消費者物価はデフレの終わりが近いことを示している

アベノミクスの重要な目的といえば、「デフレからの脱却」。そこで総務省統計局のホームページで消費者物価指数を見てみますと、2013年7月分の「コア指数」(生鮮食品を除く総合指数)は前年同月比で0.7%のプラス、8月分は前年同月比0.8%のプラスにまで上昇しています。長かったデフレが終わる時がいよいよ来るかもしれません。

ただし、「コア指数」は、エネルギー価格を含めた物価指数です。最近の電力料金やガソリン価格の値上げが反映されています。企業や国民の努力ではどうにもならないエネルギー価格が大きく上昇したことをもって「デフレから脱却」といわれても消費者には全く実感がわきません。

そこで、消費者物価指数のうち、エネルギーと食料品を除いたいわゆる「コアコア指数」を見る方がより正確に現在の物価の状況を知ることができます。

そこでこの「コアコア指数」を見てみますと、いまだマイナス圏であるものの、マイナス幅は縮小を続けていて、2013年7月分および8月分はいずれも前年同月比マイナス0.1%です。ほぼプラスマイナスゼロのレベルまで持ち直してきています。これがプラスになると、一般の消費者レベルでも物価の値上がりを実感することになります。つまりデフレからインフレへの転換がもう間もなく起こる可能性が高いといえます。

消費税増税の影響で景気が腰折れして物価が下押ししてしまうことが最大の懸念材料ではあるものの、このまま物価上昇が続けば、日本はデフレから抜け出してインフレになります。そのとき、日本株の個別銘柄はどのような動きが期待できるか、そして目標株価をどのように設定したらよいのかを考えてみたいと思います。

多くの銘柄がなぜ1996~1998年に急落したのか?

読者の皆さんも、いくつかの個別銘柄の過去20~30年程度の月足チャートをみてください。銘柄により株価の動きは異なりますが、特に中低位株を中心とした多くの銘柄が、1996年~1998年にかけて急落していることが分かります。

例えば、2020年東京オリンピック関連の中心銘柄と目されている鉄建(1815)は、オリンピック開催地発表から1週間ちょっとで3倍近くにまで株価が上昇しました。でも1990年から現在までの月足チャートでみると、まだ底値から立ち上がった段階に過ぎず、1990年代前半の株価水準には遠く及ばないことが分かります。

1996年~1998年にかけて多くの中低位株が急落した最大の要因は、日本が本格的にデフレに陥ったためといわれています。とすれば、デフレから完全に脱却してインフレに転換したならば、1996年の急落前の水準にまで株価は戻るだろうというのが筆者の見立てです。

デフレ脱却寸前までいった「小泉相場」の高値がとりあえずの株価目標

また、2006年1月のライブドアショック前後まで続いたいわゆる「小泉相場」では、デフレ脱却寸前まで物価が持ち直しました。このとき、ほとんどの銘柄が、1996年の急落前の水準までとはいかなかったものの、安値から大きな上昇をみせました。

そこで、中長期的な株価の目標として、控え目な目標である「第1目標」と、インフレに完全に転換すれば十分可能性がある「第2目標」を次のように設定します。

  1. 第1目標:2005年~2006年前後の「小泉相場」の高値
  2. 第2目標:1996年ごろ(急落前)の株価水準

例えば鉄建(1815)は、2006年1月に317円の高値を付けています。これが第1目標ですが、先日の株価急騰で9月17日には381円まで上昇しており、すでにこの目標値はクリアしています。

そうなると、次は第2目標となります。1995年~1996年はおおむね700円前後の株価でした。1995年7月に656円の安値をつけていますが、とりあえずこのあたりが目標となりそうです。

銘柄選びの際の筆者の優先順位のつけ方は

筆者は、個別銘柄の株価チャートをみて、第1目標や第2目標の株価が現在の株価からどれだけ乖離しているかを確認し、乖離率が大きい銘柄を優先的に投資候補としています。

例えば現在の株価がともに100円のA株とB株があり、A株の第1目標が200円、B株の第1目標が400円なら、(もちろん業績や財務状況なども加味しますが)B株を投資対象とします。

なお、銘柄によっては第1目標の株価の方が第2目標の株価より高いものもあります。例えばアシックス(7936)は、小泉相場で株価が大きく上昇し、1996年ごろの高値を大きく超える上昇をみせました。

こうした銘柄は、好業績や成長性が評価された結果の株価上昇ではありますが、中長期的には上昇エネルギーをかなり使い果たした可能性もあります。そこで、筆者個人的には第2目標の方が第1目標より高い銘柄に妙味を感じます。

ただし、第1目標の株価が第2目標の株価より高くとも、現在の株価が第1目標の株価よりかなり低い位置にあるなら、投資対象とするのも悪くないと思います。

その上で、会社四季報等で業績や財務をチェックし、今後業績の好転が見込めなかったり、財務状況があまりにも悪い(債務超過など)銘柄を除外するなどして、銘柄の絞り込みを行います。

デフレからインフレへの転換は、株価上昇の大きなチャンスです。本格的なインフレになる前に、まだまだ安値に放置されている銘柄を発掘して、先回りして買い仕込んでおきたいものです。