12年本決算は15%増益、「CET1」対応への余力で増配を実施

現地コード 銘柄名 株価 情報種類
00011 恒生銀行(ハンセン・バンク) 127.50 HKD
(03/05現在)
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恒生銀行の2012年12月通期の純利益は前年比15%増の194億2600万HKドル(EPS10.16HKドル)と、BOCIの予想を5%上回る水準に達した。ポジティブサプライズとなったのは2009年以来の増配に踏み切ったこと(1株当たり年間配当は2%増)。これが同行の「CET1」比率(新たな自己資本規制「バーゼル3」に基づく新たな資本区分:普通株式等 Tier1)の上昇を示唆した。BOCIは利益見通しを小幅に増額修正した上で目標株価を引き上げ、株価の先行きに対して中立的な見通しを継続している。

12年通期利益はBOCI予想およびコンセンサス予想を上振れ、下期利益は上期の93億200万HKドルを上回る101億2400万HKドルに達した。下期の利益の伸びは、主に不動産再評価益(5億3800万HKドル)の計上と興業銀行(上海601166)の利益寄与によるもので、うち興業銀行の貢献は下期利益の27-28%に達した。ただ、興業銀行の会計処理の変更を受け、2013年には調整を実施する運び。BOCIによれば、これに伴い、恒生銀行の12年通期利益は前年比9%増の152億6100万HKドルに縮小する運びとなった。また、調整後のROA(総資本利益率)およびROE(株主資本利益率)はそれぞれ1.49%、17.8%に低下する見込み。興業銀行による利益寄与は調整後純利益の4%(調整前は通期純利益の24.6%)に縮小するという。

同行は12年に、前年の5.20HKドルを上回る5.30HKドルの年間配当を実施する方針。調整後EPSに基づく配当性向は前年の71%に対して66%となる。BOCIは12年の増配を受け、「バーゼル3への対応における余力を示唆している」との見方。2013-15年の予想配当を上方修正し、年率2%の伸びを見込んでいる。

経営陣によれば、バーゼル3に基づくCET1および自己資本比率(CAR)は、13年1月1日時点でそれぞれ13.5%(1.3ポイント上昇)、16.6%(2.6ポイント上昇)。バーゼル3対応に伴う興業銀行関連の控除が響き、CET1は4ポイント低下するとみられるが、経営陣はバーゼル3の全面的な適用までに6年間の猶予があることに言及し、十分対応できるとの見方。コア自己資本比率は10%以上の水準を維持する見通しを示した。なお、経営陣は興業銀行の持ち株10.9%を維持する方針を示すも、BOCIは配当利回りの低さ(2.3%)やバリュエーションの上昇を理由に、持ち高削減の可能性を指摘した。

12年の貸出伸び率は前年比11.5%と、業界平均の9.6%を上回ったが、13年は不動産担保ローンの減速で、貸し出し全体の伸びが鈍化する見込み。BOCIは13-15年の予想伸び率を8-9%に設定している。また、純金利マージンは12年に1.85%と、0.07ポイント改善したが、BOCIは資金コストの一段の低下余地は限られるとの見方。13-15年の想定値を0.03ポイント引き下げ、1.82%とした。一方、同行資産は引き続き健全で、12年下期の不良債権比率は0.25%(上期は0.33%)。