先週は雇用統計を前にアメリカの景気回復後退懸念から大幅下落

8月1日(月)時点の予測では、アメリカの債務問題合意のニュースから、日経平均は△131の9,965円で引けたものの上値は重く、雇用統計までは1万円を挟んだもみあいを想定しました。しかし、この日の引け後、アメリカ市場で、NYダウが債務問題合意を受けて△177の12,320ドルまで反発したものの、7月ISM製造業景況指数の悪化を受けて▼164の11,978ドルまで急反落し、終値は▼10の12,132ドルとなりました。ここからはアメリカの景気回復の後退問題に焦点が当たり、8月2日(火)は6月個人消費支出の2009年3月以来の減少を受けて、NYダウは▼265の11,866ドルと2008年以来の8日続落を記録しました。8月3日(水)は△29の11,896ドルと小反発するものの、8月4日(木)は、トリシエECB総裁が欧州経済の下振れ懸念を示したことで、世界的な景気回復ペースが失速しているとの見方から、NYダウは▼512の11,383ドルと2年8カ月ぶりの大幅下落となりました。

日経平均は、8月1日(月)に海外で為替が1ドル=76.285円と3月17日の史上最高値に迫る円高となったことを受け、8月2日(火)は▼120の9,844円、8月3日(水)はNYダウの下落を受けて▼207の9,637円となりました。そこで、8月3日のメッセージで、アメリカの景気回復の後退がハッキリしてきたことから日米ともに金融緩和が期待される状況になってきており、日本では8月4~5日の日銀金融政策決定会合で何らかの表明があるかどうかに注目としました。この時点では、日経平均は、9,500円が当面の下値ですが、NYダウがさらに下落した場合は9,300円をみておくとよいともしました。

8月4日(木)は、早速、政府による単独の円売り介入が行われ、1ドル=76円台から一時80円台前半までの円安となりました。しかし、株式市場の反応は薄く、一時△131の9,768円まで上昇するものの、上げ幅を縮小して△22の9,659円で引けました。そして、引け後の欧米市場で株式が大幅安となり、特に、NYダウが▼512の11383ドルと3月16日の11555ドルを大きく切って上昇トレンドが崩れたことで、8月5日(金)の日経平均は9,264円まで下落して、終値は▼359の9,299円と4カ月ぶりの安値となりました。

世界同時株安と日経平均の下げ止まりは…S&Pによる米国債格下げの影響を見極めるところ

今回の8月4日(木)の世界同時株安は、アメリカの経済指標の悪化が相次いで景気回復後退が鮮明になりつつある時に、トリシエECB総裁が欧州景気の下ブレ発言をしたことで、世界的な景気回復に水を差す形となったということです。新興国も、インフレを抑えるための金利引き上げによって製造業の景況判断指数が悪化し、景気悪化懸念が生じてきています。NYダウの▼512の11,383ドルという2年8カ月ぶりの大きな下げは、この日にアメリカでの悪材料はほとんど無く、相次ぐ経済指標の悪化で景気の先行き不安があったところに、トリシエ総裁の発言による欧州景気の下ブレ懸念が不安を倍増させ、3月16日の安値11,555ドルを切ったところで投売り・見切り売りが出て11,383ドルまでの暴落になったとも考えられます。しかし、この暴落によって、NYダウのチャートが5月2日の12,876ドル、7月21日の12,794ドルをダブル天井とする下放れの形となりましたので、5月2日の12,876ドルは中期的な天井となる可能性があります。

日経平均をみると、出来高が25億株と少なく、セリングクライマックスとはなっていません。6月17日の安値9,318円を切って9,264円まで下落し、終値は▼359の9,299円と下値抵抗ラインである9,300円水準で止まっています。ここには、柴田罫線の9,351円、ボリンジャーバンドの9,319円、大震災後の戻りを試したあとの安値6月17日の9,318円、1/2押しの9,217円があります。その下は、9,000円の心理的抵抗ライン、8,800円、8,605円(3月15日の終値)、8,227円(3月15日のザラ場安値)となります。

欧米の下げ止まりは、欧米が株式市場対策にどう動くかとなります。先週末8月5日(金)のアメリカの雇用統計が予想を上回り、NYダウは、一時△171の11,555ドルまで上昇したものの、S&Pによる米国債の格下げの噂から一転▼244の11,139ドルまで下落し、その後、イタリアが緊縮財政を前倒しして実施するとしたことで欧州債務懸念が後退し、△60の11,444ドルと反発して引けました。しかし、引け後に、S&Pが米国債の長期格付けを1段階引き下げ、また、見通しをネガティブとしたことで、さらに、世界同時株安が進行しそうな状況となりました。

