先週末に、1カ月半ぶりに9,000円台回復

25日(月)の分析では、目先的には前週目標として8,900円水準を試す可能性が高く、5月9日に割り込んだ200日線移動平均線(22日時点8,944円)を突破できれば9,000円を試すことになるとしました。

週前半は、EU首脳会議を控え欧米株式が軟調だったものの、中盤以降は欧米株式が反発に転じたことで、日経平均もまずは8,900円を目指す動きとなりました。28日(木)には、ヘッジファンドの買い戻しやドレッシング買いで21日の高値5,859円を突破し、△143の8,874円と8,900円に接近してきました。そして、週末の29日(金)は、EU首脳会議での「12兆円の成長策に合意」「ユーロ圏の銀行の監督制度を統一することで合意」「銀行への資金の直接注入」など市場の予想を上回るニュースから、日経平均は△132の9,006円と1カ月半ぶりに9,000円台を回復しました。

今週は、9,000円前後を値固めできるかどうか

200日移動平均線(29日時点で8,940円)を突破して9,000円台回復となりました。今週は特別な悪材料が出なければ200日移動平均線が下値サポートとなりそうですが、上値も週足(29日時点)で、93週線が9,016円、26週線が9,171円、75日線が9,223円にあり、そのまま上昇するのは難しいところです。但し、9,000円台にのってきたことで9,000円水準で値固めができれば、9,300円台、さらに9,800円台と上昇する可能性も出てきました。

それは、先週のEU首脳会議で市場の想定を超えた積極的な債務対策の合意がなされたことによります。欧州安定メカニズム(EMS)が銀行に直接資本注入することが可能となったことで、各国が財政の負担を増やさずに済み、それ以上の財政悪化をしない点が評価されています。さらに、「銀行監督制度の創設」の合意がなされ、EUの財政ルールを順守している国に対しては欧州金融安定ファシリティ(EFSF)とESMを活用して金融市場で国債を支援することになります。これに関しては、いずれ問題点が出てくることになるでしょう。ユーロ圏の統一のためには通貨だけではなく、財政と税金の徴収まで一本化する必要がありますが、これには欧州各国のエゴが絡んできますので、実現には難しいものがあると思います。しかし、その方向に進まなければユーロ圏は崩壊しますので、長い時間をかけて「欧州連邦」のような形になっていくのかもしれません。今回はいったん欧州問題が落ち着いても、再び問題が生じ、大きな上下動を繰り返していくことになると思われます。

欧州問題がいったん落ち着けば、ユーロが買い戻されて円安基調となり、ドル・円も多少連動することになりますので、日本市場にとってはプラスとなります。NYダウの方は高値圏にありますので、高値圏でもみあっている間に円安基調であれば、日経平均は世界の主要株価に比べて出遅れ感がありますので、買われてくる可能性があります。これは外国人買いの売買状況をみておくとわかります。

今週は、欧州債務問題を巡る悲観論が後退するものの、週末に米雇用統計を控えており、買い一巡後は上値が重くなり、9,000円を挟んだもみあいとなる可能性があります。目先の下値は200日移動平均線(8,940円)が想定されますが、さらに下げても8,800円水準までというところでしょう。9,000円台で値固めして週末の米雇用統計次第でさらに戻りを試すことになると考えられます。米雇用統計で気になるのは、内容が良ければQE3が遠のいたとしてNYダウが下落し、ドルが買われて円安となります。米雇用統計が悪化すればQE3期待からドルが売られてNYダウが上昇するというチグハグな動きになる可能性があります。

(指標)日経平均

先週の予測では、8,900円を試す動きを想定し、EU首脳会議に期待しました。下値は25日移動平均線の8,601円をみておくとよいとしましたが、28日(木)に8,619円まで下げて反発となり、週末の29日(金)は、EU首脳会議で市場の想定を上回る危機対応に向けたニュースがあったことで、△132の9,006円と約1カ月半ぶりに9,000円台を回復して引けました。

今週は、週末の米6月雇用統計までは様子見の展開が続きそうです。200日移動平均線(6月29日時点8,940円)を突破したものの、9,200円水準までには多くの抵抗ラインがあり、上値を押さえることになります。為替の円安基調が下値をサポートすることになりますので、9,000円を挟んだもみあいも想定されます。

7月2日(月)は、寄り付きは△97の9,103円と2カ月ぶりに9,100円台回復となりましたが、買い一巡後は先週末のEU首脳会議の結果がすでに織り込み済みとなって上昇幅を縮め、大引けは▼3の9,003円とマイナスに転じました。

日経平均

(指標)NYダウ

週始めの25日(月)は、欧州債務問題への不安からスペイン・イタリアの国債の金利が上昇したのを嫌気し▼138の12,502ドルとなりましたが、その後は米経済指標の改善から戻りを試す展開となりました。

週末の29日(金)は、EU首脳会議で債務対策の前進を好感して△277の12,880ドルと大幅上昇し、5月8日以来の高値水準で引けました。6月19日のザラ場高値12,898ドルを実体で埋める形となりました。

今週は、週末の6月米雇用統計を控え様子見の展開となりそうです。13,000ドル水準は上値のフシになるところであり、米国の経済指標は予想を下回るものが多い状況では、ここから強気は期待できないところです。米雇用統計が弱ければQE3期待で上昇し、強ければQE3が遠のいたとしてドル売り・円高となって、日経平均にとってはマイナス要因となる可能性もあります。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週は、80円前後のもみあいを想定しました。25日(月)は予想を上回る5月新築住宅販売件数を受けてドルが80.616円まで買われましたが、その後はEU首脳会議を控えて債務問題への懸念からリスク回避の円買いが高まり、28日は79.223円までの円高となりました。しかし、6月1日の77.66円からの上昇ライン(B)にサポートされたところで、EU首脳会議で予想を上回る財務対策が合意され、ユーロが買い戻されて円が売られ、ドルに対しても79.86円となりました。

EU首脳会議で、欧州安定メカニズム(ESM)からスペインの銀行へ直接資本注入できることが合意され、金融不安が後退し、ユーロの買い戻しが進むことになります。そうなると円が売られ、ドルに対しても円は上昇しにくくなります。基本は79.5~80.5円のレンジを中心の動きとなりそうです。

ドル/円