「iPS細胞」と「政府の後押し」がバイオ関連株に光を当てた

アベノミクス相場でひときわ強い値動きを続けている銘柄群の1つとして、バイオ関連株があります。

バイオ関連株は個人投資家の人気も高く、当コラムをご覧の皆さまの中にも関心をお持ちの方が多いと思いますので、今回と次回の2回にわたり、バイオ関連株への投資について取り上げます。

バイオ関連株が俄然注目を集めたのは、iPS細胞を発見した山中教授が昨年10月にノーベル賞を受賞したときです。これをきっかけに、それまであまり値動きのぱっとしなかったバイオ関連株が一斉に急上昇しました。

その動きは短期間で収まりましたが、今年の年明けに、政府が再生医療に多額の予算を計上することが明らかになると再び盛り上がりをみせ、1月29日に一旦のピークをつける直前には、ストップ高の銘柄が続出し、まさに「バイオ関連株祭り」の様相を呈しました。

最近も再びバイオ関連株が活気づいており、好材料に反応して高値更新を続けている個別銘柄も少なくありません。

バイオ関連株への投資環境は良くなった

筆者個人は、現在バイオ関連株が置かれている投資環境は、以前に比べて格段に良くなったと思っています。その最大の理由は、「投資家が足元の業績よりも将来の夢を重視することができる環境にある」からです。

以前は、バイオ株は何年も赤字を垂れ流しているわりには将来の業績もどうなるかよく分からず、このまま赤字を続けていれば倒産してしまうのではないか、という厳しい評価を受けていたため、投資対象として考える投資家は非常に少なかったと思います。

しかし、iPS細胞のノーベル賞受賞や、再生医療に多額の予算がつくことになった現在では、確かに将来の業績がどうなるのか不明瞭であるのは変わらないものの、「もしかしたらものすごい新薬が本当に開発されるかもしれない」「新薬が開発されたら企業業績は様変わりし、株価も何十倍、何百倍にまで跳ね上がるかもしれない」という期待が高まっています。そのため足元の業績が多少悪くとも、それが悪材料にならず、逆に企業側が発表する新薬開発の進展状況についてのIR情報を素直に好感し、株価が大きく上昇しています。

つまり、悪材料にはそれほど反応しないが、好材料には敏感に反応するのが今のバイオ関連株であって、多少バブル気味であるのは否めませんが、非常に投資しやすい環境にあるといえます。

「バイオ関連株」にもいろいろある

一口にバイオ関連株といっても、色々な会社があります。大きく分けると「創薬型バイオベンチャー企業」と「それ以外」の2つに分類できます。

このうち、創薬型バイオベンチャー企業は最もバイオ株らしいバイオ株であり、画期的な新薬を開発して発売することを目的としています。画期的な新薬開発までには時間もお金もかかり、目的が達成される前に経営破たんしてしまう可能性もありますから、これらの銘柄に投資することは「ハイリスク・ハイリターン」といえます。

それ以外の会社は、新薬開発のために必要な試薬や医療機器を販売したり、再生医療や免疫細胞療法の技術を提供したりと様々ですが、概して創薬型よりはリスクは低い代わりに、爆発的な利益獲得もあまり期待できないという「ミドルリスク・ミドルリターン」の特徴を持ちます。

同じバイオ関連株でも、銘柄によって底値からの上昇率が大きく異なっていますが、それには上記の点も関係しているものと思われます。

ちなみに、会社四季報(2013年第2集)を見ると、銘柄ごとに、どの業種に属しているかが書かれています。このうち、「バイオテクノロジー」に分類されている銘柄(スリー・ディー・マトリックス(7777)、UMNファーマ(4585)など)が純粋なバイオ関連株といえますが、例えば日本ケミカルリサーチ(4552)は「医薬品」に、新日本科学(2395)は「ヘルスケア製品・サービス」に分類されているものの、位置付けはバイオ関連株です。

業種により厳格にバイオ関連株かどうかを区別しているわけではない点には注意してください。

これだけは禁物! バイオ株でやってはいけない投資方法とは

次回のコラムにて、筆者が考えるバイオ関連株への投資法をご紹介しますが、今回はこれだけはやってはいけない、という点を1つお話しておきます。それは、「信用枠いっぱいにバイオ関連株の信用買いを行わないこと」です。

バイオ関連株は値動きの大きさが魅力の1つで、上昇するときの勢いも非常に大きい反面、ひとたび下落に転じると、短期間で高値から30%、50%程度の下落は当たり前のように起こります。

例えば、1月29日にバイオ関連株が一斉に急落したことがありましたが、銘柄によっては29日当日だけで高値から30%下落したものもあり、翌営業日以降の下落も含めると50%以上下落した銘柄も少なくありません。

信用枠いっぱいに信用買いをしていた場合、約30%の下落で追い証(証拠金の追加差し入れ義務)が発生し、資金を追加で差し入れなければ強制決済により、保証金のほぼ全額(その後の株価の推移によっては保証金を超える金額)が失われてしまいます。

実際、1月29日からの急落時も、バイオ関連株に追い証が大量発生し、強制決済によりあっという間に資金の大部分を失ってしまった個人投資家が続出したようです。今後も同じような動きになることもあるでしょうから、十分に注意してください。