本日の日経平均は、米国債の格下げを嫌気して▼130の9,169円で寄り付き、売り一巡後、為替が78円台で落ち着いていたことで、前引けは▼121の9,178円でした。しかし、後場になると、アジア株式が急落し、為替も78円を突破する円高となってきたことで、一時▼242の9,057円となり、終値は▼202の9,097円でした。あとは、本日引け後のアメリカ株式の動きと、FOMCの対応がどうなるのかに注目となります。先週までの想定に入っていなかったNYダウの下放れと、予想外のこのタイミングでの米国債の格下げ発表で、世界同時株安が進行する形となりました。8月4日(木)に、最大で9,300円の下げを想定して5銘柄の短期リバウンド銘柄を提供し、何らかの悪材料で世界同時株安の状況が生じた時のために損切りポイントを設定しました。しかし、翌日に世界同時株安が起こって日経平均は▼359の9,299円となり、週明けの本日も▼202の9,097円と続落し、損切りポイント前後まで下げてきました。リスクを取れる人は、この損切りポイントから下がリバウンド狙いの買いとなる可能性があります。大きな調整待ちの方は、タイミングさえ合えば、再度推奨し直しますのでお待ち下さい。

(指標)日経平均

先週は、アメリカの債務問題合意のニュースを受けて、日経平均は△131の9,965円と反発するものの、注目がアメリカ経済の景気指標悪化から景気回復の後退に移り、アメリカ株安と同時に為替のドル売り・円高が進行したことで、8月2日(火)は▼120の9,844円、8月3日(水)は▼207の9,637円の下落となりました。8月4日(木)は、政府・日銀の円売り単独介入から1ドル=80円を試す場面があったものの、9,768円をつけたあと上げ幅を縮小して△22の9,659円でした。そして、この日のアメリカ市場では、世界的な景気回復ペースが失速したことで、NYダウが▼512の11,383ドルと急落して3月16日の安値を切って下放れとなりました。これを受けて、8月5日(金)の日経平均も▼359の9,299円となり、6月17日の安値9,318円を切りました。

先週末のアメリカ市場で、引け後にS&Pによる米国債の格下げが発表されたことで、本日のアジア市場は急落となりました。日経平均は、後場一段安となって▼202の9,097円で引けました。9,000円水準を切れると、次の下値ポイントは8,800円水準と考えられます。

日経平均

(指標)NYダウ

先週8月1日(月)は、債務問題の合意で上昇スタートとなるものの、7月ISM製造業景況指数が2009年7月以来の悪化となったことで一転▼10の12,132ドルとなりました。翌日8月2日(火)は、6月個人消費支出が2009年3月以来の減少となったことで▼265の11,866ドルの安値引けと2008年以来の8日続落し、8月3日(水)は、7月ISM非製造業景況指数が予想を下回ったことで▼166の11,700ドルまで下落するものの、追加の金融緩和期待から△29の11,896ドルと9日ぶりに小反発しました。

しかし、8月4日(木)は、トリシエECB総裁が欧州経済について慎重な見方をしたことで、アメリカの景気回復の鈍化と合わせて、世界的な景気回復ペースが失速したとして▼512の11,383ドルの急落となりました。2008年12月以来2年8カ月ぶりの大幅下落となります。3月16日の11,555ドルを終値で切ったことで5月2日の12,876ドルと7月21日の12,794ドルのダブル天井が確定したことになり、当面は戻り相場となっていきます。また、2009年3月9日の6,440円の安値からの上昇トレンド(A)も切ってきており、早めに11,600ドル台を回復しないと調整が長引くことになると考えられます。

そして、先週末、注目の雇用統計が予想を上回ったことで、NYダウは一時△171の11,555ドルと3月16日の安値11,555ドルまで上昇したものの、S&Pによる米国債の格下げから一転▼244の11,139ドルまで急落しました。しかし、欧州債務懸念が後退して△60の11,444ドルと反発しました。一方、ナスダックは▼23の2532Pの下落でした。そして、引け後に、S&Pが米国債の格付けを引き下げましたので、今週のアメリカ株式がどう反応するのかに注目となります。日経平均は、この格下げを嫌気して、本日は▼202の9,097円で終わりました。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、アメリカの債務問題が決着すれば、ドルの買い戻しとなって76~79円の中で荒い動きとなることを想定しました。値動きとしては、8月1日(月)に76.285円まであって、8月4日(木)には、日本の円高阻止介入で80.216円まであって引け値では78.859円と荒い動きとなりました。

内容的には、想定と違って8月1日(月)にアメリカの債務問題が決着したものの、ドルの買い戻しとはならず、経済指標の悪化からドル売りとなって3月17日の史上最高値76.25円に接近する76.285円までの円高となりました。8月1日~3日(水)までは77円を挟んだ円高基調となっていましたが、8月4日(木)に日本政府が単独の為替介入を行って80.216円までの円安となるものの、ドルの上値は重く78.859円で引けました。週末8月5日(金)にも介入を行って79.414円までの円安となるものの、欧米の当局者が介入に否定的見方を示したことで、介入効果は限定的となって78.498円で引けました。あとは、日本政府がどこまで介入を続けるのかということと、アメリカのFOMCの金融政策を待つということになります。80円水準を突破するには、日本の単独介入では難しく、当面は77~80円の間のもみあいが続きそうです。3月17日の76.25円、8月1日の76.285円がダブル底確定となるには7月7日の高値81.395円を上に抜かなければなりませんので、輸出企業は80円水準以下に為替レートを設定し直す必要が出てきそうです。

ドル/円