ユーロの急落から円高進行し、日経平均10,000円割れ
先週5月17日(月)の分析では、日経平均は日柄調整・値幅調整とも最終局面の可能性があるとし、週末から翌週にかけて10,000円を割れる水準(チャート分析では9,700円台としました)まで下げれば、調整完了となる可能性があるともしました。すでに、5月10日(月)の分析では、NYダウが5月6日(木)に1,000ドル近い下げの時につけた長い下ヒゲの9,869ドルを埋める動きになれば、日経平均も2月9日の9,687円の安値を試す動きとなって10,000円を割ってくる場合を想定していました。しかし、NYダウがいったん大きな反発となって5月12日(水)には△148ドルの10,896ドルと10,900ドル水準まで反発したことで、目先下げても10,300ドル水準で止まるというのがチャートの形としては考えられるところでした。ただし、ヨーロッパに新しい悪材料が現れない限りとしていましたが、その悪材料がドイツの空売り規制をきっかけにユーロが急落し、商品市場、アメリカ市場も急落する動きとなり、日本市場はリスク回避の円買いから、特にユーロに対して急速な円高進行となって日経平均も大きな下落となりました。結局、週末5月21日(金)の日本市場は、前日のNYダウが▲376ドルの10,068ドルと今年最大の下げ幅となり、為替も1ドル=88円台となったことで、円はユーロに対してもドルに対しても円高となり主力の輸出関連株が売られて、一時9,696円まで下げて終値は▲245円の9,784円となりました。想定通り週末に10,000円割れて9,700円台で引けました。
この日の引け後のNYダウは、欧州をめぐる財政問題や中国の金融引き締めで景気が後退し、世界経済は2番底に向かうのではないかという懸念から、一時▲149ドルの9,918ドルとなって5月6日の9,869ドルを試す動きとなり、その後は、金融株主導で押し目買いが入り大幅反発となって△125ドルの10,193ドルとなりました。
先週の急激なユーロ安の背景は?
先週は、ユーロはドルに対して4年半ぶりの安値をつけ、円に対しても110円台までの急激なユーロ安・円高となりました。ギリシャの財政問題懸念からのヨーロッパ経済の不透明さは、これまですでに何度も材料視されていましたが、先週突然ユーロ安になったのは資金の流れの需給関係のバランスが崩れたことに大きな理由があります。5月19日(水)にギリシャ国債の大量償還があり、これを無事に乗り切るとギリシャ問題はいったん落ち着くと見られていました。ところが、ドイツ政府による国債などの空売り規制措置の導入によって金融市場は大混乱となりました。ドイツ政府の意図は、空売り規制によって売り圧力を弱くするというものでしたが、逆効果となりました。つまり、ヘッジファンドなどは国債などの空売りができないならば、その代替として空売りできるユーロに売りを集中させ、ユーロが急落し、それにつれて欧州株安、アメリカ株安となり、リスク回避資金として円が買われ急激な円高となりました。その結果、ヨーロッパへの輸出比率の高いソニーやオリンパスなどの輸出関連株中心に売られ、日経平均は10,000円を割る動きとなったわけです。ということは、基本的には日本市場の本格上昇はユーロの落ち着きを待つということですが、日本株式だけみるといったん反発してもよい形となっています。
日経平均は、いつ反発に転じてもよいところだが、NYダウは日柄調整が不足
先週末のアメリカ市場は、ヨーロッパの先行き不透明感から売りが先行して9,918ドルまで下げるものの、前日にアメリカ上院本会議で金融規制改革法案が可決され、これまで規制強化への懸念で売られていた金融株が悪材料出尽しで買い戻され、それにつれてNYダウは△125ドルの10,193ドルと4日ぶりに反発で引けました。NYダウの場合、今回大きな亀裂が入ったために今までのような週足での上昇基調がストップしてしまい、当面は戻り売りの形となって大きな上下動が想定されます。短期でこれだけ大きな亀裂を生むと、底入れとなるには時間がかかることになります。先週は、9,918ドルまであって5月6日の9,869ドルを試す動きとなって反発したことでダブル底のような形にはなっていますが、日柄からみると調整不足となります。日経平均は、4月5日の11,408円をピークに調整してきていますが、NYダウは4月26日の11,258ドルをピークに調整となっており、日本市場より3週間遅れてピークをつけているため日柄が合わないことになります。ということになると、日経平均が日柄・値幅ともに最終局面としても自律でどこまで反発できるのかとなります。そうすると、為替の落ち着き、NYダウの落ち着きをみて動き出すということになるかもしれません。ただ、PERからみても割安感が出ていますので、外国人が買ってきてもおかしくありません。ただし、相場に絶対はありませんので、NYダウが終値で5月6日の9,869ドルを切ってくると昨年の11月2日の9,678ドルが次の下値ポイントとなり、日経平均は9,500円水準を切ってくることも想定されます。
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(指標)日経平均
