先週末に、雇用統計悪化と、ハンガリーにも債務問題が表面化

先週は、5月17日(月)に想定したように、5月24日(月)の週に日柄として当面の底打ちとなるかどうかを2つのパターンで想定しました。値幅調整としては、新しい悪材料として欧州の金融システム不安と朝鮮半島の緊迫化という日本独自の地政学リスクも加わって5月27日(木)には9,359円まで下落しました。これが当面の底打ちとなるには、10,000円近辺までの大きな陽線が立つと、その可能性が高いといえるからです。この2つのパターンは、ユーロの行方とNYダウ次第ですが、日経平均のポイントとしては5月27日(木)の寄り付き値9,419円を守れるかどうかでした。私は、可能性としては10,000円を試す動きとしました。結局、テクニカルの面では騰落レシオなどはすでに売られ過ぎのゾーンから反発しかかっており、6月1日(火)にNYダウが▲112ドルの10,024ドルまで下げた時も安値は9,560円までで、そこから反発となりました。そして、6月2日(水)のNYダウが△225ドルの10,249ドルの大幅高を受けて、6月3日(木)の日経平均は△310円の9,914円と今年最大の上昇となり短期の買転換出現となりました。週末は、9,962円と10,000円に接近し大引けは▲13円の9,901円でした。翌週にSQを控え、SQ1週前のオプションの攻防は前日の大幅上昇でコール有利となっており、今週のSQ(6月11日)に向けて経験則では堅調な動きが想定されました。しかし、先週末の引け後のアメリカ市場で、5月の雇用統計が予想を下回り(10年ぶりの大幅増だが、非農業部門雇用者数は減少)、ハンガリーの財政赤字拡大から欧州債務問題が再燃しNYダウは▲323ドルの9,931ドル、ナスダックは▲83Pの2,219Pの急落となりました。週末にNYダウの正念場というチャート分析を行い、今回の上昇は単なるリバウンド相場の可能性もとしましたが、早くもそのような動きになりました。(翌日の6月4日(金)早くも急落となりました)

NYダウはチャート上では正念場 6月3日(木)の終値時点のNYダウの分析

NYダウは、2007年に月足での3尊天井(2007年7月17日の14,020ドル、2007年10月11日の14,198ドル、2007年12月11日の13,780ドル)を形成して、その後サブプライムローンが起こって下降トレンド(A)を形成しました。この中で、2008年9月19日の11,483ドルの高値をつけたあと、リーマンショックが起こり再暴落となって2009年3月9日の6,440ドルで底打ちとなりました。このあと、アメリカ政府は大規模な財政政策とFRBのゼロ金利政策によって一本調子の上昇トレンド(B)を形成し、今年4月26日には11,258ドルまで戻りを達成しました。この上昇トレンド(B)の中で、2009年7月18日の8,051ドルの押し目から急騰したあとの上昇の形は、上向きの末広がり三角形(C)を形成していました。この中で、今年になって4月15日の11,154ドル、4月26日の11,258ドル、5月3日の11,177ドルと週足での3尊天井を形成して、5月4日に10,926ドルで売転換が出現し、5月6日(木)には欧州の財政懸念の他にシティの誤発注もあって9,869ドルと一時1,000ドル近い下げとなり終値は▲347ドルの10,520ドルでした。誤発注があったにしてもこの亀裂は大きく、いずれ実体で埋めにくるとしました(結局、5月25日には9,774ドルまでさがりました)。ここで欧州財政懸念が再燃し、再下落となって上向きの末広がり三角形(C)の下値斜線を切って下放れとなり、5月25日にはザラ場安値9,774ドルとなって、5月6日の9,869ドルを下回る形となりました。5月27日(木)には、中国政府が欧州国債保有の見直し報道を否定したことをきっかけに△284ドルの10,258ドルとなって短期の買転換(ナスダックも同時に出現)となりました。

ところが、翌日(5月28日)に格付け会社フィッチによるスペインの格下げから欧州信用不安が再燃し▲122ドルの10,136ドルとなり、3連休後の6月1日(火)は▲112ドルの10,024ドルとなってろあ売が出現し、買転換を打ち消す形となりました。ただし、ナスダックは買転換のままであり、きっかけ次第ですぐに反発できる形でした。そして、6月2日(水)にはユーロ安の落ち着きと好調な経済指標を受けて△225ドルの10,249ドルの大幅反発となりました。

