NYダウ、日経平均ともにザラ場ではダブル底の形

先週の日経平均の予測は、オプションからみると週前半安・後半高の可能性としました。それは、6月3日(木)の△310円の9,914円の大幅高でSQ1週前のオプションのプット・コールの攻防はコール(買い)有利の形となっているため、普通は翌週のSQ清算日(6月11日)に向かって上昇する確率が高いためでした。ただし、週末6月4日(金)にハンガリーの財政赤字拡大懸念や5月の雇用統計の失望売りから▲323ドルの9,931ドルとなっていたことで、週前半は下落が予想され後半に反発することを想定しました。その場合、NYダウと日経平均を柴田罫線で次のように分析しました。

1 NYダウは、5月25日のザラ場安値9,774ドルに注目

6月2日(木)に△225ドルの10,249ドルの大幅上昇となったものの、これは単なるリバウンドの可能性もあるとし、その場合は5月13日(木)の10,920ドルの戻り高値から5月25日(火)の9,774ドルまでの下げ幅の二分の一戻しの10,342ドルが基本になるとしましたが、6月4日(金)にハンガリー問題と雇用統計への失望から▲323ドルの9,931ドルとなりました。そこで、形としては5月25日(火)のザラ場安値9,774ドルを試す動きが想定され、ダブル底のような形になることができるかどうかに注目としました。結局、6月7日(月)に▲115ドルの9,816ドルと終値ベースで年初来安値を更新した翌日の6月8日(火)も9,757ドルと5月25日(火)9,774ドルを少し切ってダブル底のような形となって急反発し、終値は△123ドルの9,939ドルとなりました。その後、6月10日(木)は△273ドルの10,172ドル、週末の6月11日(金)は△39ドルの10,211ドルで引けました。

2 日経平均は、5月27日の寄り付き値9,419円を守って反発できるかどうかに注目

NYダウが単なるリバウンドで終わったことで、6月7日(月)の日経平均は▲380円の9,520円と今年最大の下げ幅となりました。ただし、調整日柄も終わってテクニカルモード(騰落レシオなど)もすでに反転しており、安値圏でもたついたあと上昇となっていくとしました。その場合、SQに向けてコール有利の週であるため、5月27日の寄り付き値9,419円を終値では下回らないで反発とみているとしました(終値で下回ると9,300円割れを想定)。結局6月9日(水)にNYダウは反発したものの、ユーロ安につられて値ガサの輸出関連株が売られ、9,378円とザラ場で5月27日の9,395円を切る年初来安値となりましたが、終値は9,439円となって、5月27日の寄り付き値9,419円を切りませんでした。つまり、ザラ場ではNYダウと同じようにダブル底のような形を形成しました。そして、想定していたように週後半の6月10日(木)は△103円の9,542円、6月11日(金)は△162円の9,705円と高く終わりました。

今週は、ユーロのさらなる戻りの可能性があり、そうなると日経平均は一段高へ

6月8日(火)に以下のメッセージを書きました。

<ユーロの行方……長期の最安値を切ったところが経験則ではいったんの底?>
6月2日(水)にも簡単にコメントしましたが、ギリシャの財政問題に端を発した危機が次々と噂を交えて拡大し、いったいどこで止まるのだろうという不安が世界全体を覆っています。EU16カ国は世界最大の経済圏を構築し、様々な製品やサービスでEUの規格が国際規格になってきているという強い自信を持っており、そのため一昨年ような経済危機を起こさないように率先して規制を設けて進んでいけば、他の国々も追随してくるという考え方がEUの首脳(特にドイツ)の中にあります。2008年の経済危機は、これを回復するためにどの国も巨額の財政投資を行って財政悪化に見舞われ、その財源が納税者の負担の上に行われ、特に金融機関などは税金によって助けられたにもかかわらず、再び同じようなバブルを作り出していることに批判が高まっています。

