先週は早くも欧州債務問題再燃

先週12日(月)時点の予測では、8・9日のEU首脳会議を終え、当面の債務危機への対応策としては不十分な見方が多いものの一大イベントを通過したことで、当面の株式市場の材料はアメリカ経済の動向に移るとみていました。しかし、12日の日本市場引け後、格付け会社ムーディーズがEU首脳会議の内容を評価せず、来年3月までにEU各国の国債格付け引き下げの可能性を示しました。その後、格付け会社フィッチ、S&Pなどが次々に格下げやユーロ圏経済へのネガティブなコメントを出したことで、欧米株式が下落し、日経平均も連動して下値模索の動きとなりました。

NYダウは1週間で316ドル(▼2.6%)下げて11,866ドルで引けました。その間の14日(水)には▼131の11,823ドルで売転換が出現しました。日経平均は1週間で134円(▼1.57%)下落し、15日(木)に▼141の8,377円となって売転換しました。トピックスは前日14日に売転換となっていましたので、先週の日米主要指標は全て売転換となっています。特に、17日(土)にフィッチがフランスをはじめ欧州7カ国の格付けを引き下げる方向で見直すと発表し、S&Pもユーロ圏17カ国中15カ国の格付けを見直すと表明したこともあり、今週も欧州債務問題が相場の足を引っ張ることになりそうです。

後場に金正日の死去加わり8,300円を切って引ける

今週の日経平均は、欧州債務問題を受けてNYダウがどう動くかによって週の終値で8,300円を守れるかどうかとなります。NYダウは、欧州各国の格下げ懸念がある一方で米景気指標は明るさを増しており、綱引き相場となるかもしれません。格下げは、国債の金利が上がって資金調達コストのアップに繋がり、ますます財政の悪化を招く悪循環となり、ユーロ圏全体の経済の縮小に結びついていきます。この格下げが続くと、欧米株式が大きな下げとなり、ユーロ圏の根本的な対策が出ざるを得ない状況が生まれることになります。世界同時株安となって日本株もつれ安して下げ、そこから本格的な戻りに入っていくことが1つのシナリオとして考えられます。

日経平均の下値はどうなるのかとなりますが、このまま世界同時株安となって下げれば7,600~7,800円、一旦8,300~8,500円でもみあいが続いた後下落すれば下げは深くなり、7,300~7,000円というシナリオが考えられます。

本日19日(月)は、先週末17日(土)に格付け会社がユーロ圏各国を格下げする可能性を表明したことやユーロ経済に対するネガティブなコメントから先行き不透明感が高まり、さらに、対ユーロでの円高基調が嫌気されて▼38の8,363円で寄り付くと下げ幅を拡大し、後場には、北朝鮮の金正日の死去が報じられたことで一段安となって8,272円まで下げました。ここから買い戻しが入るものの、終値は▼105の8,296円と8,300円を切って引けました。金正日の死去は、絶対君主を失っただけに、今後の軍部のコントロールを誰が出来るのかということでカントリーリスクとして捉えられ、アジア株が大幅下落して有事のドル買いとなったといえます。不透明な要素がまた1つ加わってきたといえます(ただし、短期的な下落要因の可能性)。

こうなると、日経平均の8,000円割れを待つスタンスが現実的なものとなってきました。8,600円水準まで戻れば、大きな空売りのチャンスとなってきますので、わずかな利食いを狙う買いよりも、戻れば空売り、下げれば大きな転換点となる買チャンスと考えるところです。何度もこういうコメントを述べていますが、下がっても中途半端な位置からの上昇で上値は限定的という状況が繰り返されてきました。つまり、安値圏のもみあいに終始しているわけで、大きく戻るにはやはり大きく下落するのを待つ以外に方法はないと思われます。

