アベノミクス相場が長期上昇相場なら上昇第2波が今後訪れる

日本株は相変わらずぱっとしない動きが続いています。しかし、現在の日本株は、月足チャートでみれば長期上昇トレンドにあることも事実です。これが崩れない限りは、今後のさらなる上昇が期待できます。

前回のコラムにて、長期上昇相場では大きな上昇が3回(3波動)訪れることをお話ししました。そして、今回のアベノミクス相場では、昨年5月までの上昇が上昇第1波と想定されます。 

少し気の早い話ではありますが、仮に今後上昇第2波に突入するとした場合、個別銘柄の株価がどの程度上昇することが期待できるか、筆者なりの予測法をご紹介したいと思います。

もちろん、どの銘柄がいくらまで上昇するかを正確に予測することはできません。しかし、過去の株価や売買高の推移を参考にすることで、今後大きく上昇することが可能な銘柄や、逆に株価が頭打ちになる可能性が高い銘柄を選別する手助けになるはずです。

まずは昨年5月高値、その後は過去の高値水準が株価の上値メド

昨年5月前後に高値をつけ、その高値を超えられないまま調整局面を続けている個別銘柄であっても、その多くは上昇第2波入りした場合には上昇第1波での高値を超えて上昇するはずです。2003年~2007年にかけての長期上昇相場での株価の推移からみてもそのように予測できます。ただし、一部の銘柄によっては上昇第1波の高値を超えられないものもでてくるかもしれません。

こうした点も考慮すると、上昇第2波での株価のメドは、まずは上昇第1波の高値である、昨年5月前後の株価となります。そこを超えてきた場合は、さらに過去の株価にさかのぼります。例えば、ソニー(6758)であれば、3月20日の株価が1,757円、昨年5月の高値2,413円が最低限の目標、それを超えてきたら2011年2月の3,105円、その次は2010年3月の3,645円となります。

なお、昨年5月前後の高値を超えて上昇している銘柄も少なくありませんが、考え方は昨年5月に高値をつけた銘柄と同様で、過去につけた高値が次の目標です。

新興市場銘柄など、上場して日が浅い銘柄の中には、上場来高値を更新している銘柄もあります。このような銘柄は、株価チャートでの節目は存在せず、いわば青天井の状態ですから、株価が上昇トレンドを継続する間は保有を続けていればよいと思います。

過去の利益水準に達することが可能な銘柄を選ぶことが大事

なお、過去に高値を付けたときと現在とで、業績が大きく変わってしまっていて、かつ今後業績回復のメドが立たない銘柄もあります。このような銘柄は、過去の高値までの戻りはなかなか期待できません。バブル期を除けば、おおむね「株価のピーク=業績のピーク」になるからです。

市場環境が変わり、以前のような利益を出すことが難しくなってしまっている業種・銘柄よりは、鉄鋼株などいわゆる景気敏感株のように、景気に応じて業績が変動し、景気が良くなれば業績も良くなる銘柄の方が、過去の高値水準まで株価が戻ることが期待できると思います。証券株のように日経平均株価やTOPIXが上昇すれば連動して株価上昇が期待できる銘柄も悪くないでしょう。

大天井からの長期下落銘柄は底打ち後のリバウンドに期待

また、過去に大天井と思われる高値を付けた後長期間にわたり株価が低迷し、高値から大きく値を下げた銘柄については、大天井までの戻りはよほどのことがない限り望めませんが、ある程度のリバウンドは期待できます。

株価が底値に達した後、業績の改善傾向がみられるようになれば、底値から10倍程度の上昇をすることはよくみられます。

例えば、ミクシィ(2121)は、2007年11月に21,000円の高値をつけたあとは大きく下落し、昨年10月には1,064円の安値をつけました。しかし、その後スマホ向けゲームのヒットによる業績改善期待から株価が上昇し、昨年12月には9,060円の戻り高値をつけました。安値からは8.5倍の上昇をみせたことになります。

中にはガンホー・オンライン・エンターテイメント(3765)のように、底値から100倍以上になり、過去の大天井をも超えてくる銘柄もありますが、このようなケースは非常にまれです。あまり欲張らずに、底値から10倍前後にまで株価が上昇したら、少なくとも持ち株の一部は利益確定売りをしておくのがよいと思います。

注意点その1:過去の高値での「売買高」

株価の上値メドを探る際に注意したい点が2点ほどあります。1つめは、過去に高値をつけた際の「売買高」です。

特に売買高を伴った急上昇により直近高値をつけ、その後反落している銘柄については、その直近高値を超えることは容易ではない点は理解しておきましょう。

それでも、現時点の株価がその直近高値より大きく下に位置しているのであれば、ある程度の戻りは期待できます。

例えば、テリロジー(3356)は、昨年12月に売買高を伴って急騰し、12月11日には289円の高値をつけました。しかし、その後株価は下落し、3月20日の終値は118円でした。

テリロジーの月足チャートをみると、289円の高値を超えれば、2006年1月につけた2,382円まで大きな節目はありません。しかし、289円の直近高値をつけた過程で売買高が大きく膨らんでいますので、ここを超えることは容易ではありません。

テリロジー(3356)週足チャート

現在の株価が直近高値より大きく下落していますから、ここから多少の戻りであれば可能でしょうが、289円を超えるのは至難の業です。ただし、289円を超えて上昇した場合は、非常に大きな買いエネルギーが生じていると判断できます。

このように、よほど大きな買いエネルギーが生じない限りは株価の大きな上昇が期待でいない場合は、直近高値を超えてから新規買いした方が、資金効率の面からは有効となります。

注意点その2:発行済み株式数が増加した銘柄

2つめの注意点は、発行済み株式数が大きく増加した銘柄についてです。

株価は業績に応じて変動すると考えれば、過去の高値水準にまで株価が戻るなら、当期純利益もその当時の水準近くにまで達しているはずです。

発行済み株式数が過去も現在もほとんど変化していない銘柄であれば、「当期純利益」=「1株当たり当期純利益」と言い換えることができます。ところが、発行済み株式数が過去に比べて大きく増加している銘柄は、そうはなりません。

例えば、レオパレス21(8848)は、2006年5月に5,150円の高値をつけていますが、このときの発行済み株式数は約159百万株でした。しかし、現在の発行済み株式数は267百万株にまで増加しています。

レオパレス21の過去最高益は、2007年3月期の373億円で、このときの1株当たり純利益は234.7円でした。もし、今後レオパレス21の業績が2007年3月期の水準近くまで回復するとした場合、発行済み株式数が増加しているため、1株当たり純利益はおよそ139.5円程度にとどまってしまいます。ここから計算すると、株価メドは2006年5月高値5,150円÷234.7円×139.5円=3,061円となり、5,150円の高値には遠く及ばないことになります。

このように、発行済み株式数が増加すると、その分だけ株価が上昇しにくくなってしまうのです。

上昇第2波がいつからスタートするかは分かりません。もしかしたら、アベノミクス相場は終わってしまったのかもしれません。しかし、上昇第2波が始まってから悠長に銘柄選びをしていたのでは、上昇相場に乗り遅れてしまいます。今のような株価調整局面は、次の上昇相場において投資する銘柄を選別するための貴重な時間なのです。