5月17日(月)の分析では、この日に▲226円の10,235円となって5月14日の10,344円(ザラ場安値10,257円)を切ってろあ売が出現し、さらに昨年3月10日の7,021円からの上昇トレンド(A)を下に切ったことで、上昇角度の緩やかな昨年11月27日の9,076円からの上昇トレンド(B)へ確実に移行したことになります。先週は10,000円を守れるかどうかとし、それにはユーロ安・円高の進行がどこまでかに注目としました。この時点では、10,000円以下は売られ過ぎとなって9,700円台をみておけばよいとしましたが、ドイツが国債の空売り禁止を発表したことで、その代替商品としてユーロ売りへ資金が集中しユーロはドルに対して4年ぶりの安値となり、円もユーロに対して一時110円台までの円高になりました。その結果、週末の5月21日(金)は9,696円まであって終値は▲245円の9,784円となり、目先は下げても9,700円台としたところに到達しました。日経平均だけをみると、4月5日の11,408円をピークに調整となり、日柄・値幅ともに十分なところへきていますが、日経平均が自律で動けない以上、ギリシャ問題からのユーロ安とアメリカ株安の落ち着きがどうしても前提となります。チャートでみると、さらに下げても9,500円台というところですが、PERからみても割安感があるところですので外部環境との綱引きとなります。
(指標)NYダウ
NYダウは、5月4日に10,926ドルで売転換となったことをお知らせし、5月10日(月)の分析では、10,300ドル水準は下値のフシになるところですが10,000ドル近辺も想定しておいた方が良いとしました。その後、大きな反発となって5月12日には10,909ドルまで戻りましたので、これだけ長い大陽線になると10,300ドル水準は下値ポイントとなるのが普通ですが、5月17日(月)の分析では、EU問題が新たな悪材料となれば5月6日の長い下ヒゲである9,869ドルを埋める動きも想定しなければならないとしました。結局、ドイツが一部の金融株やユーロ圏の国債の空売り規制導入を検討するとしたことで各国政府も規則強化に動けば、リスク回避の動きとなって資金が市場から流失することが懸念され、世界同時株安の動きとなりました。さらに、5月20日(木)は欧州委員会で銀行税を提案する計画が報道され、またドイツの財務相がユーロ圏の重債務国について、通貨同盟を一時的に脱退するよりも秩序ある破産が望ましいとしたことで、一気に売りが加速し▲376ドルの10,068ドルで引けました。いずれ5月6日の9,869ドルは埋めにくるとは思っていましたが、一気に埋める動きとなってきました。そして、週末の5月21日(金)は欧州をめぐるソブリン問題から一時▲149ドルの9,918ドルと、5月6日の9,869ドルを試す動きとなり、その後、金融規制法案が可決されたことで悪材料出尽しとなって金融株中心に反発し△125ドルの10,193ドルで終わりました。短期で急落しただけに日柄が足りず、この水準で大きな上下動となるかもしれません。柴田罫線では、先週末に1本上に陽線がでましたが、いったん下げて10,064ドルを終値で切って引けて、あまり大きく下がらずに次の反発で10,195ドルを上にぬけると買いの形となります。
(指標)ドル/円
5月6日(木)のNYダウは、1,000ドル近い下げとなって9,869ドルの安値をつけ長い下ヒゲとなって終値は▲347ドルの10,520ドルでした。この時、ドル/円の為替相場は87.948円まで下げて長い下ヒゲとなり、90.501円の終値となりました。5月10日(月)の分析で、もしNYダウが戻りを試したあとに、9,869ドルまでの異常な下げを実体で埋める動きとなれば、ドル/円でドルも5月6日の87.948円を実体で埋める動きとなり、3月4日の88.131円に対するダブル底を形成し、その後日米金利差に注目がいき、ドル買い・円売りとなって円安トレンドに戻ってくることも考えられるとしました。5月17日(月)の分析では、この日に、NYダウが5月13日(木)には10,920ドルまで戻してきたことで5月6日(木)の9,869ドルを実体で埋めるのは新しい悪材料が出ない限り10,300ドルが下値ポイントで、その場合、為替は1ドル=91円水準で止まることを想定しました。ところが、先週のヨーロッパは、さらに財政問題が深刻化する展開となりました。5月18日(火)は、ドイツが空売りを禁止すると発表したことで、ユーロが急落しリスク回避の円買いの動きが活発化し92.228円の終値となって売転換が出現しました。5月19日(水)は、欧州株式が大幅下落となったことで円買いが再燃し、90.944円まで円高が進みました。5月20日(木)は、ドイツが導入した空売り規制をEU全体で導入する可能性が強まったことやNYダウが大幅下落となったことでリスク回避の円買いが一気に進み88.951円まであって終値は89.686円となりました。週末(5月21日)はNYダウが反発したこともあり、89.963円で終わりました。ここにきて、ドル/円のチャートの形が、少し変わってきました。2009年4月8日の101.43円からの下降トレンド(A)を上に抜けて、今年4月2日の94.685円、5月4日の94.97円とダブル天井をつくって下落し、5月6日に90.501円まで下げて、5月10日に93.53円まで戻して再下落となり、5月18日に92.228円で売転換が出現して、5月6日の90.501円を下に切って5月20日に88.951円まであって終値89.686円となりました。要するに下放れとなっています。しばらくはドルの戻り売りとなって大きな円安は期待できない形です。
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