先週は、想定外に早い政府・日銀の円安介入で急反発

先週は、9月14日(火)の民主党の代表選の結果によっては大きな動きがでることが予想されました。市場の見方は菅首相が選ばれれば円高・株安へ、小沢氏が選ばれれば円安・株高へというものでした。9月14日(火)の代表選では菅首相が選ばれたことで為替は一時83円を切る動きとなりましたが日経平均はアメリカ株式の堅調さに支えられ▲22円の9,299円と小幅反落でした。9月15日(水)の前場は為替は海外でも82円台をつけた流れを引き継いで82.86円と高値更新し、日経平均も9,200円を割る動きとなってきたところで午前10:30過ぎに2004年以来6年ぶりの円安介入を実施しました。これによって為替は82円台から一気に84円台後半の円安進行となり日経平均も△217円の9,516円と1カ月ぶりの9,500円台となりました。菅首相が選ばれれば円高が進行しても組閣が行われるまでは介入はないだろうという見方が大半を占めていた(そのためドルを売り、日経先物を売っていた)ためサプライズとなってショートカバー(踏み上げ)がはいり急反発となりました。9月16日(木)は▲7円の9,509円と一服したあと9月17日(金)は円はドルに対して85円台後半の円安水準を維持しユーロに対してはさらに112円台の円安進行となったことで輸出関連株が買われて△116円の9,626円で引けました。

「もうはまだなり、まだはもうなり」の格言を考える

日経平均は4月5日に11,408円と今年のピークをつけて以来、5月の連休中にNYダウが一時1,000ドル近い暴落となり、連休明後日経平均も大幅下落となって5月27日に9,395円の安値をつけ、6月21日の10,251円の戻り高値をつけて以来多少戻りを入れるものの下落が続き、9月1日に8,796円の年初来安値をつけました。ここからの反発となってもう底を打っただろうという見方や、いやまだ底は打っていないという見方があり、個人投資家はどこで買えばいいのかわからず、株式投資への魅力が無くなって株式市場から去り、薄商いが続いています。

『もうはまだなり、まだはもうなり』という有名な相場格言がありますが、現時点では「もう底だろう」という見方が多いので、何かキッカケで大きく反発すると「もう底を打った」という市場関係者のコメントが出てくることになります。「まだ」と「もう」に一線をどこで引くのかは難しいところですが、現在の日本市場をみると出来高が増加するのかどうか、円安介入の効果がどこまで続くのか、NYダウの堅調さが続くのかということが判断材料になります。出来高の推移でみたり、株価や日柄でみたり、色々な尺度で測ることになります。

経験的には、上昇相場では全体が強気になっているため、まだまだ高いと考え、証券会社も次々と上値目標を上げていきます。そのため、個人投資家はまだ買いで大丈夫と安心しきっているところに徐々に「もう」が忍び寄っていて、ある時突然急落となり「もう」相場が終わったのかとなります。逆に、随分下げてきた相場に対して、「もう」買ってもいいだろうと多くの人が思っている間は「まだまだ」の場合が多く、誰もが悲観的になって「まだまだ」下げると思ったときに、突然上昇に転じることになります。相場の世界では「まだ」とか「もう」は投資家心理の問題だけに、一般常識的な発想では難しいといえます。ということは、投資で勝つためには一般投資家と逆のことを考え行動しなければならないということです。誰もが底値はまだまだと考えるとき、さらに一段安となって、もうダメだと投げが出る時に転機が訪れます。

今回は、菅首相の代表選での勝利で市場の予想通り円高・株安となりかけたものの、9月17日の為替の円安介入で82円台→84円台後半へ円安が進み、日経平均も△217円の9,516円の大幅高となりました。さらに、欧米でも介入したことで85円台となって日経平均はしっかりした動きとなっています。これは「まだまだ」という続悲観の中の上昇ではなく、「もう底を打つだろう」という中での反発(それは、出来高をみてわかるように、高値で買った人が上昇することを期待して保有している中での反発を意味します)ですので、上昇しても戻り売りとなって、本格上昇に結びつかない可能性が高いといえます。