ギリシャの財政危機に端を発したソブリンリスク懸念は、他のユーロ圏の債務比率が大きい国々にも広がり、通貨ユーロの信頼を損ない急落となっています。その結果、ギリシャなどの高債務国の国債を抱えている欧州系銀行は信用が低下し、欧州の金融システム不安へつながっているのです。ドイツは、今回のユーロ及び欧州の信用不安の原因は、市場の投機的な売りにあるという見方をしており、5月18日(火)に自国の国債の空売り禁止を実施したわけですが、結果は逆効果となってユーロがさらに売られることになりました。その理由は、ユーロ各国が公共部門の再編といった歳出削減策などの財政緊縮策をまとめていますが、それはEU全体の統制のとれた緊縮策ではなく、各国政府が自国の国債が市場で売り(投機)の対象となったり、格下げされないように慌てて作っているものだからです。そのため、中国のEUの国債保有見直し報道(翌日、中国政府は否定)や、フランス・イタリアの格下げ懸念が生まれ、こういう状況の中で格付け会社フィッチがスペインの信用格付けの引き下げや、先週末のハンガリーの財政赤字が大幅に悪化すると伝えられ、ドルに対してユーロは最安値を記録しました。ユーロは円に対しては、一時108.05円と8年7カ月ぶりの安値となり、ドルに対しては、1ユーロ=1.195ドルと4年ぶりの安値となっています。噂が飛び交い、ユーロがどこまで暴落するかわからないという雰囲気になった時が、当面の底値圏となる可能性があります。

結局、ユーロは円に対して6月7日(月)に1ユーロ=108.05円という8年7カ月ぶりの安値をつけたあと、6月11日(金)には1ユーロ=111円台前半まで上昇し、ドルに対しては1ユーロ=1.18ドル台の4年3カ月ぶりの安値をつけたあと1ユーロ=1.21ドル台半ばまで上昇しました。相場は売り手と買い手の戦いですから、下げ続ける相場はありません。買い手は、どこで買いにはいるのかのタイミングを見計らっているのであり、長期の最安値を切ったところは1つのポイントとなります。普通の投資家がそういう局面では、「もうだめだ。更に下げていく」と投げてしまうポイントでもあります。このポイントで好材料が出てくることになります。理由はいくつもつけられますが、まずは中国の5月の輸出入が好調だったことで世界の景気は後退していないという理由づけが行われ、次に欧州中央銀行(ECB)が政策金利を年1.0%に据え置きました。また、金融機関向けに固定金利で無制限に3カ月物の資金を供給する施策を9月まで継続することになりました。これを織り込む形で、今週はユーロが戻りを試す可能性があります。そうなると、ユーロの上昇で円安つれてドル/円でドルの上昇(円安)となって、日経平均が戻りを試すことになります。何も変化がなければ、日経平均の先週の終値はSQ清算値9747円を下回る9,705円で終わっていますので、軟調な動きとなるところでしたが、今回はユーロの上昇が円安となって日経平均の戻りを支えそうです。但し、ユーロが戻りを終われば再び下値確認となる可能性があります。

今回は、日経平均は10,300~10,500円までの戻り相場の可能性も

今回の下落は、ギリシャの財政問題に端を発するヨーロッパ全体の財政問題と金融システム問題にまで拡大し、世界経済の景気後退懸念から、日米ともに昨年の安値からの上昇トレンドをいったん下に切りました。こういう場合は、当面は戻り売りとなって戻りを試したあとは、再下落となって前の安値を試しにくることになるのが普通です。それは、ユーロも同じで6月7日(月)にユーロ/円では108円台前半の8年7カ月ぶりの安値、ユーロ/ドルでは1.18ドル台の4年3カ月ぶりの安値をつけていったん反発にはいりましたが、ヨーロッパの高債務国の財政問題は何ら解決しておらず(時間が経てば、ユーロ安が輸出にプラスになって好転してきますが)、再度安値を試しにくる可能性があります。このシナリオを想定するならば、今回の戻りは長めの保有はリスクがあり、日経平均が10,300円水準になれば利食い優先ということになります。日経平均のチャートをみると、目先は10,300円水準からは上値が重たくなるところです。これもNYダウがどこまで戻れるかとなりますが、ナスダックの方は先週の週足は長い下ヒゲの短い陽線となっており、あとで実体で埋めてくる形ですので、ナスダックは戻り売りの形をもちながら上昇していることになります。寄り付き値2,226P(6月7日)-高値2,243P(6月11日)-安値2,139P(6月8日)-終値2,243P(6月11日)がナスダックの週足ですので、いずれ2,139Pを試しにくるという形になります。そうなれば、日経平均も6月9日(水)の9,375円を試す動きとなりますが、そうなった場合、この水準を切るかどうかはNYダウのこれからの戻りの程度によります。つまり、NYダウの戻りが大きければそれだけ下値も底上げされますが、戻りが弱ければ安値を更新してくる可能性もあるということです。こういうシナリオになれば、今年の始めに提示した37カ月周期説の基点が7月となりますので、ここから本格上昇というシナリオも期待できるかもしれません。先のことは誰にもわかりませんが、チャート上は10,300円水準は上値のフシとなるところですので、利食い優先(利食い目標にこだわらず)、キャッシュ化優先となります。