(指標)日経平均

先週は、8・9日のEU首脳会議の内容が評価されれば、NYダウが上昇して戻りを試すことになりますが、下げても下値は限定的で8,300円台としました。結局、週明け12月12日(月)に、格付け会社ムーディーズがEU首脳会議の内容を評価せず、来年3月までにEU各国の国債格付け引き下げの可能性を示したため、早くも欧州債務問題が再燃し、欧米株式は下落となって12月14日(水)にはNYダウに売転換が出現しました。

日経平均は、前週末のNYダウが大幅反発したことを受けて12月12日(月)は△117の8,653円と反発したものの、その後、欧州債務問題の再燃から12月13日(火)は▼101の8,552円、12月14日(水)は▼33の8,519円、そして、12月15日(木)は▼141の8,377円となって、前日のNYダウ・トピックスに続いて売転換が出現しました。週末12月16日(金)は、前日のNYダウが予想を上回る経済指標を好感して反発したことで、日経平均も△24の8,401円と小反発で引けました。この16日にフィッチがイタリアやスペインの国債を格下げする方向で検討すると発表したことで、今週は円高・ユーロ安が進み、日経平均は下値不安がくすぶる展開となりそうです。本日は、欧州各国の格下げ懸念に加え、北朝鮮の金正日の死去を受けてリスク回避からアジア株が大幅下落し、日経平均も8,300円を割り、引けは▼105の8,296円となりました。目先的には8,300~8,500円台のもみあいの中で、上値を試すより下値を試す可能性が高く、8,300円を切ると11月25日の8,135円が下値ポイントとなります。しかし、このまま大きく下がるにはまだ早過ぎると思われます。12月特有のモチつき相場の可能性が高いといえます。

日経平均

(指標)NYダウ

先週12月12日(月)の分析では、12月9日(金)のNYダウが、EU首脳会議で欧州財政統合強化を好感して△186の12,184ドルと急反発したものの、前日の高値を抜けずに終わったことで、12月8日の11,966ドルを下に切れば短期の売転換出現となるとしました。結局、週明け12月12日(月)は、ムーディーズがEU首脳会議の内容を評価せず、EU27カ国の国債格付けを引き下げる可能性があることを示したことで、欧米株式が急反落し、早くも欧州債務問題が再燃しました。NYダウは、12月12日は▼162の12,021ドル、12月13日(火)は▼66の11,954ドル、そして、12月14日(水)はフランス国債の格下げ観測から▼131の11,823ドルとなり、12月8日の11,966ドルを下に切って売転換出現となりました。12月15日(木)は△45の11,868ドルと反発したものの、週末は▼2の11,866ドルで引けました。

今週は、引き続き欧州各国の格下げ懸念から欧州情勢に左右される可能性が高いものの、米景気指標は好調な数字が多く、経済回復への期待との綱引きになりそうです。11,600~12,000ドルのレンジの中でもみあいとなりそうです。12,000ドルからは上値重く、どちらかというと戻り売りの形といえます。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、年末を控えてドル需要が高まるものの、円とドルの関係は綱引き状態で小動きの可能性が高いとし、77~78.3円のレンジを想定しました。12月12日(月)の77.542円を安値にジリ高となり、12月14日(水)は、イタリア国債入札で利回りがユーロ導入以来の高値となってユーロ売りが加速し、ドル高となって円に対しても78.155円まで上昇しました。その後は、77円台後半での値動きが続き、12月16日(金)は77.830円で引けました。

チャートをみると、77.5~78.3円の狭いレンジの中の動きとなっています。このレンジの動きを上に抜けても78.5円、下に抜けても77円という動きが想定され、円/ドルに関しては値動きが今のところ限定されています。円はユーロに対して100円割れも想定されていますが、ユーロの下落が進むと高金利通貨の豪ドルなどのリスク資産から資金を引き上げる動きが強まりやすくなります。こうした通貨に対してドルと円は共に上昇しやすいため、円とドルの取引では綱引き状態となって値動きが限定されることになります。

ドル/円