政府・日銀の口先介入で円高一服だが、EU、アメリカとの強調介入なければ円高は続く可能性

先週の予測では、8月10日(火)のFOMCの結果を受けてどうなるのかに注目とし、昨年11月27日の84.82円(84.769円を修正します)を守れるかどうかとしました。NYダウはFOMCの追加の金融緩和策への期待から上昇してきていましたが、FOMCの追加の金融緩和策が出ると日本金利差の縮小から円高への動きとなるため、日経平均は売られる展開となります。特に、昨年11月27日の84.82円を突破してくると、一気に円高進行となって9,000円を試す動きを想定しました。25日移動平均線(8月9日の時点で9,512円)にサポートされていますが、ここを切ってくると一段安となり、週の終値で9,250円を切って引けると、翌週は9,000円も視野に入ってくるとしました。8月10日(火)は▲21円の9,551円と25日移動平均線にサポートされていましたが、この日の引け後のアメリカ市場でFOMCの追加の量的金融緩和策があり、NYダウは一時▲147ドルから▲54ドルの10,644ドルまで下げ幅を縮小する程度で終わりました。つまり材料出尽しとなってしまったということです。為替は日米金利差の縮小から、円はドルに対してもユーロに対しても円高進行となり、日経平均は▲258円の9,292円となりました。引け後の海外では、さらに円高が進行し一時84.72円と15年ぶりの85円割れとなりました。8月12日(木)の日本市場でも円は85円を切る動きとなっていたことで、後場寄り付きは▲226円の9,065円と7月6のザラ場での年初来安値9,091円を割り込む動きとなりました。この状況を見て、菅首相が「円の動きが激しい」と発言したことで円高一服となり、日経平均は急速に下げ幅を縮小して▲80円の9,212円となりました。目先は7月6日の9,091円、8月12日の9,065円と二点底のような形となっていますので、いったん反発する形となりました。週末の8月3日(金)は政府要人の円高阻止発言が相次いだことで1ドル=86円台の円安へシフトし、日経平均は△40円の9,253円で引けました。

FOMCの更なる追加緩和策なければアメリカ株式の上昇は期待できず

NYダウは、7月2日の9,614ドルから8月9日の10,719ドルまで約1カ月間戻りを試してきました。その間に7月28日の米耐久財受注の落ち込み、7月30日発表のGDPの鈍化、8月6日発表の7月の雇用統計などのマクロの悪材料にかかわらずアメリカ株式が上昇してきたのは、欧州の信用不安の後退もありますが、一番大きなものは金融緩和策への期待といえます。しかし、この上昇で注意すべきは点は上昇とともに出来高が減少しているという点であり、これはこれまでの上昇トレンドの反転が近いことを意味します。

今回の追加的金融緩和策は、政府の景気刺激策を伴わない金融政策のみですので、効果性は薄く「材料出尽し」となっている可能性があります。リーマンショック時の2008年にはMBS(モーゲージ担保証券)購入、2009年春の国債購入の時には、オバマ政権が大規模な景気刺激策を決定し、財政・金融双方での緩和策という総合的な対応でしたが、今回はFOMCによるMBSを国債に置き換え、バランスシートの維持だけを狙ったものといえます。これは単にこれまでの低金利を維持するというくらいのアピールにしかすぎず、アメリカの景気減速は止まらないといえます。NYダウは、今後出来高を増加させながら8月9日(月)の戻り高値10,719ドルを抜けてこなければ、年末に向けて下降トレンドとなってきます。

目先は政府・日銀の対応待ち

PBR1倍割れという銘柄が主要銘柄の中にかなり出てきており、非常に割安感はあります。しかし、円高というものが重くのしかかっており、円高が天井を確認しない限り戻してもすぐに売られることになります。今回の円高は過去の円高がドルに対してだけであったのに、ユーロに対しても大幅な円高となっているところに危機感があると言ってよいでしょう。そのため政府、日銀はとりあえず口先介入していますが、これだけ口先介入してくると追加の金融緩和策を何らかの形でやらなくてはならなくなるでしょう。そうなってもそれは一時的となる可能性が高く、欧州やアメリカとの強調介入が無い限り本当の円高阻止は難しいといえます。ユーロ圏はユーロ安でGDPが上向いており、アメリカもドル安によって輸出企業に経済成長をサポートさせようとしていますので円高を容認していることになり、日本だけの円高阻止は効果性が薄いといえます。

