中途半端な戻りを試すものの米経済指標の悪化ですぐに下落

先週5月30日の予測では、現時点では中途半端な戻りになっており、買戻しによるリバウンドはあっても上値を追い上がるエネルギーはなく、上値ポイントは最大でも5月SQ清算値9,758円とし、下値ポイントは今のところ9,405円だとしました。特に、週後半にはアメリカの重要な経済指標の発表を控えており、様子見となることを想定しました。 結局、6月1日に9,720円まで上昇してSQ清算値9,758円に接近するものの、週後半は、米経済指標の悪化が相次ぎ、6月2日は▼164の9,555円、週末6月3日は▼62の9,492円と9,500円を割れて引けました。さらに、この日の引け後のアメリカ市場で、注目の5月雇用統計の大幅悪化から、NYダウは▼97の12151ドルで引け、シカゴ日経225先物は9,455円となっていました。

先週の日経平均の特徴的な動きとして、5月31日の相場はユーロに対して円安基調となり、ムーディーズの日本国債の格下げ見通しから対ドルでも81円台の円安となったことで△188の9,693円の大幅高となりました。この日は出来高も23億株弱に膨れましたので目先底打ちとの見方も出ていたようですが、大幅上昇の根拠がないため疑問の声が多数聞かれました。国債の格下げは本来なら日本売りですので、円安になったとしても株価にとっては良い材料とは限らないともいえます。 結局、月末特有の「ドレッシング買い」やMSCIの銘柄の定期入替に絡んだ先回りのカバー、CTAC(商品投資顧問)経由とみられる先物主導での大量買いや、ギリシャの債務問題を巡っての追加支援の進展期待などによる大幅上昇ということでしょう。それを示すように、6月1日は△25の9,719円、6月2日はNYダウの急落を受けて▼164の9,555円、そして、週末は▼62の9,492円と9,500円を割って引けました。

6月の需給関係には注意!6月末のアメリカのQE2終了を見越して買い減少も

1 外国人30週ぶりに売り越し

6月2日発表の5月第4週の投資主体別売買動向によると、海外投資家が30週ぶりに日本株を71億円売り越したということです。これで、昨年11月から続いていた買い越しの連続記録は29週で途切れました。この背景は、5月の第4週はアメリカ景気や欧州財政への不安が高まり、リスク資産である株式への投資を控える動きが世界的に広まったと説明されています。むしろ、これまでの買い越しは「アメリカをはじめとする先進国の金融緩和で増えた投資マネーが出遅れ感のある日本株に向かっていた面が強い」という見方もありますので、それであれば、アメリカのQE2の終了を今月末に控えて買い手控えになってきている可能性があります。そうなると、今の日本株式市場の出来高が低水準である状況では、今後の悪材料に耐えられず下値を試す局面が出てくる可能性があります。

2 アメリカ経済の景気回復の遅れから、NYダウは大幅調整

6月1日のアメリカ市場は、NYダウが▼279の12290ドルと1年ぶりの下げ幅となり、ナスダックは▼66の2769Pの大幅下落となりました。これは、5月ADP雇用統計で非農業部門雇用者数が予想の17万5,000人を大きく下回る前月比3万8,000人となり、さらに、5月ISM製造業景気指数が前月の60.4から53.5と2009年9月以来の低水準となり、雇用の遅れと製造業の停滞による景気減速感が強まったことになります。そして、週末6月3日の注目の雇用統計でも非農業部門雇用者数の増加幅が市場予想を大きく下回り、失業率も悪化して、一時▼144までさげ、終値は▼97の12151ドルとなりました。市場では慎重なムードが強まっており、上値を追う動きは出にくい状況といえます。そうなると、日本株式はNYダウのサポート要因が無くなることになり、いつまで9,405円を守っていられるかということになります。

3 国内では不透明な政局

菅首相の「退陣」を巡る混乱が続いており、政策面での遅れが懸念されています。政治の混乱は外国人投資家が最も嫌うところですので、買い手控えが続くことになります。日本株の上昇の可能性は、退陣の期限が出来るだけ近いところに決まり、大連立がスムーズに進むようなことになれば、復興需要を期待しての日本株買いが始まることも考えられますが、非常に難しいと思われます。

今週末6月10日がメジャーSQで、NYダウの動き次第ではさらに一段安となって買チャンスも

私は、中期投資(3ヶ月を基本とする)の視点からのアドバイスで、ゴールデンウィーク前は、4月いっぱいで出来るだけキャッシュ化を優先し、大きな下げのチャンスを待つとしました。欧米株式は、日本がゴールデンウィーク中の5月2日にピークをつけ、その後の下落で安値を更新する動きとなっています。柴田罫線では、NYダウが5月2日の12876ドルをピークとし、5月10日に12781ドルと戻りを入れ、5月17日に12479ドルで売転換となったことで、当面は上下動しながら大きな調整になっていく可能性を述べていましたが、先週は、6月1日に▼279の12290ドルと1年ぶりの下げ幅となり、週末6月3日は12104ドルまで下げて、終値は▼97の12151ドルの大幅調整となってきました。日本株式は、トピックスが5月20日に827Pで売転換、日経平均が5月25日に9,422円で売転換となりました。しかし、日経平均に関しては、下げ局面では日銀によるETF買いが入り、9,400円水準ではPBRが下値目処として意識されやすい1倍近辺まで下がっていることで、押し目買いが入って下げ止まっていました。しかし、本日は9,400円を守ることができませんでした。

