急騰銘柄への飛び乗りは投資家の性(さが)?

筆者もそうなのですが、多くの個人投資家には、短期間に株価が急上昇している銘柄をみると、「もっと上昇するかも」とか「早く買わないと乗り遅れる」と思ってつい飛び乗ってしまいたくなる習性が備わっているようです。現に、株価が急騰した銘柄は売買高も大きく増えるのが一般的です。

しかし、株価が短期間に急騰した銘柄への飛び乗りは、うまくいけば短期間で利益を得ることができる反面、失敗すると大きな損失を被ってしまう、リスクの高い行為です。

日本株も底入れを果たした可能性が高まり、株価が大きく上昇する銘柄が後を絶ちません。そこで今回は、短期間で急騰した銘柄へ飛び乗る際の注意点や、飛び乗り自体が果たしてよい投資成果につながることなのかを考えてみたいと思います。

飛び乗り後株価上昇した場合の対応は?

もし株価急騰銘柄に飛び乗った結果、さらに株価が上昇して含み益が生じた場合はどうすればよいでしょうか。筆者は「上昇トレンドが続く限り保有」と本コラムでも何度も申し上げてきましたが、株価急騰銘柄にその方針を当てはめるのは困難です。

なぜなら、株価急騰銘柄は、株価が移動平均線から非常に大きくかい離してしまっているため、上昇トレンド終了の可能性が生じる「株価の移動平均線割れ」まで待っていると、高値よりかなり値下がりした後で売ることになりかねないからです。

アプラスフィナンシャル(8589)のチャートをご覧下さい。昨年終わりから動意づき、今年1月9日には271円の高値をつけました。しかしその後は調整局面となり、1月24日には131円まで下落、2月8日現在は155円となっています。

アプラスフィナンシャル(8589)の日足チャート

アプラス株を年明けの1月4日の寄り付きに148円で買ったとします。明確に25日移動平均線を株価が割り込んできた2月8日に155円で売ったとすると、利益はわずかという結果となってしまいます。

もし、1月7日の寄り付きに197円で買った場合は、株価が25日移動平均線を割り込むのを待っていると、買値より20%も低い株価で損切りする羽目になってしまいます。

したがって、株価急騰銘柄は、株価が移動平均線割れ(=上昇トレンド終了の可能性)となってから売るのではなく、買値からある程度上昇したら満足して売るのが正解です。そして、高値で売りそびれた場合は、買値まで戻ってしまったら売ってしまうのがよいと思います。株価急騰銘柄は下落に転じた時の下落幅も大きくなる傾向にあるため、そのまま持ち続けると逆に含み損が拡大することになりかねないからです。

急騰銘柄の急落は突然やってくる

急騰銘柄の突然の急落で記憶に新しいのは、1月29日のバイオ関連株の値動きです。

年明け1月に入り、バイオ関連株が軒並み急上昇、連日のようにストップ高まで上昇する銘柄が続出しました。1月29日も午前中はそれまでの勢いが続き、各銘柄とも大きく値上がりしていました。しかし、午後になると上値が重くなり、14時過ぎに突然急落をはじめます。中にはストップ高の株価が1時間足らずでストップ安にまで下落してしまったものもあります。

個人投資家に人気が高く、最近はネット証券の売買代金ランキング上位に入るナノキャリア(4571)も、その日の高値480,000円からあっという間に344,000円に急落してしまいました。下落幅は136,000円、率にするとなんと28.3%もの下落です。

ナノキャリア(4571)の日足チャート

信用買いをしていた個人投資家の中には、たった1日で追い証(株価下落による担保価値低下のため追加で証券会社に証拠金を差し入れなければならない状態)となり、投資資金の全てが一瞬にして吹き飛んだ人もいたことでしょう。

デイトレードできない個人投資家は急落に備えて逆指値注文を

このように、急騰銘柄には突然の急落がつきものです。もし急騰銘柄に飛び乗るならば、こうした急落に備えておくことが求められます。

株価が短期間に急騰した銘柄は、売買高も大きく膨らみます。そこで活躍するのはデイトレーダーなど回転売買を主体とする投資家です。

彼らは株価がいくら高くとも、少し下がったらすぐに売ってしまいますし、オーバーナイト(持ち株を翌日以降に持ち越すこと)をせずにその日のうちに売り切りますから、高値掴みのリスクは小さいです。

しかし、会社勤めの人などデイトレードができない個人投資家は、場中に株価をずっとチェックするわけにはいきませんから、突然の急落にタイムリーに対応することができません。

場中に株価を常にウォッチし、かつ損失が大きくなる前に損切りをきっちりと実行することができなければ、急騰銘柄の飛び乗りは非常にリスクが高くなるといえます。

もしデイトレードできない個人投資家が急騰銘柄に飛び乗るのであれば、損切り価格をあらかじめ設定しておくとともに、買った後すぐに損切り価格を逆指値とする売り注文を入れておき、急落のダメージを最小限に抑えるようにすべきです。

損切りせずに持ち続けると「塩漬け」の要因に

では飛び乗り後に株価が急落しても、損切りせずにそのまま持ち続けるのはどうでしょうか。結論からいうと、含み損をかかえたまま「塩漬け」になってしまう危険性が非常に高くなります。

そもそも急騰銘柄に飛び乗った理由は「短期間に利益を得たいから」だったはずです。それなのに、飛び乗った後に株価が急落したら「やっぱり長期保有にして株価の回復を待とう」というのでは、当初の投資目的を都合よくすりかえているだけです。そんなことをしていては株式投資で成功することは難しいでしょう。

短期決戦と決めて飛び乗ったからには、駄目だったらスパッと損切りして次のチャンスに備えるべきです。

確かに損切りせずに持ち続ければそのうち株価が再び上昇して買値まで戻るかもしれません。でも将来株価がどうなるかは誰にも分かりません。さらに悪いことには、短期間で株価が急騰した銘柄は、買いのエネルギーを使い果たしてしまっているため、再び株価が上昇するとしても時間がかかるのです。もしかしたら、10年、20年たっても買値まで戻らないかもしれません。

バブル相場を思い返してください。急騰銘柄に飛び乗ったまま損切りせずに保有した結果、今でも買値に戻らず塩漬け株のオンパレードになっている個人投資家が大勢いるのです。

急騰している銘柄に飛び乗る方が早く簡単に儲かりそう、と思ってしまいがちですが、現実はそんなに甘くありません。筆者の経験上、急騰銘柄への飛び乗りを繰り返していても、投資成果はあまりよくありません。

それよりも、上昇トレンド初期段階の銘柄を安く買って上昇トレンドが続く限り持ち続ける方が精神的にもはるかに楽で、かつ良い投資成果もついてくるものです。まさに「急がば回れ」の精神です。