先週の6月9日(水)発売の週刊FLASHで低位株20銘柄掲載

先週の6月9日(水)発売の週刊FLASHにて目先の底値を想定し20万円以下で買える低位株20銘柄を紹介(6月3日(木)の終値時点で分析)しましたので参考までに紹介しておきます。

(指標)日経平均

前々週末の6月4日(金)のNYダウの▲323ドルの9,931ドルという急落とユーロ安の進行を受けて、6月7日(月)の日経平均は▲380円の9,520円と今年最大の下げ幅となってろあ売が出現し、6月3日の9,914円でのろあ買を帳消しにしてしまいました。この時点での分析は、コール(買い)有利のオプションからみると週前半安・週後半高とし、まずは終値で5月27日(木)の寄り付き値9,419円を守れるかどうかに注目としました。

6月8日(火)は△17円の9,537円でしたが、6月9日(水)はNYダウが△123ドルの9,939ドルと反発したにもかかわらずユーロが110円を切る動きとなったことで、輸出関連株中心に売られ一時5月27日の9,395円を下に切って9,378円まで下落し、終値は▲98円の9,439円となりました。NYダウと同じように、ザラ場でダブル底をつけた形となって、6月10日(木)は△103円の9,542円、6月11日(金)は△162円の9,705円と想定通り週前半安・週後半高となりました。

6月11日(金)の終値は、9,705円となってSQ清算値9,747円を下回って引けたので、相場環境に変化がなければ今週は軟調な展開が想定されるところでしたが、アメリカ株式が続伸し、ユーロが111円台の円安となったことで、シカゴ先物が9,795円とSQ清算値を上回っていました。本日6月14日(月)は、△119円の9,824円で寄り付き、25日移動平均線の9,880円にアタマを押さえられ△174円の9,879円とほぼ接して引けました。このまま上昇して△110円以上の9,989円以上で引けると、ろあ買は出現して、再び買転換の状態となります。そうなると、10,200円→10,300円台への動きが期待されます。

日経平均

(指標)NYダウ

前々週末の6月4日(金)は、雇用統計の悪化とハンガリーの財政赤字拡大を嫌気し、▲323ドルの9,931ドルと1万ドルを割れて引け、柴田罫線の昨年3月9日の6,440ドルからの上昇トレンド(B)を下に切って売転換となりました。ただし、目先は5月25日の9,774ドルに対するダブル底になるかどうかに注目としました。

週明けの6月7日(月)は、欧州危機の拡大懸念やユーロ安の進行で▲115ドルの9,816ドルとなって昨年11月以来の安値となりました。6月8日(月)は、9,757ドルまで下落して、5月25日の9,774ドルを少し切って急反発となり△123ドルの9,939ドルとなり、想定したように5月25日の9,774ドルに対するダブル底のような形となって反発しました。6月9日(水)は、▲40ドルの9,899ドルと反落するものの、6月10日(木)は好調な中国の経済指標やトリシエ欧州中央銀行総裁の危機対策発言でユーロの買戻しがはいったこともあり、NYダウは△273ドルの10,172ドルの大幅反発となりました。週末の6月11日(金)は、6月のミシガン大学消費者信頼感指数が予想を上回ったことで△39ドルの10,211ドルで引けました。

NYダウ

(指標)ドル/円

前週末6月4日(金)の終値は91.839円でした。先週の予測としては、ハンガリーの財政悪化拡大懸念から欧州債務問題が深刻化し、ユーロが急落となったことで1ユーロ=108円台の円高となり、ドルに対しても円高基調にあり、91円をはさんだ±1円のもみあいが基本になることを想定しました。先週は、6月7日(月)にユーロの買い戻しからドルに対しても円が売られ92.077円まであり、これが先週でのドルの高値であり、6月8日(火)のNYダウの下落で90.835円までありましたが、これが先週でのドルの安値でした。終値ベースは、1週間を通じて91円台となって、週の終値は91.642円となり短期の買法則出現となっています。ユーロがいったん大きく戻す場面があれば、ドルも93円台を目指す動きが想定されるところです。

ドル/円