先週は欧州問題の悪化と米経済指標の悪化から円高進行し、8,611円で引ける

先週は、ギリシャ政局の行方を見る局面とし、9,000円を挟んだもみあいが基本と考えました。しかし、ギリシャで連立による組閣が失敗し、来月17日の再選挙が確定してユーロ圏離脱の可能性が高まりました。その結果、ユーロ売りが進行してリスク回避の円買いとなり、対ユーロでの急激な円高進行となりました。一方ドルは、ユーロに対して円とともに買われていましたが、米経済指標の悪化が相次いだことで売られ、79円水準までの円高進行となりました。日経平均は、ギリシャのユーロ圏離脱懸念やスペインの16銀行の格下げを受けてNY株が大幅下落となり、対ドル・ユーロで円高進行したこともあって、先週末5月18日(金)は▼265の8,611円と今年最大の下げ幅となりました。7週連続の下落となっています。

ギリシャの来月17日の再選挙まで上値は限定的

2013年3月期の決算発表も一巡し、増益予想を示す企業も多かったわけですが、円が対ドル・ユーロで上昇傾向となっていることで、株価が戻りを試せない状況となっています。騰落レシオが5月18日(金)時点で68.06%、移動平均乖離率が-7.9%など、テクニカルはほとんど売られ過ぎとなっているものの、ギリシャ情勢に左右されて、来月17日の再選挙が終わるまで本格的な上昇は難しいといえます。為替をみると、ドル/円で80円を切って79円を突破するような動きになっています。78円に接近すれば、日銀による介入警戒感も出てきますので、78~80円のボックス相場がしばらく続く可能性があります。そうなると、日経平均がリバウンドしても上値重く安値圏での上下動となり、下げ過ぎた銘柄の5~10%くらいのリバウンド狙いとなります。

日経平均は、2月14日の日銀による追加の金融緩和をキッカケに、この日の安値8,972円から3月27日の10,255円まで上昇しました。円がこの日の77円台後半から3月15日の84.174円までの急激な円安となったことで、先物主導で主力の輸出関連株が買われ、裁定取引も加わって大幅上昇しました。この上昇の背景には過剰流動性(世界的低金利政策)、欧州不安の一服、米景気回復がありましたが、4月になると、スペイン経済の悪化から欧州債務問題が再燃し、米経済指標に悪化したものが目立つようになってリスク回避の円買いが高まってきました。そして、5月になると、フランス大統領選で現職が敗れ、ギリシャで与党が敗れてユーロ圏離脱の懸念が生じ、米経済指標の悪化が止まらず、再び円高トレンドとなってきました。円安によって10,255円まで上昇してきたのですから、今度は円高で上昇分をすべて吐き出して9,000円割れとなったということです。9,000円を大きく割ってきたのは、ギリシャのユーロ圏離脱問題が加わったためです。

当面の投資スタンスを考える

ギリシャの再選挙・ユーロ圏の離脱懸念が無ければ、年に数回の大チャンスとして買いを積極的に勧めるところですが、今のところ反発しても上値は限定的となる可能性が高いので、利幅が少なくても利益確定できる人でないと売買は難しいかもしれません。リスクを取らなければ、来月17日のギリシャの再選挙前後を待つことになります。ユーロ圏離脱が現実のものとなれば、それまでにある程度織り込んでしまい、選挙で悪材料出尽しとなるか、選挙で急進左派連合が勝ってもユーロ圏離脱は望まないことがわかれば、その前に株価は上昇すると思われます。というのは、緊縮財政を批判する急進左派連合への国民の支持は高まっているものの、70%の国民がユーロ圏離脱を望んでいないという調査結果があり、緊縮財政問題もどこかで折り合ってユーロ圏離脱はしない方向に向かう可能性が高いかもしれません。そうなると、ユーロ圏離脱を懸念して世界の株価は下げてきていますので、どこかで反発することになります。ということは、日経平均の現水準からは、8,300円水準までの下げの可能性があることを前提に好業績の個別株を買っていくべきところと考えられます。好業績銘柄で大きく下げていれば、ここからの下げは大したことはないという気持ちで買っていくところだと思われます。