本日は、先週末のアメリカ株安を受けて▼24の9,467円で始まり、9,400円近辺まで下がると日銀のETF買いへの期待から下げ幅を縮小するものの、東京電力がストップ安水準まで売り込まれ、9,400円を切ると一段安となって9,359円まで売られ、大引けは▼111の9,380円となりました。今週はメジャーSQのため、週末に向かって9,405円を切ってくることを想定していましたが、本日早くも9,400円割れとなりました。これで、これまで大きな調整を待てとした9,000円水準が1つの買い場となると考えられます。当然、NYダウ次第で行き過ぎもあれば9,000円水準まで下がらないこともあるでしょうから、9,300円水準を割ったところから好業績で大きく下げている個別株は少しずつ買ってみることも考えられます。

(指標)日経平均

先週は、日経平均の上値重く、9405円を守れるかに注目としました。特に、週後半にアメリカの重要な経済指標の発表があるため、相場も様子見になることが想定されました。

5月31日の日経平均は、前日はアメリカ市場が休場だったため材料不足の中、円がユーロ・ドルに対して円安方向となったことや、グローベックス先物が大幅高となっていたこと、さらに、月末特有のドレッシング買いが入って△188の9,693円の大幅高となりました。6月1日はアメリカ株高を受けるものの、終値で△25の9,719円までしか上昇できませんでした。そして、引け後のNYダウが5月のADP雇用統計の悪化から▼279の12290ドルと1年ぶりの下げ幅となったことで、6月2日の日経平均は▼164の9,555円となり、週末6月3日も▼62の9,492円となって9,500円を割って引けました。

週末のNYダウは、雇用統計の悪化から▼97の12151ドルとなっていました。これを受けて、本日の日経平均は▼111の9,380円となって、一貫して注目としていた4月19日の9,405円を終値で切って引けました。9,400~9,800円のボックス圏を下に切ると同時に4月19日の9,405円、5月24日の9,406円という日足でのダブル底も切った形となっています。次の下値ポイントは9,300円水準、その下は9100円水準と考えられます。

日経平均

(指標)NYダウ

5月17日に、前日のナスダックの売転換に続き、NYダウでも12479ドルで売転換が出現し、5月23日のチャート分析で、6月いっぱいでQE2(量的緩和策第2弾)は終わるものの、アメリカの景気回復状況によっては緩和策が継続される見方もあって強弱感が対立し、大きな上下動が続くかもしれないが、下への調整の流れが出てきている感じがするとしました。

その後は、ギリシャの財政問題から欧州の財政不安が再燃し、また、原油価格の上下動、アメリカの経済指標がマチマチな結果だったことなどから、NYダウは大きな上下動を繰り返しながら下方へ向かう展開となっています。チャートからは、5月19日の12633ドルを上に抜くと再度高値挑戦となって二番天井も考えられるところでしたが、先週6月1日はADP雇用統計とISM製造業景気指数が大きく予想を下回り、ムーディーズがギリシャの格下げを発表したこともあって▼279の12290ドルと1年ぶりの下げ幅を記録しました。さらに、週末6月3日は、注目の雇用統計で5月非農業部門雇用者数や5月失業率が悪化し、一時▼144の12104ドルまで下落して、終値は▼97の12151ドルとなり、これで昨年8月27日の9936ドルからの上昇トレンド(B)を下に切りました。次の下値ポイントは1ヶ月以上もみあったボックスの下限である3月1日の12058ドル、その下は心理的フシの12000ドルとなります。当面特段の材料が出なければ、下値は12000ドル、上値は12500ドルの中での動きを想定します。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、ドルが80.782円を引値で切ると80.352円を試す可能性があるとしました。5月31日にムーディーズが日本国債の格下げ方針を示したことから円が売られ、一時81.765円までドルが上昇し、引値は81.512円となりました。しかし、6月1日はアメリカで発表された「5月ADP雇用統計」が予想外の大幅悪化となり、5月ISM製造業景況指数も予想を下回ったことで80.675円までドルが売られました。週末6月3日には、注目の雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を大きく下回り、失業率も9.1%(予想8.9%)と悪化したことで、ドルは発表直後に80.045円と5月5日以来の安値を更新し、80.261円で引けました。

結局、想定した80.352円を下に切り、5月9日の80.183円も切って80.045円の安値をつけ、80.261円で引けて売転換が出現しました。チャートの下げ方としては、5月5日のザラ場安値79.561円に対するダブル底の形を作っての反発となるかどうかというところです。79~81円前後の動きが想定されます。ユーロはECBでの利上げが意識され、ドルがユーロで下落すると、対円でもドルは下落となって円高圧力が高まると考えられます。

ドル/円