地価の底打ち傾向が鮮明に

国土交通省が発表した2013年1月1日時点の公示地価によれば、5年連続で値下がりしたものの下落率は縮小、特に大都市圏では下げ止まりの傾向が顕著になっていることが明らかになりました。首都圏を中心に、前年に比べて地価が上昇した地点も大幅に増えています。

不動産市況が底入れの機運を果たす中、再び投資家から脚光を集めているのがREIT(不動産投資信託)です。

ただ、REITの価格をみると、2012年中ごろからすでに上昇に転じ、足元ではかなり上昇していることも事実です。

果たして今からREITを新規に買っても大丈夫なものか、買うならばどんな点に注意すべきか、過去の事例も踏まえつつ、筆者の考えをまとめてみたいと思います。

REITを取り巻く環境は非常に良い

公示地価の下げ止まりからも分かるように不動産市況は底打ちの傾向が鮮明になっています。割安な日本の不動産に注目する外国人投資家も急増し、実際に投資資金も流入しています。都心部のオフィスの空室率も改善傾向にあります。さらに、日銀によるREITの買い付けも需給面で大きな後押しとなっています。

このように、REITを取り巻く環境は急速に改善しています。

一方で、足元でREITの価格はかなり上昇しています。REITは主な収益源が賃料収入ですから、通常の不動産投資と同様、投資してよいかの判断は「利回り」で考える必要があります。

そこで足元のREITの分配金利回りをみてみると、昨年中ごろは5%~6%ほどあったものが、現在は4%程度にまで下がっています。

今の分配金利回りでREITを買えるか?

REITの利回りが変動する要因には、主に「賃料収入の増減」と「REIT価格自体の変動」の2つがあります。

仮に賃料収入が変わらなければ、REIT価格が上昇すれば利回りは低下し、逆にREIT価格が下落すれば利回りは上昇することになります。

昨年中ごろから現在までのREIT価格上昇局面では、特に賃料収入が大きく増加したということはないので、単純にREIT価格上昇が分配金利回り低下につながりました。

2007年にピークをつけた過去のREITミニバブル時は、分配金利回りは2%程度まで低下しました。仮に今回のREIT上昇相場が当時と同じ水準まで達するとすると、賃料が今後上昇しないという厳しめの条件設定をしても、現在の分配金利回り4%から計算すれば価格は今の2倍になります。今回の上昇相場がどこまで続くか分かりませんが、今後賃料アップによる利回り上昇効果も期待できる点を加味すれば、価格上昇の余地はまだ見込めそうです。

ただし、分配金利回りが「高い」「低い」というのはあくまでも他の金融商品との相対的な比較によるものである点には注意が必要です。

現状の約4%という分配金利回りは、国債利回りも預金金利も非常に低水準である中では非常に魅力的であることは間違いありません。でも、もし将来国債利回りや預金金利が上昇したならば、REITから国債や預金に投資資金が流れ、分配金利回りが適正水準になるまでREITの価格が下落することも十分考慮しておかなければいけません。

大雑把にいって、「長期国債利回り+2%」よりREITの分配金利回りが低くなったら、REITは買われすぎの状態にあると判断しておけばよいと思います。

銘柄選びの際の注意点は

では、ここからREITに新規に投資するとして、銘柄をどのように選べばよいでしょうか。

まず、何を投資対象にしているかが重要です。一口にREITといっても、投資対象はオフィス、住居、商業施設、ホテルなど様々です。最近では物流施設を投資対象としたREITが新規上場し、注目を集めました。

例えば、オフィスの賃料は不動産市況等により変動が大きいですが、物流施設の賃料は安定しています。このように、投資対象により賃料の変動をはじめ特徴やリスクがありますから、これらを踏まえて銘柄を選別する必要があります。

また、分配金利回りも注目すべき点です。REITにより、分配金利回りもかなり差があります。ここで「分配金利回りが高い=割安」と短絡的に考えるのは良くありません。分配金利回りが高い状態で放置されている銘柄にはそれなりの理由があるはずで、将来分配金が減らされるなどのリスクが他の銘柄より高いと考えておいた方がよいでしょう。

REIT指数連動型のETFで個別銘柄のリスクを回避

銘柄選びの際にはこれ以外にも見極めなければならない点が多々あります。でも、不動産の知識をしっかりと持っている投資家でないと、REITの銘柄選びは難しいのも事実です。

そこで活用したいのが、REIT指数に連動するタイプのETFです。

これらのETFに投資すれば、複数のREITに分散投資するのと同じ効果を得られますから、個別銘柄への投資リスクを大きく軽減させることが可能なのです。

また、REITの個別銘柄には最低投資資金が100万円以上のものもあるなど、まとまった資金が必要ですが、上記ETFなら、最低投資資金が1万7千円(1343の場合)ないし16万円(1345の場合)程度で済みます。

不動産の知識には自信がないがREITに投資したい、という個人投資家の方にはうってつけの投資商品ではないでしょうか。

筆者ならここからどう行動するか

以上を踏まえて、筆者がここからREITへの新規投資をするならどのように行動するか、まとめてみたいと思います。

筆者が最も得意とする手法は、上昇トレンド転換直後の新規買いですが、残念ながらREITは上昇トレンド入りしてからかなり時間が経過していますから、この方法は使えません。

そこで、「現時点での価格での飛び乗り買い」と「押し目買い」の両刀作戦を使うこととします。とりあえず現時点の価格である程度買っておき、残りの資金は押し目(例えば株価が25日移動平均線に近づいてきた局面)を待って投入します。

銘柄については、筆者は不動産の専門家ではないので、個別銘柄のバリエーションやリスクをしっかり分析する自信がありません。そこで、REIT指数連動型のETFに注目したいと思います。やはり、個別銘柄のリスクを軽減できることと、少額から投資可能な点は魅力的です。

売り時については、上昇トレンド初期に安く買えているわけではないため、基本的に日足ベースでの下降トレンドへの転換(25日移動平均下向き+株価が25日移動平均線より下)で利食いもしくは損切りとします。その後再び上昇トレンドへ転換したら状況をみて買い直しをします。

なお、週足ベースで下降トレンドへ転換した場合は要注意、月足チャートで下降トレンドへ転換した場合は長期的な上昇相場が終わった可能性が高まるので、合わせて定期的にチェックしておくようにしましょう。

また、REITへ投資する個人投資家の中には、値上がり益ではなく分配金利回りを重視する方も多いかと思いますが、例えば分配金利回り4%の水準で買った銘柄の価格が2倍(分配金利回り2%)になれば、値上がり益は25年分の分配金に相当することになります。筆者個人的には、そうした状況になれば一旦売却し、再び分配金利回りが魅力的な水準に上昇してくるまで待つ、というのも有効な戦略だと思います