再び柴田罫線で買法則が出現するのは、10,351ドルを終値で抜ける必要がありますが、そうなっても上値は限定的となるかもしれません。というのは、ザラ場であれ5月25日(火)には9,774ドルまで下落して、2009年3月9日の6,440ドルからの上昇トレンド(B)をいったん下に切っていますので、今回の反発はこれまでのような上昇日柄が長くはならないかもしれません。それは、2月5日の安値9,835ドルから4月26日の11,258ドルまでを1山目とすると、これに対する2山目を形成する動きといえます。現在の上昇が単なるリバウンドだとすれば、5月13日(木)の10,920ドルの戻り高値から5月25日(火)の9,774ドルまでの下げ幅1,150ドル二分の一戻しの10,342ドルが基本となり、ここを超えても10,500ドルぐらいのもので、そこから下落して5月25日の9,774ドルを試しにいく動きとなるかもしれません。そして、下値を確認したあと4月26日の11,258ドルに対する2山目を目指すという形も考えられます。

NYダウは、5月25日のザラ場安値9,774ドルに注目

先週末のアメリカの5月の雇用統計は△43万1000人となり、10年ぶりの大幅増と5ヶ月連続プラスとなりました。しかし、内容をみてみると10年に1度の国勢調査のための政府の臨時雇用者を前月から41万1000人増やしており、これが増加のほとんどを占めていました。雇用情勢の実態を示す民間部門の雇用者数は前月の△21万8000人を大きく下回る△4万1000人となったことで失望売りが広がりました。さらに、ハンガリーの政府関係者が財政赤字か大幅に悪化する可能性があると報じたことで、欧州の債務問題が一段と拡大する懸念からNYダウは▲323ドルの9,931ドルとなりました。先週6月4日(金)のメッセージで、NYダウは単なるリバウンドの可能性もあり、その場合は5月13日(木)の10,920ドルの戻り高値から、5月25日(火)の9,774ドルまでの下げ幅の二分の一戻しの10,342ドルは戻りの基本としていましたが、引け後のアメリカ市場では雇用統計への失望とハンガリー問題が浮上し、早くも下落してしまいました。目先は、想定した10,342ドルまでのリバウンドもなくなり、昨年3月9日の6,440ドルの最安値からの上昇トレンドをいったん切ってしまいました。まずは、5月25日のザラ場安値9,774ドルを試す動きが想定されますが、形としてはダブル底のような形になることができるかどうかに注目となります。

日経平均は5月27日の寄り付き値9,419円を守って反発できるかどうか

6月4日(金)のメッセージでは、NYダウが単なるリバウンドで終わると、日経平均も6月3日(木)の短期の買転換もあまり長く続かないとしました。NYダウの急落で、本日すぐに下落となりましたが、日経平均は調整日柄も終わってテクニカルモード(騰落レシオなど各種の指標)もすでに反転しており、安値圏でもたついたあと上昇となっていくとみています。今週は、特にコール有利のSQ週であり、週前半安く週後半高いというパターンになるかもしれません。先週の5月31日(月)の予測では日経平均の2つのパターンを5月27日の寄り付き値9,419円を守れるかどうかで分け、10,000円接近のパターンとなることを想定し、結果としては6月4日(金)に9,962円まで上昇し本日急落となり▲380円の9,520円となって、ろあ売が出現し6月3日(木)の短期の買転換が消滅してしまいました。再び、先週の2つのパターンを想定することになります。

現時点では、今週はSQに向けてコール有利のため、5月27日の寄り付き値9,419円を下回らないで反発とみていますが、終値で下回ると9,300円割れも想定することになります。日経平均の動き方としては2月9日(火)に9,932円(ザラ場安値9,867円)の安値をつけて2月22日に10,449円まで戻したあと2月26日に10,085円まで下落し、3月3日に10,274円まであって3月4日には10,134円まで下落というようなもみあいのようなものを想定すればいいかもしれません。そのうちにヨーロッパが落ち着きNYダウが戻りを試してくれば日経平均も再上昇となります。