そうはいってもチャートの形からは、上放れの形であり、欧米先進国の株価の水準から考えると、出遅れ修正で1万円近くまで買われてもおかしくないと思われます。しかし、これから日本の単独介入に対して外国から批判が出てくる(9月15日アメリカの下院の有力議員が不快感を示す)可能性があり、またNYダウの戻り(もみあい)がいつまで続くのかということがあります。以上を考えると、買える相場ではなく、買っていた銘柄があれば利益確定、保有株の戻りあればキャッシュ化して、最終的な下げに備えるということになります。「もう底を打っただろう」ではなく、「まだまだ」というところです。

日経平均の戻りはどこまでか

日本政府がどこまで介入を続けることができるかが日経平均の戻りの程度と関係してきますが、ドル月円のチャートを見ると介入を続けても86円15銭ぐらいのところに大きなフシがあります。この86円台を超えて90円を試す動きくらいにならないと日本の正常な経済成長は期待できません。なぜならば、多くの主力輸出企業はレートを1ドル=90円くらいに設定しているからです。この90円くらいまで円安介入することは、日本単独ですので、資金面からも外国からの批判も出てくるところですので非常に難しいといえます。さらに、これまで述べているようにNYダウの下げが近い将来予想されますので、日経平均の戻りはどうしても限定的となり、本日は△116円の9,626円で終わりましたが、7月14日の9,807円を超えるかどうかに注目となります。菅政権がどこまで腰の座った円安介入を実施できるのか注目するところです。

(指標)日経平均

9月13日(月)の分析では、この日の終値が△82円の9,321円となって9月6日(月)の9,301円をこえた陽線となったことで売りの形が解消し、戻りを試す形がつづくものの民主党の代表選に注目としました。市場の見方は菅首相が勝てば円高・株安の動きというもので9月14日(火)は菅首相が選ばれたことで為替は83円割れ寸前までドルが売られ日経平均は▲22円の9,299円でした。9月15日(水)は前場に82.86円まで円高が進行し日経平均も一時9,200円を割れましたが10:30に2004年以来の為替介入が実施され円は一気に84円台前半の動きとなり後場には84円台後半の円安となり△217円の9,516円と1カ月ぶりの9,500円台となりました。柴田罫線では9月6日に9,301円で短期の買転換となっていましたが押し目をつけて、この日の9,516円で下向きの先細三角形を上放れた形となりました。9月16日(木)は為替介入の持続性への疑問や決算対策売りもあり前日の終値をはさんだもみあいとなって△7円の9,509円でした、週末の9月17日(金)はドルに対して85円台後半の円安水準でしたがユーロが112円台の円安へ進んでいることで輸出関連株が買われて△116円の9,626円と9,600円台を回復して引けました。

日経平均

(指標)NYダウ

前週末の9月10日(金)は△47ドルの10,462ドルとなってろく買が出現し、このろく買はもう少し上昇しても次の下げで4月11日の10,332ドルを下に切ると売転換となる確率が高いとしています。先週はさらに戻りを試す動きとなりました。9月13日(月)は中国の経済指標や「バーゼル3」の合意を好感し△81ドルの10,544ドルとなり、9月14日(火)は▲17ドルの10,526ドルと小反落したあと9月15日(水)は翌週のFOMCでの追加の金融緩和観測で△46ドルの10,572ドルとなり、9月16日(木)は△22ドルの10,594ドルと続伸し週末の9月17日(金)は大手企業の株主還元策を好感して10,650ドルまで上昇するものの9月のミシガン大学消費者信頼感指数が予想を下回ったことでマイナスに転じる場面もあるものの終値では△13ドルの10,607ドルとなりました。この水準からは上値抵抗ラインがいくつかありFOMCの内容次第で材料出尽くしとなる可能性があります。

NYダウ

(指標)ドル/円

代表選の結果によっては円安への戻りもありそうであるが、基本的な流れは円高であり85.22円が1つ目の上値ポイントになるとしました。小沢氏の勝ちで円安、菅首相の再選で円高というのが市場の見方であり、結果的に9月14日(火)の代表選で菅首相が勝ったことで83円を切る円高となり、9月15日(火)には82.885円までの15年3カ月ぶりの円高更新となったところで政府・日銀の早い円安介入が実施され終値85.739円となって短期の買転換となりました。週末は85.923円まで円安が進むもののそこからは介入が行われておらず85円台後半の動きとなって終値は85.798円で引けました。チャートでは86.26円は強力な上値抵抗ラインになるところであり、8月13日の86.31円を終値で抜けなければ目先はもみあいとなって政府・日銀の出方を見守る展開となります。85円台~86.30円の間のもみあいを想定。

ドル/円