9,350円までの真空地帯を埋める動きになりそうですが、そこから上は政府・日銀の対応からの為替の動きにかかってきます。

(指標)日経平均

先週は、6日(木)のECB理事会の無制限国債買い入れを受けて反発。7日(金)の8月雇用統計が大幅に予想を下回ったことを受け、13日(木)のFOMCでQE3がどうなるのかを注目するとことであり、様子をみるところとしました。戻る場合は、8月20日の高値9,222円が上値ポイントとしています。

週初めは、2日連続安となりましたが、12日(水)は、FOMCを前に追加金融緩和期待でNYダウが上昇し、これを受けて円高にもかかわらずメジャーSQの思惑もあり、先物主導で薄商いの中を△152の8,959円と大幅上昇となりました。12日(水)はドイツ憲法裁判所の欧州安定メカニズム(ESM)の合憲判決、13日(木)はFRBによるQE3の実施で、週末14日(金)は△164の9,159円で引けました。

今週は、先週に目先の上値ポイントとした8月20日の高値9,222円に接近しましたので、QE3実施を受けてさらに上昇余地が広がり、まずは9,350円、さらに9,500円を試す展開が想定されます。但し、それには日銀の緩和や為替介入などで円高圧力が和らぐのが条件となります。19日(水)の日本航空の再上場も堅調であれば相場にプラスになります。連休明けの18日(火)は、アメリカのQE3を受けての日銀の追加金融緩和への期待と反日デモの長期化懸念という強弱材料からもみあいとなって、▼35の9,123円で引けました。

日経平均

(指標)NYダウ

先週は、8月雇用統計が大幅に予想を下回ったことで13日(木)のFOMCでのQE3への期待が高まっているものの、ここで最後のカードを切るとは考えにくく、先延ばしを想定し、高値圏でのもみあいを想定しました。しかし、12日(水)にドイツ憲法裁判所でESMが合憲とされ、13日(木)のFOMCでは、予想された米国債の購入は含まれなかったものの「期限を決めずに住宅ローン担保証券を買い入れる」ことが一歩踏み込んだものと評価され、天井圏を上放れる形となりました。週末14日(金)も引き続きQE3を好感し、13,653ドルまであって、△53の13,593ドルで引けました。4年9カ月ぶりの高値となりました。

NYダウは高値圏でもみあったあと、FOMCのQE3実施表明を受けて大きく上放れしたので、基本的には上昇相場が続く可能性が高いといえます。但し、短期的には過熱感が強いので、スピード調整の場面があるかもしれません。今週は19日(水)の8月住宅着工件数に注目となります。週明けの17日(月)は、9月のNY連銀製造業指数が2009年4月以来の低水準になったことを嫌気し▼40の13,553ドルと反落しました。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週は、8月雇用統計が大幅に予想を下回ったことで13日(木)のFOMCでのQE3への期待が高まり、ドルが売られて円が買われやすい状況になるとし、チャートでは8月1日の77.91円を上回る円高となれば77円台半ばまでの円高を想定しました。追加の金融緩和期待からドルが売られ、12日(水)までは77円台後半の動きでしたが、13日(木)にFOMCでQE3の実施が発表されると、77.13円と2月9日以来の円高となり、引け値は77.49円となりました。しかし、14日(金)は政府・日銀による円売り介入への警戒感から78円台まで戻しました。

チャートを引き直してみると、短期では、ドルは6月25日の80.616円からの下降トレンド(A)となっています。この中で、8月20日の79.66円の戻り高値からの下落となり、13日(木)はFOMCでのQE3の実施声明を受けて、下降トレンド(A)の下値斜線にあたる77.13円まで下落しました。しかし、ここで政府・日銀の介入警戒感もあってドルが買い戻され、14日(金)は78.38円で引けました。基本的にはFRBがQE3の導入を決めたことでドルが売られやすい状況となりますが、日銀の18~19日の金融政策決定会合次第となります。金融緩和を見送ると再び77円を目指す形となり、何らかの追加緩和を決めれば79.5円を目指す可能性があります。週明けの為替市場では、日中関係の悪化や日銀の追加緩和の観測から一時78.93円まで円売りが進行しました。

ドル/円