米大統領選に揺れるメキシコペソ

米国の大統領選挙が大詰めを迎えています。10月27日までは、共和党トランプ氏の女性蔑視発言が影響し、民主党クリントン氏の支持率がリードを広げていました。しかし、10月28日にFBI(連邦捜査局)がクリントン氏のメール問題の再捜査を再開すると発表したことからトランプ氏が猛追。ABCテレビが30日に発表した世論調査によると、支持率はクリントン氏が49%、トランプ氏は46%で両氏の差は3ポイントまで縮小し、11月8日の投開票日を目前に最後までわからない展開となっています。

このような状況下で揺れている通貨がメキシコペソです。メキシコペソは、昨年来の原油価格低迷や米利上げ観測に加え、トランプ氏がメキシコ経済にとって重要な役割を果たしている北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しや「米国とメキシコの国境に壁を建設する」を公言していることなどが嫌気され、年初から9月末にかけて米ドルに対して約13%、円に対して約27%下落し、最安値圏で推移していました。しかし、10月に入り、トランプ氏の不適切発言が取り沙汰されたことから、クリントン氏有利との思惑が広がり、メキシコペソは反発に転じました。そして、足元ではFBIがクリントン氏のメール問題を再捜査するという発表に反応し、再び下落に転じており、変動の大きい展開となっています。

図:過去1年のメキシコペソ/円チャート

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一方、メキシコ中央銀行はメキシコペソ安が続くなかで断続的に利上げを行ってきました。また、今年2月には為替介入を裁量で行える運営方式に変更し、通貨安をけん制する姿勢を見せており、一層のメキシコペソ安が進む局面では為替介入や利上げなどの対応により通貨防衛を図る可能性が高いと予想されます。 なお、為替市場はトランプ氏が大統領になった場合のリスクをある程度織り込んでメキシコペソ安が進んできたと推測され、クリントン氏が大統領選で勝利した場合にはメキシコペソが反発する可能性が見込まれます。

大統領選挙は最後までわからない展開になっていますが、メキシコペソの反発に期待するという投資機会に注目が集まっています。そこで今回はメキシコペソ建ての債券投信をいくつかご紹介しましょう。

シンプルにメキシコペソ建て債券に投資するファンド3選

運用コスト重視、金利上昇を予想するならば

国際 メキシコ・ペソ債券オープン(毎月決算型)

メキシコペソ建て国債に投資するファンドです。投資する債券の年限は最長10年程度とし、各残存期間の投資金額が同額程度となるような運用(ラダー運用)を目指すことから、アクティブな投資判断を抑えた運用が特徴です。販売手数料がノーロードなことに加えて、運用管理費用も0.648%(税込)と、メキシコペソ建て債券に投資するファンドのなかでは最も安い運用コストが魅力です。

2016年9月末時点のポートフォリオの平均最終利回りは5.4%、類似投信と比べて残存期間の短い債券への投資比率が高めなことから、利回りはやや抑えめで、金利の変化に伴う債券価格の変動も抑えられる傾向にあります。

運用実績重視、低金利環境を予想するならば

新光メキシコ・ペソ債券ファンド(毎月決算型)

メキシコペソ建ての国債および国際機関債に投資するファンドです。ファンダメンタル分析やマクロ経済分析を行い、アクティブな投資判断を行います。ここ数年、運用チームは低金利の環境が継続するなかで、相対的に満期が長く利回りが高い債券に投資を行うことで、類似投信と比べて良好な成績を残してきました。

2016年9月末時点のポートフォリオの平均最終利回りは6.03%、金利の変化に伴う債券価格の変動は高い傾向にあります。今後の見通しについては、米国の利上げペースが緩やかになるとの見立てから、現在の運用戦略を維持する方針です。

分配金不要、複利運用重視ならば

メキシコ債券オープン(資産成長型)

メキシコペソ建ての国債、国際機関債などに投資するファンドです。毎月分配型が多いメキシコペソ建て投信のなかで、年2回決算の貴重なファンドです。分配金の払い出しを抑えることで、複利運用の効果が期待できます。

2016年9月末時点のポートフォリオの平均最終利回りは5.9%、金利の変化に伴う債券価格の変動はやや高い傾向にあります。値上がり時に払い出された普通分配金に税金が課されることを考慮すると、資産成長型を選んだほうが効率の良い運用成果が期待できるでしょう。

リスクを分散しながらメキシコペソの反発を期待するファンド3選

米ドル建ての新興国債券に分散投資

日興ピムコ・ハイインカム・ソブリン・ファンド毎月分配型(メキシコペソコース)

米ドル建ての新興諸国のソブリン債に幅広く分散投資するファンドです。外貨建て資産については米ドル売り/メキシコペソ買いの為替取引を行うことで、メキシコペソの為替リスクを負います。メキシコだけではなく様々な国のソブリン債に投資するので、カントリーリスクの分散が期待できます。 2016年9月末時点のポートフォリオの平均最終利回りは5.29%。米ドル売り/メキシコペソ買いの為替取引により、4%程度のプレミアムも期待できます。なお、米ドル建ての債券に投資するため、米国の市場金利の影響を受けます。

米国の高利回り社債に分散投資

米国ハイ・イールド債オープン(通貨選択型)メキシコ・ペソコース(毎月決算型)

米ドル建てのハイイールド(低格付け高金利)債券に投資するファンドです。外貨建て資産については米ドル売り/メキシコペソ買いの為替取引を行うことで、メキシコペソの為替リスクを負います。主な投資対象は米国企業が発行する社債であることから、発行体の信用リスクに注意しましょう。

2016年9月末時点のポートフォリオの平均最終利回りは7.52%。米ドル売り/メキシコペソ買いの為替取引により、4%程度のプレミアムも期待できます。

世界の金融機関が発行する劣後債に分散投資

ハイブリッド証券ファンドメキシコペソコース

世界の金融機関が発行する期限付劣後債や優先証券に投資するファンドです。外貨建て資産については当該通貨売り/メキシコペソ買いの為替取引を行うことで、メキシコペソの為替リスクを負います。世界の金融機関が発行する証券に投資することから、金融機関の財務状況が悪化した場合には、利払いの繰り延べなどが原因で債券価格が大きく動く可能性があることを覚えておきましょう。

2016年9月末時点のポートフォリオの平均最終利回りは3.2%。当該通貨売り/メキシコペソ買いの為替取引により、4%程度のプレミアムも期待できます。

最後に…

資産運用にのぞむ姿勢を運用期間で分けると、短期的な値動きを狙いにいく投資と長期的な成長を捉える投資があります。どちらが正しい、優れているというものではありませんが、一つ言えることは、資産運用の王道は長期国際分散投資ということです。魅力的な投資機会があるからといって、一つの投資アイデアに集中投資することはリスクの高い運用方法といえます。ポートフォリオ運用を語るときに、「コアサテライト」といった表現が使われることがありますが、今回の投資機会はサテライト的な位置づけとして考えるのが良いと思われます。

短期的な投資機会を狙いにいく投資は、その思惑が外れれば大きな損失を被ることもあります。自分が許容できるリスクを考慮し、投資金額や他の運用資産とのバランスを考えて投資することを忘れないでおきましょう。