本日(8月16日)は、寄前発表の4-6月期のGDPが予想の△2.3%を大きく下回る△0.4%だったことや、為替が1ドル=85円台、1ユーロ=109円台と円高推移していることで▲108円の9,145円で寄り付き9,095円まで下落しました。売り一巡後は、上海株式の上昇や7月首都圏新築マンション販売個数の好調さに支えられ、下げ幅を縮小し▲56円の9,196円で引けました。出来高は13.2億株、売買代金9,094億円の閑散相場となっています。目先は、政府・日銀の円高への対応によっては多少戻りを試すことがあっても長続きしない可能性が高いので、とにかく更なる下げを期待して待つところです。

(指標)日経平均

8月9日(月)の予測では、8月10日(火)のFOMCの追加の金融緩和策に注目とし、日銀が何も手を打たずにFOMCが金融緩和策を出せば日米の金利差縮小から円高進行となって、NYダウがしっかりしていても日経平均は下落するとしました。8月10日(火)にFOMCは償還を迎えるモーゲージ担保証券を国債に再投資し、市場に資金供給を行う量的緩和策を発表しました。NYダウは大きく下げていて、下げ幅を縮小するものの▲54ドルの10,644ドルとなり、材料出尽しとなる可能性が高まりました。8月11日(水)の日本市場は、6月の機械受注の悪化もあり、円が対ドル・対ユーロで円高進行となったことで▲258円の9,292円となりました。この日の引け後の海外で円が15年ぶりの84.72円をつけ、NYダウは▲265ドルの10,378ドルと急落して引けたことで、8月12日(木)の日経平均は一時9,065円と7月6日の9,091円を下に切る年初来安値更新となりました。しかし、菅首相の「円の動きが激しい」との円高を警戒する発言から円高一服となり、日経平均は大きく戻して▲80円の9,212円で引けました。

週末の8月13日(金)は、前日に政府要人の円高対応への発言が相次いだことで1ドル=86円台の円安シフトとなっており、△40円の9,253円と6日ぶりに小反発して引けました。本日(8月16日)は寄前発表の4-6月期のGDPが予想を大きく下回ったことで9,095円まで売られましたが、その後は割安感から下げ幅を縮小し▲56円の9,196円で引けました。目先の上値のフシは8月4日の9,489円となります。目先は日銀・政府の動きに注目するところです。

日経平均

(指標)NYダウ

8月9日(月)の分析では、8月2日(月)に△208ドルの10,674ドルとなってダブル天井となりつつあったところを上に抜けたことで一段高となるが、三角保ち合い(D)の上値斜線を突破できるかどうかとしました。8月10日(火)のFOMCでの追加の金融緩和策への期待からの上昇で、前日の8月9日(月)には10,719ドルまであって終値△45ドルの10,698ドルと3カ月ぶりの高値となりました。しかし、8月10日(火)のFOMCの追加の金融緩和策発表で、結局は材料出尽しとなり8月11日(水)には▲265ドルの10,378ドルの大幅安で引け、週末の8月13日(金)は▲16ドルの10,303ドルと4日続落で終わりました。為替も円高一服となっていますので、NYダウもいったん戻りを試すところといえます。注意しておかなければならないのは、8月9日の10,719ドルと3カ月ぶりの高値をつけるまでの上昇過程で出来高が減少してきていますので、これはトレンドの転換を暗示していることになります。出来高を伴って8月9日の10,719ドルを超えない限り、NYダウは年末に向けて下落基調となっていきます。当面は、下げても7月2日の9,614ドル水準(三角保ち合いの下値斜線にサポート)となります。この時、日経平均は8,500円水準となるかもしれません。

NYダウ

(指標)ドル/円

8月9日(月)の分析では、8月10日(火)のFOMCの追加の金融緩和策次第だが、85円を終値で切ってくるとストップロス(ドルの投げ売り)となって急激な円高となり1995年の79.75円を目指すことになるが、その前に83円を試すことになるとしました。8月10日(火)のFOMCの追加の量的金融緩和策の発表を受けて、日米金利差の縮小から円はドルに対してもユーロに対しても円高が進み、8月11日(水)には海外で84.72円の15年ぶりの85円割れとなりましたが終値では85円を守りました。8月12日(木)の日本市場でも85円を切る場面はあるものの、菅首相が「円の動きが激しい」と発言したことで円高一服となって、昨年の84.82円を守りました。出来高の多い東京市場で84.82円を切ってこないと急激な円高とはなりにくいので、いったん円高一服局面となります。目先は、日銀や政府の口先介入によって狭い範囲の上下動が想定されます。上値のフシは、チャート上では87円というところです。

ドル/円