先週末5月18日(金)は8,588円まで下げ、終値は8,611円と8,600円を守りました。8,600円水準はテクニカル的に堅い下値抵抗ゾーンとなるところです。ユーロ圏離脱問題が解決に向かえば、この水準でもみあったあと反発してもおかしくありませんが、今のところどうなるか全くわかりません。そのために1月16日の8,378円の安値を一応視野に入れての対応となるでしょう。本日はG8でユーロ圏安定の後押しをすることを宣言したことで8,617円の小幅反発で始まり、8,676円まで上昇するものの、上値重く△22の8,633円で引けました。今週は米住宅関連指標や4月耐久財受注の結果によっては戻りを試せても8,600~8,800円のもみあいが想定されます。

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(指標)日経平均

先週は、ギリシャの政局混乱を受けて9,000円を挟んで一進一退の動きが想定されるが、悪材料が出て一段安の8,800円水準あれば、目先反発に転じる可能性があるとしました。結局、ギリシャのユーロ圏離脱懸念が高まり、スペインの16銀行の格下げ報道から、週末18日(金)は▼265の8,611円と今年最大の下げ幅となりました。

先週までで7週連続の下落となって1週間では342円の下落となりました。昨年の大震災時3月15日の終値8,605円まで下げてきました。今年1月16日の8,378円からの上昇の全値押しとすれば、この8,378円は今年の年初来安値でもあり、意識されるところです。いつ反発してもおかしくありませんが、ギリシャの再選挙が来月17日に決定されましたので、ここを通過するまでは欧州債務問題で上値は限定的となる可能性があります。今週は8,600~8,800円のもみあいが想定されます。本日21日(月)は、G8でのユーロ圏安定の後押し宣言を受けて小幅反発で始まり、8,676円まで上昇するものの、上値重く△22の8,633円で引けました。今週は米住宅関連指標待ちとなるでしょう。

日経平均

(指標)NYダウ

先週は、ギリシャの政局混乱と欧州債務問題再燃、さらにJPモルガンの巨額損失問題から、4月10日の12,710ドルを守れるかどうかに注目としました。12,700ドルを切ると、次の下値ポイントは12,500ドルですが、ここを切ると下放れの形となり、一段安を想定することになるとしました。5月14日(月)にギリシャのユーロ圏離脱の可能性を嫌気して▼125の12,695ドルとなって12,700ドルを切り、17日(木)には、スペインの16銀行の格下げから▼156の12,442ドルと12,500ドルを切りました。週末18日(金)は一段安となって12,336ドルまで下落し、大引けは▼73の12,369ドルでした。昨年10月4日の10,404ドルから今年5月1日の13,338ドルまでの上昇幅の1/3押し(12,360ドル)水準まで下げてきました。先週は、ギリシャのユーロ圏離脱懸念とスペインの大手銀行の格下げを受けて6日続落し、1週間で451ドル下落しました。今週も引き続き欧州問題に相場が左右されそうです。目先は12,000ドル水準が下値抵抗ゾーンとなるところでしょう。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の時点では、ギリシャの政局混乱やスペイン・ポルトガルの財政不安からユーロ売りが続くものの、一方で安全資産としてのドル買いも同時に起きているため79~81円のもみあいが続くとしました。

ギリシャでは、連立内閣が成立せず6月の再選挙が確定し、ユーロ売りの流れが続くものの、15日(火)の5月NY連銀製造業景気指数が予想を上回り、5月の住宅指数も改善されたことで、長期金利が上昇してドルが買われ、16日(水)には80.551円まで上昇しました。しかし、17日(木)は米経済指標の悪化とスペインの16銀行の格下げを受け、リスク回避の円高となって円が急騰し、週末18日(金)は790.32円で引けました。ドルは想定したボックス79~81円の上限近辺から下限までの下げとなっています。

今週も欧州問題からリスク回避の円買い圧力が続きそうです。円とドルの両方が安全資産として買われていましたが、米経済指標の悪化でドル売りも進み、円が買われる状況になっています。目先は80円がドルの上限のフシとなっており、78~80円の中で79円突破をうかがっています。

ドル/円