(指標)日経平均

5月31日(月)は、前週末(5月28日)のスペインの格下げからNYダウは大きく下げていたものの、アメリカ市場は連休で手掛かり材料に欠け△9,768円の4日続伸となりました。6月1日(火)は、円高基調と鳩山首相の退陣論の強まりで▲56円の9,711円と5日ぶりに反落し、引け後のアメリカ市場が欧州信用不安の再燃で▲112ドルの10,024ドルと下落したため、6月2日(水)の日本市場は▲108円の9,603円の続落となりました。しかし、この日のアメリカ市場は好調な経済指標とユーロ安の落ち着きから△225ドルの10,249ドルと大幅反発したことで、6月3日(木)の日経平均は円高と菅新政権への期待から△310円の9,914円と今年最大の上げ幅となって、短期のろあ買出現となりました。短期としたのは、NYダウが単なるリバウンドの可能性もあったためでしたが、週末のNYダウは雇用統計への失望とハンガリー問題から▲323ドルの9,931ドルと急反落しました。これを受けて、6月7日(月)の日経平均は▲380円の9,520円となってろあ売出現となりました。まずは、5月27日(木)の寄り付き値9,419円を守れるかに注目となります。守れなければ、5月27日の9,395円を試す動きとなります(先週想定した2パターンのどちらか)。

日経平均

(指標)NYダウ

2007年10月11日の14,198ドルの史上最高値をつけて、現在までのチャートの動きをみてみます。2007年10月11日の14,198ドルからの下降トレンド(A)の中で、2009年3月9日の6,440ドルで底打ちとなりました。ここから上昇トレンド(B)を形成していますが、この中で2009年7月18日の8,051ドルの安値から8月7日の9,466ドルまで急伸したあとは、上向きの末広がり三角形(C)の上昇の形となりました。この中で、今年1月19日の10,729ドルまで上昇したあと2月5日の9,835ドルまで下落し、ここから最後の上昇となって4月26日に11,258ドルの年初来高値をつけて天井となりました。この水準でのもみあいの結果、(1)4月15日の11,154ドル、(2)4月26日の11,258ドル、(3)5月3日の11,177ドルと三尊天井を形成し、5月4日に10,926ドルで売転換となって5月6日には一時▲1,000ドル近い下げとなって9,869ドルまで下落しました。終値は10,520ドルと戻したあと、反発となって5月13日には10,920ドルまで戻りましたが、再下落となって5月25日には9,774ドルの安値をつけました。終値ベースでは、5月26日に9,974ドルとなりましたが、3月9日の6,440ドルからの上昇トレンドに支えられています。ただし、5月25日には9,774ドルと、この上昇トレンドをいったん下に切っていますので、今回の戻りが弱く、この9,774ドルを実体で埋める動きとなると、3月9日の6,440円からの上昇トレンドが終わることになり、NYダウが単なるリバウンドの場合は、まずは5月13日の10,920ドルから5月25日の9,774ドルまでの下げ幅の二分の一押し目の10,342ドルを突破できるかどうかに注目となります(6月3日時点の分析)。そして、この分析を行った翌日6月4日(金)は、雇用統計の失望売りとハンガリーの財政赤字拡大を嫌気し▲323ドルの9,931ドルと10,000ドル割れで引けました。昨年3月9日の6,440ドルからの上昇トレンド(B)を下に切って売転換となりました。ただし、目先は5月25日の9,774ドルに対するダブル底となるかどうかに注目となります。

NYダウ

(指標)ドル/円

先週の予測では、5月27日(木)に91.026円でドルの短期の買転換となっており、昨年11月27日の84.769円からの上昇トレンド(C)にアタマを押さえられているが、週末の雇用統計の発表に向けてドル高となっていく可能性もあるとしました。ただし、93円水準から上は、当面は難しいとしています。

6月1日(火)に、欧州市場でフランスやイタリアの格下げの噂が出回ったことでユーロ売りが加速し、円買いとなってドルも90.538円の安値をつけました。その後は、6月2日(水)にNYダウが急騰したことでドル高が進み、円安論者の菅財務相が次期総理となるということから、円安が6月4日(金)の92.874円までありました。しかし、93円に近づくと上値は重く、雇用統計が予想を下回り、NYダウが大幅下落となったことで一気に92円を割り込み91.413円の安値をつけて終値は91.839円となりました。

結局、ハンガリーの財政悪化拡大示唆より欧州債務問題が深刻化し、ユーロが急落となったことで1ユーロ=108円台の円高となり、ドルに対しても91円近い円高となっています。目先は、方向感のない展開となって、91円をはさんだ±1円ぐらいのもみあいが基本となりそうです。

ドル/円