個人投資家にとってはアベノミクス相場始まって以来の厳しい現状

先週の木・金の上昇でようやく薄日が差し込んできた感じもしますが、日本株は冴えない動きが続いています。日経平均株価やTOPIXこそ、2月4~5日につけた安値を割り込まずにいるものの、マザーズ指数は3月25日には2月4日の安値を割り込んでしまいました。個別銘柄をみても、新興市場銘柄を中心に2月4日前後の安値を割り込み、さらに大きく下落するものが目立っています。

おそらく、個人投資家の体感温度に近いのは、日経平均株価やTOPIXではなく、マザーズ指数なのではないでしょうか。

また、個人投資家の信用買いにおける含み損がどの程度かを表す「信用評価損益率」をみると、3月20日時点でマイナス15.38%となっています。これは、昨年6月7日時点のマイナス14.75%、昨年8月30日のマイナス14.43%をも下回り、アベノミクス相場が始まった2012年11月中旬以降では最悪の数値です。

個人投資家はアベノミクス相場始まって以来の厳しい状況に置かれているといえます。特に高値で信用買いし、その後下降トレンドに転じた銘柄を損切りせずにそのまま持ち続けてしまっている個人投資家は、非常に厳しいのではないかと思われます。

個人投資家が日々の株価の乱高下に振り回されている

最近の相場の特徴として、個別銘柄に明確な上昇トレンドが現れない、という点が挙げられます。そのため、株価が急騰した銘柄を「反発の始まりか?」と新規買いしても、そこから株価が伸びずにあっという間に値下がりしてしまう、ということがよく見られます。午前中に大きく上昇したので後場の寄り付きで買ったものの、午後は一転して急落、というケースも目立ちます。株価の上昇が何日も持たなくなっているのです。

さらに最近は、特に個人投資家に人気の高い銘柄において、朝方に堅調な動きをみせておいて個人投資家の買いを誘い、その後一気に売り仕掛けで株価を急落させ、個人投資家の投げを誘う、という動きが目立ちます。これは、外資系証券が個人投資家をターゲットにしたものであるとも言われていますし、最近話題になっている「アルゴリズム取引」も一因と考えられます。アルゴリズム取引は、個人投資家の行動パターンを学習し、より効率的な売買を自動的・機械的に行っているようです。こうした状況の中、特にデイトレードなど短期売買を行う個人投資家はかなりの痛手を被っていると思われます。

個別銘柄の多くが下降トレンドにある中、無理に利益を狙いに行くのは得策ではありません。また、リバウンド狙いも、タイミングがばっちり合わなければ、安値を拾ったつもりがさらなる下落で投げさせられる可能性も大いにあります。

そこで、相場全般が下降トレンドにある中、できる限り損失を抑えるために筆者が気を付けている点を3つほどご紹介したいと思います。

対処法その1:日々の株価は無視して上昇トレンド転換を待って買う

相場が弱いと、個別銘柄の株価は思ってもみなかった水準まで下落することがよくあります。株価が下がったところを買い向かい、「安く買えた」と思っていても、さらにそこから20%、30%と下落し、結局投げ売りする羽目になってしまうことは珍しくありません。

そこで、株価の下落が続く中を安値で買い向かうことはせず、上昇トレンドへの転換を待ってから買うようにすべきです。

「落ちてくるナイフをつかむな」とは、あまりに有名な相場格言ですが、落ちてくるナイフをつかんだがために、今の相場で失敗してしまっている個人投資家はかなり多いのではないでしょうか。

上昇トレンドへの転換を待ってから買うようにすれば、確かにピンポイントの安値で買うことはできませんが、「安値圏」で買うことは十分にできます。結果的に、下落途中で買い向かうよりも安く買えることも非常に多いのです。

また、長らく下げ続けていた銘柄が突如5%、10%と急騰すると、「いよいよ反発の始まりか」と飛びついてしまいがちですが、すぐに失速して株価が下落してしまうケースも目立ちます。値動きが弱い銘柄は、数日間株価が戻したとしても、25日移動平均線を超えることなく頭打ちとなってしまい、先の安値を割り込んでしまうのです。こうした銘柄を安易に買ってしまうことのないように、上昇トレンド転換を待って買うことが非常に有効です。

対処法その2:上昇トレンド入り+直近高値超えを待って買う

また、現在のように全般相場が非常に弱い場合は、上値を追って買う投資家がいないため、下降トレンドにあった銘柄が25日移動平均線を上回ったとしても、すぐに反落して25日移動平均線を再び割り込んでしまうケースが多発します。筆者も、上昇トレンド入りの可能性のある銘柄を新規買いしたものの、すぐに25日移動平均線を割りこんでしまって結局損切り、ということが何度もあり、非常にストレスがたまりました。

そこで、個別銘柄に持続的な上昇トレンドが出にくい今のような相場では、単に25日移動平均線を超えて上昇トレンド入りした直後に買うのではなく、さらに直近高値(例えば2月4日前後の安値のあとにつけた高値)を超えた場合にのみ新規買いをする、という方法をとるようにしています。

例えば、日本取引所グループ(8697)は、2月4日に2,266円の安値を付けた後、2月12日には2,626円まで上昇しました。その後、3月上旬に株価は25日移動平均線を超えてきましたが、ここではすぐに新規買いせず、2,626円の直近高値を抜けるのを待つのです。結局このときは、2,626円を超えることなく反落し、再度25日移動平均線を割りこむどころか、2月4日の安値をも一時割り込んでしまいました。3月下旬も一瞬25日移動平均線を上回りましたが、このときも2,626円を超えなかったため買い見送り、となります。

日本取引所グループ(8697)日足チャート

日本取引所グループ(8697)日足チャート

全般相場が軟調な中、25日移動平均線を超え、さらに直近高値を超えるような値動きをする銘柄はかなり強い買いが入っていると判断することができます。「上昇トレンドへの転換」に「直近高値超え」というフィルターをプラスすることで、いわゆる「ダマシ上げ」に引っかかるリスクを減らすことが可能です。

対処法その3:空売りを有効活用する

全般相場が軟調な中では、空売りも非常に有効な手段となります。相場全体では弱い動きでも、個別銘柄をみると上昇トレンドのものと下降トレンドのものが混じっています。そこで、上昇トレンドの銘柄を買い、下降トレンドの銘柄を売るという、いわゆる「ロング・ショート戦略」が有用です。

全般相場が弱いと、上昇トレンドにある数少ない個別銘柄も、やがては全般相場に引きずられて大きく下落してしまうことがよくあります。

そんなとき、買いポジションのみであれば、含み益が大きく減少してしまったり、買値によっては損失が生じてしまいますが、ロング・ショート戦略を取っていれば、空売り銘柄の利益により、買いポジションの含み益減少や損失を賄うことができます。

さらに、空売りポジションを積極的に取れば、下げ相場でも大きな利益を得ることができます。

空売りをする際の注意点などについては、次回に詳しくご説明したいと思いますが、今回は簡単に箇条書きで記しておきます。

  • 値動きの荒い新興市場銘柄はできるだけ避け、流動性の高い東証1部の銘柄を選ぶ
  • 上昇トレンドにある銘柄を逆張りで空売りしない
  • 1つの銘柄に集中して空売りをしない
  • 損切り価格を設定し、損切りを必ず実行する
  • 株価が短期間に大きく下がっているところをさらに売り叩かない