東北楽天ゴールデンイーグルスの日本シリーズ優勝、誠におめでとうございます。地力に勝るジャイアンツ相手に、まさにチーム一丸となっての勝利でした。筆者もテレビの前に釘づけになって、試合を観戦していました。これほどプロ野球に熱中したのは本当に久しぶりです。震災の被災者の方々に勇気と感動を与えることができた、まさに勝つべき時に勝ったといえるのではないでしょうか。
「機動的な資金調達」は株式上場の目的の1つ
株式会社が上場をする大きな目的の1つに、「機動的な資金調達を可能にする」という点があります。
一般に、会社が資金調達をする場合は増資や銀行借り入れ、社債発行といった方法をとります。上場していない会社だと、広く投資家から資金を募ることが難しいため、銀行借り入れによる場合がほとんどです。
でも、上場企業であれば、借り入れだけでなく、増資、社債発行、さらには最近増加してきたライツ・オファリングなど、多様な方法から選ぶことができます。(ライツ・オファリングについては過去のコラムで解説しておりますので、ご存知ない方はぜひご覧下さい。)
バイオベンチャーが多用する「MSワラント」による資金調達
日本で数多くのバイオベンチャー株が上場しているのも、研究開発に必要な資金を調達しやすくするためといえます。
ただ、バイオベンチャーの場合は、足元で赤字続きである企業が大多数であり、こうした企業は銀行からの融資もなかなか期待できませんし、スポンサー企業に増資を引き受けてもらうことも大変です。
そこで、バイオベンチャーの資金調達方法として最近数多く使われている方法としてあげられるのが「MSワラント」です。
MSワラントとは「Moving Strike Warrant」の略で、日本語では「行使価額修正条項付新株予約権」と称されます。また、「MSSO」と呼ばれることもあります(「SO」とは「Stock Option」の略)。
新株予約権の行使促進のための策が「行使価額の修正」
新株予約権による資金調達のポイントは、新株予約権の引受先が、新株予約権を行使しないと発行企業に資金が入ってこないということです。
しかし、引受先としても、赤字続きで破たんの危険性すらある企業の新株予約権を積極的に行使しようとは思いません。
そこで、MSワラントでは、行使価額が株価等に応じて変動する仕組みとし、新株予約権の引き受け手が新株予約権を行使しやすいようにしています。
例えば、今年8月16日にMSワラントの発行を発表したメドレックス(4586)の場合、新株予約権の当初行使価額は2,720円ですが、その後新株予約権の行使請求があった場合は、行使価額が行使請求効力発生日の直前取引日終値の90%に修正されることになっています(ただし1,632円の下限あり)。
簡単に言えば、時価の10%引きの価額で新株を取得できる仕組みになっている、ということです。
引受先は取得した新株をすぐに売却してしまうのが一般的
ただし、MSワラントの引受先が証券会社等の場合、彼らは発行企業の株式を保有するつもりはありません。新株を取得すると、すぐに売却してしまいます。もしくは株主から株式を借りてきて空売りを行い、その後新株予約権の行使をして新株を取得し、借りた株を株主に返すというプロセスを辿るのが一般的です。こうすれば、売却もしくは空売りしたときの株価と、新株予約権の行使価額との差額が新株予約権の引受先の利益になるのです。
実際、メドレックスの場合も、引受先のメリルリンチ日本証券が提出した大量保有報告書の変更報告書によれば、新株予約権行使により取得した株式を取得当日に市場内で売却していることが分かります。
新株発行を伴う資金調達の2つのマイナス要因とは?
ところで、増資や新株予約権の発行など、新株発行を伴う資金調達が株価にマイナスの影響を与える要因として大きく以下の2点があります。
(1)1株当たりの価値(1株当たり純利益や1株当たり純資産など)の希薄化
(2)市場に出回る株数が増加することによる需給の悪化
このうち、(1)は、発行済み株式数が増加してしまうのは避けられませんのでどうしようもありません。発行企業が調達資金を使って、利益をしっかりとあげてもらうのを期待するのみです。
他方(2)については、引受先がその会社の株式を売却せずに保有し続けてくれるかどうかが重要です。
バイオベンチャーの場合は、例えば引受先が共同研究をしているパートナー企業などであれば、保有を継続してくれるため、増加した株式が市場に出回る可能性は低いでしょう。
しかし、引受先がファンドや外資系証券会社などの場合、彼らは「キャピタルゲイン目的」で引き受けているわけですから、わざわざリスク覚悟で新株を保有し続けることはありません。キャピタルゲインを得るために必要であればどんどん売却し、市場に株式が出回ることによる需給悪化が大いに懸念されます。
メドレックスはまさにこのケースに該当します。メドレックスの最近の株価推移をみると、先週末の11月1日に年初来安値を更新するなど、明らかに他のバイオベンチャーと比べても弱い動きになっていることがよくわかります。
MSワラント発行による株価へのマイナスの影響も考慮した銘柄選びを
もちろん、MSワラントを発行したすべての企業の株価が下落しているわけではありませんが、MSワラントによる資金調達は、上記のような既存株主にとってのマイナス要因が存在することは、覚えておいて決して損はありません。
最近ではMSワラントがもたらす株価へのマイナスの影響が投資家の間にもだいぶ浸透してきたようで、MSワラントの発行を発表しただけで株価が急落するケースも起こっています。
また、MSワラントの発行は、引受け側のリスクが小さいため通常の増資等による資金調達より容易であり、一度MSワラントを発行した企業は、MSワラントによる資金調達
を繰り返す傾向が強い点にも注意しておかなければなりません。
銘柄選びの際、もしくは保有株を売却するかどうか決断する際、このようなMSワラントによる資金調達の有無も考慮に入れることが望ましいと筆者は思います。株価が変動する要因は決して企業の業績だけではないのです。
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