「投資主体別売買動向」を目にしたことはありますか?

新聞記事やインターネットの投資関連ニュースをみていると、よく「先週の投資主体別売買動向によると、外国人投資家は日本株を1000億円買い越した一方で、個人投資家は800億円の売り越しだった」などといった記事を目にします。

今回のコラムではこの「投資主体別売買動向」を取り上げます。「投資主体別売買動向」とは一体どんなものなのか、そこから見えてくるものは何か、そして投資戦略にどのように役立てることができるか、といった点につきご説明したいと思います。

東証が毎週発表する「投資部門別売買状況」がニュースの元データ

「投資主体別売買動向」とは、投資家を「外国人投資家」、「国内の法人」、「個人投資家」といったいくつかのカテゴリーに分類した上で、各カテゴリー別の投資家が、1週間のうちに日本株をどれだけ買い越しもしくは売り越したかを東京証券取引所(東証)が集計したものです。木曜日(前週末から4営業日後)に、前週分の集計結果が掲載されます。

 

国内の法人については、投資信託、事業法人、金融機関などに細かく分類されたデータが載っています。また、個人投資家についても、現物取引と信用取引の別に買い越し額や売り越し額が分かるようになっています。

なお、ニュースでは「投資『主体』別売買『動向』」と報じられることが多いのですが、東証のホームページでは「投資『部門」』売買『状況』」という表現になっています。両者とも意味するところは同じです。

アベノミクス相場の原動力はやはり外国人投資家だった!

近年の日本株は「外国人投資家が主導して動く」とよく言われます。投資主体別売買動向をみると、2012年11月中旬からの「アベノミクス相場」は、外国人投資家の怒涛の買いにより株価の大幅な上昇をもたらしたことがよく分かります。

アベノミクス相場がスタートした2012年11月中旬から2013年末までの間に、外国人投資家はなんと17兆円も日本株を買い越しています。一方、個人投資家はその間10兆円近くの売り越しでした。国内の法人も6兆円近くの売り越しです。

投資主体別売買動向からは、アベノミクス相場では日本人の売りを外国人投資家が全てかっさらっていったという図式がよく分かります。

ちなみに、2004年~2007年のいわゆる「小泉相場」でも、外国人投資家が約30兆円買い越した一方で、個人投資家は約15兆円の売り越しでした。

NISAの影響か?今年に入ってからは投資主体別売買動向に変化の兆し

実は、今年(2014年)に入ってからの投資主体別売買動向をみると、昨年とは異なる状況となっています。

1月第1週の投資主体別売買動向では、外国人投資家が1593億円の売り越しだった一方、個人投資家は3006億円の買い越しでした。

その翌週の1月第2週も、外国人投資家が371億円の売り越しに対し、個人投資家は1123億円の買い越しでした。

さらに1月第3週も、外国人投資家2330億円の売り越しに対して個人投資家は3941億円の買い越しとなりました。

つまり、昨年のような「外国人投資家買い、個人投資家売り」の構図が、今年に入ってから変化している兆候が見られるのです。

さらに、個人投資家の現物取引と信用取引の内訳をみると、第1週、第2週、第3週のいずれも、現物取引にて大きく買い越していることが分かります。

筆者は、3週続けて個人投資家が現物取引で買い越したのをここ最近見た記憶がありません。おそらく、2014年からスタートしたNISAによる買い需要が要因の1つではないかと見ています。

今後の外国人投資家の動向には十分な注意が必要

「小泉相場」のときも、「アベノミクス相場」でも、日本株が長期間大きく上昇するときは、外国人投資家が大きく買い越しをしています。

一方で、個人投資家は、アベノミクス相場が始まってからの株式売却だけでも、10兆円もの資金が手元にあるのも事実です。個人投資家の投資余力は、今までにないほど高まっています。

個人投資家の買いが外国人投資家の売りを十分に吸収できるのであれば問題ないのですが、個人投資家が高値を買い進んでいくようなパワーまでは持ち合わせていないように筆者個人的には思います。

基本的に個人投資家は「逆張り買い」をする傾向にありますから、下値を支える程度が精一杯なのではないでしょうか。

現時点ではまだ変化の兆しが見られた程度に過ぎませんが、今後の投資主体別売買動向で、外国人投資家の売りが続くようであれば、大いに警戒する必要がありそうです。