いったん下値模索となるが、ECB総裁の発言を受け急反発

先週の23日(月)の時点では、20日(金)にトピックスに柴田罫線で売転換が出現したことや、欧州債務問題の再燃から日経平均は下値模索の動きになるとしました。また、日本を除くと欧米の株価はそれほど下がっておらず、スペインの国債利回りの急騰をきっかけに欧州債務問題の拡大となれば、欧米株式の調整入りに連動して日経平均は下値模索となることを想定しました。 日経平均が反発するには予想外の好決算やFRBのQE3の具体化でNYダウが13,000ドルを突破するような動きとなるか、円高が一服して円安基調になるぐらいしかないとしました。

週前半は、欧州債務問題の再燃からユーロが売られ、円高基調が続いたことやNYダウも下落したことで、25日(水)には▼122の8,365円となって、先々週想定したような6月4日の8,238円に対するダブル底をつけるような動きにもなってきました。 しかし、欧州安定メカニズムの機能拡大や追加緩和策の期待から欧州債務不安が後退し、アメリカ企業の好決算もあってNYダウが反発に転じてきました。26日(木)にはECB総裁の「ユーロ圏を守るためには必要な手段は何でもとる」との発言を受け、△211の12,887ドルとなりました。週末の日経平均も大型株が買い戻されて△123の8,566円と8,500円を回復して引けました。

今週は、ECB総裁の発言の内容の具体化とFOMCのQE3への対応を確認

今週は、8月1日(水)のFOMC、2日(木)のECB理事会、3日(金)の米雇用統計を控えて動きにくい状況だといえます。特に先週末のECB総裁の「あらゆる手段をとる」という発言がどういうものなのかを確認することになります。

ドラギ総裁の発言は、正確には「ECBはユーロ圏を守るためには責務の範囲内で何でもやる」というものです。つまり、総裁の立場(権限)内でという前提がありますので、これは当たり前のことを言っており、新しい好材料が飛び出したわけではありません。世界の株式が下落し、ユーロが大幅に売られ、債券利回りも高騰していたところに出た材料であり、巻き返しが起こったということでしょう。その前の統一銀行監督制の導入の検討(ユーロの統一に続いて、銀行の統一)があったり、アメリカではFRBが「景気が悪化すればすぐに金融緩和を行なう」と発言していたことも大きな反発のタイミングとなったものと思われます。ECB理事会で期待するものが出なければ失望売り、予想通りのものであれば材料出尽くしとなってユーロの買い戻しが止まり、株価も下落となる可能性があります。

NYダウは、先週末は、ECB総裁の発言を好感し、さらに4-6月期GDPは減速となっているものの予想の△1.4%を上回る前期比年率△1.5%だったこともあり、△187の13,075ドルと約2カ月半ぶりの高値水準となりました。FOMCでのQE3への期待もありますので、1日のFOMCも注目となります。

今週は、基本的には、上値は限定的ながら戻りを試す展開が想定されますが、ここでは保有株のキャッシュ化を考えるところです。出来高、売買代金は増加しておらず、買い戻しによる上昇とみるべきです。

本日は△92の8,658円と高寄りして始まりましたが、戻り売りと利益確定売りに押され一時8,589円まで上昇幅を縮めましたが、大引けにかけて買い戻され△68の8,635円で引けました。売買代金は8,715億円と低水準のままです。

(指標)日経平均

先週の予測では、円高基調のもとで売買代金が1兆円に満たない状況では下値模索になりやすく、6月8日の8,427円を守れるかどうかとしました。週始めにスペインの国債利回りの急上昇から欧州債務問題が再燃し、ユーロが大幅安となったことで円高進行となり、7月25日(水)には▼122の8,365円となり売転換が出現しました。しかし、アメリカ市場で経済指標が好転し企業決算も好調なものが多く出たことで、週半ばから反発に転じ、これを受けて日経平均も週末の27日(金)は△123の8,566円と2日続伸して引けました。ただし、中途半端な位置からの戻りといえます。

今週は、先週末のECB総裁の発言を受け、欧州債務問題の懸念の後退から円高基調が一服し、いったん戻りを試す展開が想定されます。円高による国内の企業業績悪化は織り込まれつつあるものの、アメリカ経済は鈍化傾向を示してきており、上値は限定的といえます。

30日(月)は、アメリカ株高とECBに対する期待感から△92の8,658円で寄り付くものの、上値重く△68の8,635円で引けました。目先13週移動平均線が8,693円、25日移動平均線が8,770円、75日移動平均線が8,885円となり、上値は重いといえます。

日経平均

(指標)NYダウ

先週は、アップルの決算に注目とし、GDPなどの経済指標が悪化すれば欧州債務問題の再燃もあるため上値は重い展開を想定し、目先は7月11日の12,604ドルを守れるかどうかとしました。

週前半は、スペインの国債利回りの急上昇を受けて欧州債務懸念が高まり、24日(火)は12,521ドルまで下落し、終値は12617ドルと12,604ドルを守りました。その後はアメリカの経済指標の改善と好決算を受けて反発に転じ、週末の27日(金)はECB総裁の発言を受けて欧州債務懸念が後退したことや、米GDPが予想を上回ったことで△187の13,075ドルと2カ月半ぶりの高値水準となりました。

先週末は前週比253ドル(△2%)の上昇となり、5月3日以来の高値となりましたが、6月4日の12,035ドルからの短期上昇トレンド(B)の上値斜線にあたるところへきました。5月1日の高値13,338ドルを突破できれば新しい展開になることが想定されますが、それには8月1日のFOMC、8月2日のECB理事会、8月3日の雇用統計が注目となります。柴田罫線では、引線の終値で12,900ドルを切って引けると売転換の出現となります。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、ユーロの下落圧力があり、FRBの追加の金融緩和期待もあることから円高基調は変わらないものの、日本の貿易赤字の拡大で円売りの要因もあるため、78~79円のレンジを想定しました。

週前半は、欧州債務問題の再燃からユーロが売られ、つられてドル売り・円買いとなって、7月23日(月)には77.947円と11年8カ月ぶりの円高更新となりました。その後は78円近辺でのもみあいとなり、26(木)にはECB総裁の発言でユーロが買い戻され、ドルも78円台半ばまで買い戻されました。

今週は、欧米の金融政策をめぐり神経質な展開になりそうです。アメリカでは8月1日のFOMC、8月3日の雇用統計があり、追加の金融緩和期待が高まればドルが売られて円買いとなります。欧州では、8月2日のECB理事会で具体的なスペインやイタリアへの対策が出るとユーロが買い戻され、円安の方向となります。77.5~79円のレンジ内での動きが想定されます。

ドル/円